定年延長と早期退職
こんにちは、ひよこです。
先日スタンレー電気が定年延長と早期退職制度を同時に行うと発表しました。
雇用の長期化に対応する「定年延長」と、人員削減に対応する「早期退職」という相反する施策を同時の行う意図について考察していきたいと思います。
定年延長とは
定年延長とは2013年に施行された「高齢者雇用安定法」によって義務付けられた以下3つの対応を行うことです。
・定年の引き上げ
・継続雇用制度(再雇用制度)の導入
・定年の廃止
約9割の企業がこの3つの対応のうち、継続雇用制度の導入をしていますが、昨今、定年の引き上げを検討する企業が増え始めています。
スタンレー電気のもその1社ということですね。
では、なぜ定年の引き上げをしようとする企業が増えているのか、その背景と企業の本音をみていきましょう。
「定年の引き上げ」を行う理由
1、70歳までの雇用の努力義務化
政府は70歳まで働く機会の確保を企業努力として義務化する、という改正高年齢者雇用安定法などの関連法を2020年3月31日参院本会議で可決し、成立させました。
これにより従来の「定年の引き上げ」「継続雇用の導入」「定年の廃止」に加え、以下の4つの対応が努力義務とされました。
・他の企業への再就職の実現
・個人とのフリーランス契約への資金提供
・個人の企業支援
・個人の社会貢献活動への資金提供
実際に努力義務が課せられるのは2021年4月からとなっているので各社検討段階ですが、65歳まで定年年齢を引き上げ、66歳から70歳までを継続雇用(再雇用)とする方針が多いようです。
60歳で定年を迎え再雇用となると、第一線から離れサポート的な役割を担うことが多くなるので、定年を引き上げる事によって65歳までは現役と同等の仕事をしてもらい、少しでも戦力化していこうという意図だと思います。
2、モチベーションの維持
日本の企業(特に大手企業)の年齢構成を見ると、バブル世代言われる50歳前半が突出しており、今後60歳の定年を迎える社員が増えていきます。社員の30%が60歳以上の再雇用者という会社も増えてくるでしょう。
そうなると、再雇用者がいかにモチベーション高く会社に対し貢献してくれるかが重要になってきます。
しかし再雇用者は仕事に対するモチベーションが下がりやすく、以下の3つの理由が考えられます。(もちろん会社によって異なりますが)
・給与の減少
・責任ある役割から外れる
・評価の対象から外れる
再雇用となると、一旦会社を退職し再契約となりますので、これまで積み上げてきた給与が維持されずリセットされる為、大幅に給与が下がります。大手企業だと5割減くらいになる場合も多いようです。
また、これまで部長や課長といった責任ある立場もなくなり、実質的に賞与もなくなるので、査定や評価をされなくなります。
こうなると、引退までどうのんびり過ごすかという意識が強くなるわけです。
70歳まで雇わなければならない中で、モチベーションを落とさず働いてもらう為には、再雇用制度ではなく定年を引き上げる必要があるという事です。
早期退職を実施する理由
しかし企業の本音としては、社員全員が70歳まで働いて欲しいと思っていません。
長年働いてくれた感謝はあるものの、長く働いた実績があるということは、その人の働きぶりもよくわかっているという事です。また、管理職としては優秀でも、現場の仕事は不向きな方もいると思います。
つまり、残って欲しい人材と、辞めて欲しい人材が明確に別れるという事です。
その事をはっきりさせる為に、再雇用後の働き方を「一律」の処遇から「コース制」に変更する会社が増えてきています。
専門性の高い価値を発揮して頂ける社員は、フルタイムで給与の高いコースに進め、これといった成果を発揮できない社員は、パートタイムで給与の低いコースに進むような設計がされています。
65歳までならなんとか社員全員の雇用に耐えられた企業も70歳までとなるとそうはいきません。こうした背景から、70歳までの定年延長を実施しながら、並行して早期退職制度を導入する事になります。
まとめ
今後次の3つの施策を同時の実施する企業が増えてきます。
・65歳まで定年の引き上げ
・65歳以降を再雇用とし、これまでの働きぶりによってコースを設ける
・早期退職を導入し50代から社外転進を促す
70歳まで雇用しなければいけなくなり、一つの会社で雇用を維持する事が不可能な時代になりました。
日本の労働法制は個人が手厚く保護されていますが、雇用の流動化が進むことは間違いありません。
一方で、60歳を超えてから再就職をしようとしても、まだまだ受け入れ企業は少なく、仕事を選べる状況でもありません。
今のうちから、「自分のキャリアは自分でつくる」という意識で、どのようなスキルや経験を身に付けるべきか、副業やフリーランスも含めどのような働き方をすべきなのか、考えて行く必要がありそうです。
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