最近飲んだお酒について
三年前につけた梅酒を久々に飲んだら、つけた時よりも美味しくなっていた。
梅酒はホワイトリカーと氷砂糖で漬けた。ホワイトリカーは果実酒を作るときに使われる焼酎のことで、アルコール度は35度ある。常温保存でも痛まない度数だ。梅の実はいれっぱなしにしておくとしおれると聞いたので、半年で取り出してちょっとずつ食べた。
あんまり梅酒が美味しくて、調子に乗って二合ほどスルスルと飲んだ。このペースでいくと簡単に瓶の中身を飲み尽くしてしまうと危惧した私は、梅酒を冷蔵庫にあったホワイトリカーで割ることにした。
試しに梅酒1に対してホワイトリカー2で薄めたところ、充分梅の味わいが楽しめた。
飲んでいてふと、好奇心が湧いた。
ホワイトリカー単体で飲むとどういう味がするのだろう。検索すると、好んで飲む人もいるという。
グラスに半分ほどついでみた。
口に含んでコクリと飲んでみる。
…………。
か、
からい…………。
喉と胃にクッと痛みのような熱のような刺激がくる。梅酒の時よりもパンチ力が数段ある。
なんというか。
ホワイトリカーは、すごく色素が薄い感じがする。アルコール的刺激しか受け取れなくて、飲み続けるのがしんどい。
私はお酒を飲み比べて味をどうこう言えるほど繊細な嗅覚をしていない。ウイスキーの感想は概ね、セメダインの匂いがして苦くて美味しい、となる。繊細な味わいはわからないという前提での話として聞いてほしい。
耐えかねて梅酒を加えると、味と香りが足されて、漸く落ち着いて飲めるようになった。この、味わいのないアルコールのしんどい部分だけを胃袋に流し込んでいる感じには、覚えがあった。
私はウイスキーのミニボトルを棚に飾っている。それらを手に取り、ラベルのフォントや瓶のシルエットを、素敵だなぁと思いながら眺めて、一つ選んで、たまに開けて飲むのが趣味である。
口に含むと舌に刺激が走る。琥珀色を思わせる香りと味が膨らむ。飲み込むと胃がクッと熱くなる。やがて喉の奥がボワッと灯るように熱を帯び、心地よくなる。
そういう時間が好きだ。
それで、少し前にとある終売品を開けて飲んだのだけれど、その商品と、ホワイトリカーを飲んだ時の感想が、とても似ている。
そのウイスキーはほのかにマスカットの香りがした。けれど、飲んだ瞬間、香りが淡すぎて味が感じ取れなかった。舌と喉と胃への、熱くて刺すような刺激がやたらと際立った。
ただつらい。
私が「淡すぎる」と感じた香りは、愛好家の方たちには「ふくよかで豊潤」と表現される。私は先にアルコールの刺激に体が負けてしまって、香りが嗅ぎ取れない。それでもわかりたくて、ストレートのあとに、ロック、水割りと、飲み方をいくつか試してみたけれど、降参だった。全然わからない。
淡くでもなく、ただ甘くでもなく、古時計が時間を刻むような感じで香って、刺激と溶け合って、包み込んで酔わせて欲しい。
そういう、酒に対するわがままがある。
そういえば、私は日本酒も辛すぎると飲めない。ワインも赤よりも白が飲みやすい。
これは完全に味の好みの話なのだと思う。
それにしても、自家製梅酒が、数年冷暗所に放置しておくだけで意外にも美味しくなったのは、よい驚きだった。もうしばらく寝かせて、また味を見たい。あとは、先日、ミニボトルのコレクションを数本増やしたので、そのうちそちらも一本づつ、少しずつ、気長に開ける。
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