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スモールステップの原理 -効果的部下育成、子育ての大原則

「部下指導に、悩んでいませんか」 また、「教えてもスキル向上しない原因を『部下のやる気』のせいにしていませんか」 

もちろん部下にも原因があるでしょう。しかし、どんな部下でも適切なアドバイスで成長を促せるのが、マネジャーの責務ではないでしょうか。

ビジネスからスポーツまで、すべてのスキルアップに使える人材育成原則が「スモールステップの原理」です。スモールステップの原理をうまく活用できれば、どんな相手でも、スキルアップさせることが可能です。

「スモールステップの原理 -効果的部下育成、子育ての大原則」と題して、子育てから部下指導まで使える人材開発理論「スモールステップの原理」について、事例を交え解説します。

1.スモールステップの原理とは

スモールステップの原理は、ジャンル問わずすべてに通じる、人材育成のポイントの1つだと思います。

スモールステップの原理の基本思想は、「学習内容を小さな単位(スモールステップ)に分割して、小刻みに一つ一つ段階を踏んで教えたほうが、教育効果が高い」というものです。

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2.スモールステップの原理で娘にキャッチボールを教えてみた

あるとき子供と公園でキャッチボールをしました。幼稚園の女の子なのですが、これが驚くほどできません。いくらゆっくり投げても、キャッチどころか触ることができない。さらに投げたボールを目で追うことすら出来ず、素通りです。

ここで筆者は、スモールステップの原理を応用してキャッチボールを教えてみることにしました。

観察してなぜできないか分析する

しばらくボールを投げてみましたが、できるようになる気配が全くありません。そこで、観察したところ、「投げたボールが目で終えていないこと」「そもそもボールを追う意識がないこと」がわかりました。

スモールステップにスキルを分解、躓くポイントを発見する

非常にゆっくりボールを投げて、相当簡単にしたつもりでしたが、まだ娘の能力に合っていないのです。もっと細かくスキルのステップを分解すし、スモールステップの原理で、相手の能力に合わせ、1つ1つ段階的に教えるのです。

ここで考えたのは、「彼女は3次元の動きを目でとらえるのが、まだ難しいのではないか?」ということでした。幼児(特に女子)の空間把握能力は、かなり低いといわれています。

どうしたら、スモールステップになるか。「空間把握ではなく、平面把握に変えたらどうか?」つまり、3次元を2次元に一段レベルを落とせば、できるのではないかと仮説を立てました。

スモールステップの原理:相手のレベルにあった次の行動ステップを指導

「空間把握能力ではなく平面把握能力」「3次元から2次元」にスモールステップを刻んだ具体的な行動を考えてみました。つまり、ボールを投げる(3次元の動き)のをやめて、ボールを転がす(2次元)ことにしました。

2次元ならキャッチできた

「ボールを転がす」ことにより、キャッチボールからステップを1段落とします。

3次元から2次元にする=ボールを転がすと、まず「ボールを目で追うこと」ができるようになりました。そして、ついにボールが拾えるようになりました。

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まだ、投げたボールのキャッチはできません。しかし、次のステップに進んだのは間違いありません。

3.スモールステップの原理で、打ち合わせで寝る部下が寝ないように

次は、部下育成の事例です。「打ち合わせで寝る後輩はどうしたら寝なくなるか?」をスモールステップの原理で解決した事例です。

できない・やる気がないではなく、できる方法を考える

以前の職場の後輩は、打ち合わせで寝ることがよくありました。ここまでは、よくあることですが、彼は、人数が5名程度の顧客先との打ち合わせでも寝ていました。つわものですね。

当然何度か怒られたわけですが、いくら注意しても直りません。普通に考えれば、明らかに「やる気がない」ですね。

あなたが彼の部下指導役だったら、どうしますか?
「怒る?」すでにやりました。「毎回注意する?」それもやりました。
結局本質的な原因を感ゲル、スモールステップの原理で、細かく分解し彼のレベルにあった行動を指導しました。実際に彼は、その後打合せで寝ることは一切なくなったのです。

なぜ彼は打ち合わせで眠くなるのか分析。躓くポイントを発見

なかなか直らないので、彼がなぜ寝てしまうのか原因を考えました。

我々の仮説は、「打ち合わせ中にヒマだから」です。新しく入社した彼は、打ち合わせ中の役割がなくヒマでした。打ち合わせで役割がない場合、興味のない打ち合わせや講演で居眠りしてしまうのが誰もが経験することです。

相手に合わせた次のスモールステップを指導:小さな役割を持つ

そこで、彼に1つの役割を与えることにしました。非常に単純で「どんなことでもよいので、打ち合わせ中に、1つだけ顧客に質問すること」でした。

たったこれだけの指示で、彼は打ち合わせ中に寝なかったのです。なぜなら、質問するには、顧客の話を集中して聞く必要があります。なにより、彼には「自分の役割」ができたのです。

それ以来、彼はどんどん質問回数も増加していき、打ち合わせで寝ることもなくなりました。

4.スモールステップ原理適用プロセス

ステップ1:簡単そうに見えて本人には高いハードルを見つける

・幼児のキャッチボール:3次元の空間把握はハードルが高すぎた
・キャッチボールをすること=「3次元で目で追いキャッチすることは、4歳女子にはハードルが高すぎた。
・新人部下の打ち合わせ:1時間集中することは、新人には高いハードルだった

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あなたが「顧客との打ち合わせで寝ること」はないでしょう。しかし、「何も自分の役割がない1時間の打ち合わせ」と考えると眠くなるのも、ある程度仕方がないことです。さらに、それが新人ならなおさらです。

