![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/80057221/rectangle_large_type_2_6d917559e47235b7ace8c3fecacb273f.png?width=1200)
血圧コントに根性入れるな!
血圧130だって。なんでだよう。
130の壁切りゃ、新記録じゃねえか。ようし、もう一回、血圧測定。
『133』
上がるはずねえだろう。なんかの間違いか。もう一回。
『140』
ガーン。イスの背もたれに頭打っちまった。そういえば、昔、こんなことがあったなあ。
俺、水泳部。中学校も高校も背泳の選手さ。
ラストスパート。みんな、ブッコ抜いたら、プールの壁に頭ぶつけちまって気絶だ。ゴールで溺れて、審判に助けられて救急車さ。お陰で試合は優勝、表彰式は欠場。トホホだ。
え、そういやあ、俺の兄貴も走り幅跳びの選手だったっけ。
兄貴の話を思い出したぞ。
「学校の授業で、走り幅跳びの試験だよ。みんな素人。俺はプロ。俺は陸上部を代表する選手だぞ。こんなこと、やってらんねえよ。お前だって水泳部だろ。体育で水泳の試験なんか、本気にならねえよな。でもさ、クラスの皆が俺をもちあげるからよ、ついその気になっちまった。本気出したら学校の砂場を超えて、地面にドカンだ。足折って、お陰で引退だよ、引退」
俺は兄貴の思い出に突き上げられて、ついもう一度、血圧測定しちまった。
『150』
これじゃ、走り高飛びじゃねえか。このままじゃ、血圧新記録だ。
そういえば、ベリーロール。俺の中学記録は150センチ。
やっぱり正面跳びより、ベリーロールだよな。
でもさ、女の人にはわからないだろうな。完璧なベリーロールで水平になると、体の真ん中の真ん中が、引っかかっちまうんだ。空中でバーを超すために、腰を引くのが秘伝だな。
きっと背面跳びは、ここから始まったんだぜ。
え、お前、お姉ちゃんいただろって。どうした、最近見かけないね、だって。
実はねえ、姉貴は、これまたスキーのジャンプの選手だったんだ。
それも冬季オリンピックのね。
え、聞いたことがない。そりゃあ、そうだ。わけを話そう。
オリンピックの試合の直前にさ、つい俺、姉貴をからかっちまったのさ。
「翼つけたら、金メダルだね。そしたら、パラシュート、プレゼントするよ」
姉貴の日ごろの減量を皮肉ったのさ。
姉貴、本気で怒っちまってね。
凄いハイジャンプ。それっきり会場を超えて、降りてこなかったよ。姉貴、今ごろ、どこ跳んでんだろ。
あっ、いけね。血圧を測らなくちゃ。
ああ、メーター振り切っちゃった。
測定不能だって。
というわけで、血圧測定では、『根性で血圧を落とそう』としてはいけません。
これも、ハウツウの一つです。
いいなと思ったら応援しよう!
![火山竜一 ( ひやま りゅういち )](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/65092582/profile_459dfe7597ca4a7f7f20acbf3fdd65e1.png?width=600&crop=1:1,smart)