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「ちゃおなな」は別れの言葉じゃなくて

次男の病院に2度目の面会に行った。

前回の面会の様子はこちら↓


病棟に入って奥の方の部屋に次男はいるはずだったのに、次男の部屋が手前にきていた。
「病室、移動したんですね」と看護師さんに聞いたら、「以前よりだいぶ落ち着いてきましたから」という返事だった。


最初窓越しにちょっとのぞいた時は、次男は布団にくるまって寝ていたのに、ドアを開けたときにはニコニコして立っていた。
私達(私ととーちゃん)の顔を見て、飛び起きたらしい。

相変わらず坊主頭だとはいえ、前回の目の力の弱い岡部とは打って変わって、目にしっかりとした力を感じる。

次男は嬉しすぎてなのか、部屋の中をウロウロと歩き回り、ときどき部屋から出ようとした。
慌てた看護師さんに押し戻されたけれども。


嬉しくて落ち着かない様子の次男に、「(次男のフルネーム)さーん」と声をかけると、「ハイ」と答えた。
「元気ですか」と聞くと「元気です」と答えた。
「イタズラしてませんか?」と聞いたら「…」
質問が難しかったか?


今、ベッドに腰かけて私の隣にいる次男は、入院前のそのずっと前の、暴れない次男に戻ったわけではない。
次男の周りにまだ薄い皮膜のような違和感がある。
まだ本気を出していないような、何か隠し事をしているような、猫をかぶっているような。


次男はベッドとドアの間を行ったり来たりしながら、私やとーちゃんに撫でられて嬉しそうにしている。
そしてぽつんとつぶやいた。
「ちゃおなな」
発音が不正確なのでこう聞こえるが、おそらく「さよなら」と言っている。

「ちゃおなな」
何度か聞いているうちに、これは私達に対する「さよなら」ではなくて、「ここからさよならして家に帰ろう」と言っているのだと分かった。
とーちゃんかーちゃんが来たから、一緒にお家に帰れると思ったのだろう。
次男はとーちゃんに近づくと「どやいぶ」と言った。
これは「ドライブ」、つまり車でどこかに連れて行ってくれということ。
病院を出て、とーちゃんかーちゃんと一緒に、どこかにドライブに行きたいのだ。

「ドライブ」の要求には答えず、次男と手をつないだり頭をなでたりしているうちに、ドアが開いて3人の看護師さんが入ってきた。

「面会時間はここまでです」
次男が私の手を離さない。
看護師さんに囲まれて次男の手の力が緩み、私ととーちゃんは病室を出た。「バイバイ、またくるよ」

後ろ髪をひかれながら病棟の外に出て、病室での普段の様子やどう過ごしているのかを聞いたら、一日中寝ているかぼーっとしているらしい。
逆に次男が興味を持っていそうなことを聞かれ、紙ちぎりやシール貼りのことと、トイレットペーパー大量流しで家のトイレがときどき詰まった話をした。


看護師さんづてで担当医に次男の様子や私たちの要望が伝わるはず。
これから作業療法やリハビリをするだろうし、月が明けたらまた日程を調整して病状説明を聞いたり面会をしたいと思っている。


今回の面会が、次男に変な方向に刺激を与えていないことを願いながら。

よろしければサポートお願いします。 次男が壊した家の壁やその他の修理代に充てたいと思います。