故郷
水平線からゆっくりと太陽が昇る
闇のなか
星々がきらめき
月が
不規則に奏でる波の上に
キラキラと道を描く
他には何も無い夜が
やがて紫色へと世界を変えて
鳥たちが何処からともなくやってくる
ぼんやりとした山の輪郭が
次第に濃い緑と青い空を分けていく
真っ黒だった海は
太陽が高く昇るほど碧さを深め
透明に深く深く広がっていく
喧騒などどこにもない
風の音が時に優しく
時に厳しく
草木を揺らし流れていく
ひたすらに照らされた大地から
熱がゆっくりと空へと昇るころ
太陽は静かに水平線へと沈んでいく
燃え落ちるのではないかと思うほどの
茜色を発しながら
空を幾重にも染めていく
海はやがて黄金にかがやき
そして
ゆっくりと碧は深い紫色へと
変化していく
空がやがてその色を失うようにゆっくりと闇に染まるころ
海もまた闇へと流れていく
そしてまた不規則な波音だけが
辺りを包む
他には何も無い
変わらない営みが繰り返される
言葉では残せない美しさで溢れている
始まりで終わりの場所なのだろう
あの太陽も
あの波音も
褪せることなく
わたしの中で生きている
どこへ行こうとも
確かに
わたしの中で生きている
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