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40歳からのキャリアチェンジ

20年前の自分に声を掛けられるとしたら何と声を掛けるだろう。
田舎の大学生だったわたしは、将来のことなど何もイメージできないまま日々のバイトに没頭しつつ、たまにガストで勉強しながら生きていた。それがよもや東京で働き、40歳になってからキャリアが変わることになろうとは。

俺はスター営業

わたしは新卒で社会人キャリアをスタートして以来、17年間を営業として過ごしてきた。これは生まれてから高校を卒業するのと同じくらいの年数である。
わたしは営業として多くの実績を積んできたという自負を持っていた。

新卒で入社した会社はIT機器の卸売営業という業種で、営業は全国に1,000名程度。いわゆる営業会社である。わたしはその中で最前線の営業であった。最も成果を出した時の成績は全国でTOP2。トップ営業にはなれなかったが、ブロック単位では上位から外れることはなかった。振り返ってみれば周囲の人のお膳立てによってもたらされた成果だったが、わたしは自分がスーパー営業マンなのだと信じて疑わなかった。とんだ幸せ野郎であった。

その後サイボウズに転職をするが、変わらず営業をやっていた。入社当初ははじめての転職に戸惑いまくっていた。(その頃の様子を取材してもらったサイボウズ式の記事はこちら)

入社して3年目になった時、売上トップの大塚商会を担当させてもらうことになった。IT業界では誰もが知る日本トップレベルの営業会社。様々な困難と対峙しながらも営業活動を続けている内に担当期間は5年を迎えようとしていた。
上司から声を掛けてもらったのはそんな時だった。

「マーケに興味ない?」

まさかのマーケティングへの異動

人間は歳を取る。歳を取るとパフォーマンスが低下するのだと鬼舞辻無惨は言っていた。鬼舞辻無惨ですら加齢によってパフォーマンスが低下するのであれば人間であればなおさらであろう。
そんな自分が40歳を目前にマーケでやっていけるのか?
(鬼舞辻無惨の場合は9千年歳を取っていた)

心理学者のユングは言った。「40歳は人生の正午である。」と。仕事人としてのピークが30代であるならば、40歳からは下り坂と捉える人もいるかもしれない。
人生の正午について、キャリアデザインの書籍では以下のように書かれている。

午前の昇る太陽の太陽の勢いはすさまじいが、その勢いゆえに背景に追いやったもの、影になってしまっていたものを、しっかり統合していくのが、人生の正午以降の課題だという。

働くひとのためのキャリア・デザインより

わたしのキャリアは営業職とともにあると思っていた。自分でも思いも寄らないキャリアを提示してもらって、統合していく機会を得ることになったのだ。
新しい職はプロダクトマーケティングマネージャーという仕事だ。気づけばとてもワクワクしていた。

知らない世界に飛び込むということ

新人の頃先輩に「わからないことはない?今しか聞けないよ。」と言われた。いやいや何がわからないかがわからないのだから、聞いたら教えてくれよと思った。
しかし40歳の新人はそうはいかない。わからないことだらけだが、時間は戻ってはくれないし、なんせわたしは責任者でもあるのだ。会議に出席すれば意思決定を求められる。わからないことだらけでも決定の一つひとつに責任を持たなければならない。
これはキャリアチェンジ初期に最も大変なことの一つだった。とはいえ営業時代における顧客対応でも常に判断をくだしていく必要はあった。自分が動けば解決できるのか。他者の協力が必要なのか。必要なら誰に協力を仰ぐのか。考えることのフレームは案外共通しているものだった。

とはいえ困ったことは多かった。マーケティング全般の知識、広告を中心としたプロモーション知識、製品開発についてなどなど。
とにかく本を読むことで知識を詰め込んだ。そして読んだことを必ず自分なりに一度やってみる。これに尽きる。

40歳にとってのキャリアチェンジとは

大学を選ぶ時、はじめてリアルに自分の将来の輪郭をイメージした気がする。高校は普通科だったので、はじめて専門の学部を選ぶことになった。わたしにとってはあの時が人生ではじめて進路を " 選択した " ことになった。
そして社会人としても18年目を迎えようとする頃に転機が訪れた。選択させてもらえたことに感謝している。何物にも代えがたい経験の真っ只中だ。

キャリア理論の中には「計画的偶発性理論」というものがある。偶然の出来事やタイミングを活かしてより良いキャリアに繋げていくという考え方だ。

「計画された」という部分が、デザインやひびや地図(キャリア・プラン)にかかわっている。大きな方向づけやプランがあるからこそ、アクションに元気、自信やはずみが加わり、活動水準も高いので、いろんなひと、いろんな機会、いろんなものに出会い、偶然がうまく輝くように生かせる。

働くひとのためのキャリア・デザインより

大きな指針を持った上で、目の前に現れたチャンスを掴み取る。いくつになってもポジティブに機会を捉えていきたいと思う。40歳だからこそやれることもきっとあるだろう。

さて、20年前の自分に声を掛けられるのであれば、だ。
俺は前向きに諦めず変化と挑戦を続けているぞと胸を張って伝えたい。
そして明日の自分からも同じ言葉が聞きたい。


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