外泊許可が出た

3月の下旬から医療保護入院している次男に、外泊許可が出た。
これまでの面会で、状態が良くなってきているのは分かっていたが、このタイミングで外泊許可が出るとは予想していなかった。
次男の担当医から連絡を受けたのは今月の初め。
もうすぐ次男の17歳の誕生日…というタイミングだった。

月2回までできる面会を、次男の誕生日の直前に合わせようかと、家族で話していた矢先だった。
それならば面会よりも、誕生日に一時帰宅するのが良いのでは？

外泊（一時帰宅）は、1泊2日の予定。
誕生日当日のお昼前に迎えに行って、翌日のお昼前に病院に帰るというスケジュールにした。
何故お昼前に帰院するのかというと、次男の今までの行動パターンから。
学校が休みの時、午前中に出かけて昼前に家に帰ると、午後から「おでかけ行こう」と誘っても嫌がることが多いからだ。

外泊の日程が決まると、今度はそれに合わせて我が家の受け入れ態勢を整えなくては。

次男が好きなイタズラで、家族を困らせているのは紙をちぎること。

市の広報でも何かの家電の取説でもレシートでも、次男が目にして気に入った紙類は細かくちぎられる。
まるで人間シュレッダーだ。
抽選前のジャンボ宝くじが、それで2回ぐらい犠牲になった。
ひどいときは、頂いたばかりのお年玉を袋ごとやられたこともある。
（つなぎ合わせて銀行に持って行って交換の手続きをした）

次男の部屋の壁は、以前次男が壁板を剥がしたところを次男が入院してからホームセンターでベニヤ板を買ってきて塞いだ。
次男がこの新しい壁の剥がし口を見つけたら、また剥がされてしまう。
ベニヤ板を取り付けた木ネジを隠し、引っ張って剥がす気になれないよう、ダイソーでリメイクシートを買い込んでベニヤ板に貼り付け、なんとなく不自然さが消えるようにした。
あとは、次男がイタズラしないよう、とにかく見守るだけだ。

外泊当日。
お昼前に病院に迎えに行くと、次男は私の顔を見るなり嬉しそうに笑った。
病院食のおかげで、前回の面会の時よりもさらにスッキリと痩せたように見える。

病院の駐車場を出てしばらくすると、「どらいぶ」
次男らしい言葉に安心する。
あまり混まないドラッグストアで、次男に飲みたいジュースを選ばせて買い、少し遠回りして家に帰った。

「たまいま（ただいま）」と帰ってきた次男を見たじーちゃんの嬉しそうな顔といったら…。

家に入った次男は、昼食の準備ができるまで家の中を確認するかのように歩き回り、庭に出てシャクヤクの花をむしった。
昼食ができると、次男は自分の分を抱えて居間に行きひとりで食べる。
入院前にいつもやっていた行動。
食べ終わって台所に来て、買い置きのカップ麺を見るなり私のところにもってきた。
「らーめん」
私は次男の次の言葉を聞くまで動かない。
「らーめん」
「ラーメンをどうするの？」
「ちゅくって（作って）」
「ハイ、わかりました」
それから4分後に出来上がったしょうゆ味のカップ麺は、あっという間にたいらげられた。

夕食後に次男のために買ってきたバースデーケーキを出した。
生クリームたっぷりで喜ぶぞ…とワクワクしながら次男を呼びに行くと、次男はテレビに夢中で反応なし。
20分ほど経って、ようやく次男がケーキの前に現れると、6等分（我が家は5人家族）したうちの二切れをあっという間に食べ、皿まで舐める勢いだった。

次男、誕生日おめでとう。
17歳だね。
こんな日が来るなんて想像してなかったよ。

飲み物も食べ物も、好きなだけ飲み食いしてテレビも自由に見られて、テンションが上がったのか次男は夜なかなか寝なかった。
少なくとも私が睡魔に負けた12時頃にはキャハキャハ笑ってたし、スマホのアラームで起きた5時には笑いながら階段を上っていた。
ん？
次男、いったいいつ寝たんだ？

今回の一時帰宅では、次男は怒ったり泣いたり暴れたりということはなかった。
終始ニコニコ ケラケラ うふうふ キャハキャハ笑っていた。
1泊だったからうまくいったのだと思うが、外泊期間が長くなったらどうなるんだろう？

退院できるのか、しばらく入院は続くのか、このあと自宅で暮らすのか施設に入所するのか、今のところどうなるのか私には見当がつかない。

母子分離不安が解消されて、自傷行為とか私への頭突きや髪ひっぱりがすっかりなくなったのであれば、自宅で次男と暮らせるだろう。
でも、そうじゃなかったら…
次男の一時帰宅は成功だったが、不安はまだ残ったままだ。