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居合わせず|2月6日(金)松本アリヤ

朝、11時に出社して、先日の撮影分のシーケンス整理、いわゆる「段積み」という作業をする。先日はあるアーティストの武道館ライブに密着というか撮影で入っていたが、いくつか密着カメラが入っている中で、最も招かれざる客だったというか、ふざけた番組を作っているから、気楽なもんだった。しかし常にそういう存在でありたい。人の役に立たない仕事がしたい、と思って就職した今の仕事だが、その精神はかなり自分の救いとなっている。

プレビュー、いわゆる試写。

試写室は往年の喫煙によって真っ黄色になっている。うちの会社は4年前くらいに禁煙になったがそれまでは各所で余裕で吸えていた。そのヤニだらけのフロアも、家賃削減のためにビルに返却する。

Adobeなどのサブスクリプションソフトの発達によって、個人個人が自宅でも編集できるようになった。私の会社にはカラオケボックスあるいはレコーディングブースのような部屋が存在し、そこに一台ずつ編集機が置いてある。そこに入っているディレクターの作業を止めて何か用事を言いつけに行くのは緊張したものだが、それもなくなる。

なくなった結果新しいものが生まれるということはある。
自分が最近やっている漫談というジャンルも、無声映画にナレーションのような語りを入れていた活弁士たちがトーキーの登場によって職を失った結果、寄席に進出して始まったものらしい。

それが私のような彷徨える芸人の芸の駆け込み寺になっているのは面白いことだ。(ずっとやってきたコントを最近はやらずに漫談をやっているという経緯が存在することを、自明のものとして語っている)

夜は美学校で、4月に行われる修了展についての会議。持ってきた案について発表した。それぞれが発表している中、突然、美学校スタッフの方から、今話題に上がっている場所は予約が取れていない、という報告があり、一気に穏やかならぬ感じに。担当した生徒が教室を出てスタッフと話したり、てんやわんやになった。自分はそこで休憩に行った。

しかし突如、予想もしていなかったフロアの空間が出現し、ことなきを得そうだった。
その話し合いの間コンビニに行っていたので、おもしろく語れそうな状況なのによくわかっていない。


松本アリヤ
お笑い。小説。Nintendo Switchオンラインのビリヤードのゲームが面白いです。


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