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ステップ2:スモールステップの原理で実行可能な小さな階段に分解

・幼児のキャッチボールでは、できない原因分析し、細かステップに分解。具体的な学習行動スモールステップに落とし、1つ1つクリアした。

・ スモールステップで1つずつ「できた経験」をさせモチベーションを維持した。

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①空間把握能力が高くないためキャッチボールは目で追うことすらできない。
②相手に合わせた次のスモールステップを考案。平面(2次元)で、目で追わせることにした。
③次のスモールステップとして、目で追うだけでなく、「目で追ってつかむ」ことを繰り返す。
④次のスモールステップは空間把握能力向上、つまり「3次元の物体を目で追えること」と想像される

5.スモールステップの原理を使った部下育成のポイント

部下育成ポイント①課題を相手に合わせ細かく分解

スモールステップ原理を人材育成に応用するための一つのキモはステップを細かく分解することです。

スモールステップ原理で教えることに慣れていない方は、まずは、「そこまでやるの?」というぐらい、細かくステップを分解しください。目安は、いつもの3倍です。

部下育成ポイント②相手に合った具体的行動を提示

スモールステップの原理を使った人材育成において、「難しいが重要なポイントが『相手に合わせた』という部分です。」

できないところ、躓くところは、相手によって異なります。そのときの相手にあった、ほどよいスモールステップを考え、実現可能な行動に落としてあげます。

例:打合せで寝ない:躓く原因を考え、スモールステップ分解しキー行動を指導

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①原因を分解するとヒマだということがわかった。
②そして、打合せ中の1時間起き続けるためには自分の役割が必要と考えた
③「1つ質問する」という小さな役割をわかりやすい行動指針として与えた
④このキー行動をきっかけに、スモールステップで徐々にステップをクリアした。

部下育成ポイント③焦らず、1つのステップを完全にクリアささせたら次のステップへ

人材育成でよくある間違いが「教えすぎ」です。教えすぎは、相手に消化不良を起こさせてしまう場合も多く、かえって相手を混乱させてしまう場合もあります。

急がば回れ。スモールステップ原則では、一度に指摘するポイントは、多くて3つ、できれば一つにしぼります。そして、身に付くレベルまで、フィードバックを繰り返します。「できるまで」ではなく「身に付くまで」が基本です。

部下育成ポイント④できる上司は、部下のスモールステップがわからない

上司は通常デキる人です。デキる人の教育者としての弱点は、「自分が簡単にできるので、相手がどこで躓いているのか理解できない」ことです。

教える立場としては、むしろ躓き、挫折をした人の方が相手の立場がわかります。デキる上司は自分の基準を部下に、そのまま当てはめてはいけません。部下のスキルに合ったスモールステップを見極める忍耐が必要です。

部下のやる気次第ではなく、部下ができるステップ・モチベーションが維持できるステップを提示する。これが、プロのマネジャーの腕のみせ所です。

6.スモールステップの原理でモチベーションを向上させる

スモールステップの原理でやる気を引き出す

スモールステップの原理での部下育成のメリットは、モチベーションが維持しやすいことです。スモールステップの原理をうまく使いこなせば、スキル向上はもちろん、相手のやる気を引き出し、続けるモチベーションを維持することができます。

スモールステップの原理で「できた喜び」をたくさん感じさせる

人間は、「できない」ことが続くとモチベーションが下がります。スモールステップの原理で段階的に難易度をあげて「できる」ことを繰り返すことにより、モチベーションの維持が可能です。

すなわち、スモールステップで「できない」より「できる」をたくさん体験させることで学習モチベーションが高まっていきます。スモールステップの上手な適用がモチベーションに影響を与えるのは、子育てで顕著ですが、大人の人材育成方法でも同じです。

まず、好きになる、モチベーションを維持・向上することが成長の大前提です。「できた!」→「やろう」→「できた!」→「またやろう」学習サイクルが早く回せるのがスモールステップの原理の魅力です。

子供の教育の点から重要なのは、「転がしたボールをとることを楽しんでいること」つまり、高いモチベーションでトレーニングを行っていることです。

しかし、「楽しい方がモチベーションが続く」ことは子供だけでなく大人も同様です。

スモールステップの原理:「やる気がない」ではなく「できない」と視点転換

人材育成では、教える側は、まずは相手のやる気のせいにしない姿勢が必要です。

これは、教える側が「優秀な人」「やる気がある人」ほど、「あいつは、やる気がない!」で済ませてしまう傾向があります。本当にあなたのできることはないのでしょうか。

このような叱責、「できない理由を相手のやる気に求めるのは、教育の放棄」だと考えています。「やる気がない」のはなく、「スキルとしてできない」と考え、具体的にできる方法を指導することが、教育者の役割です。このとき、スモールステップの原理は重要です。我々は最も有効な指導方針と考えています.

まとめ-スモールステップの原理はスキルと意識教育に有効

「スモールステップの原理を使った人材育成」についてまとめました。いかがでしたでしょうか?スモールステップの原理は子育てでは必須の技術です。しかし、大人の人材開発でも有効です。

人材育成には大きく「知識教育」「スキル教育」「意識教育」3つのジャンルがあります。スモールステップの原理が特に有効なジャンルはどこでしょうか。

着実なスキル向上をもたらすスモールステップの原理

日大人の人材教育ではスキル教育、しかも実践的なスキル教育が重視される傾向が高まっています。

スキル教育では知識教育と違い、実際にやってみる経験を積み重ねることが必須です。そのとき、有効な人材育成方法がスモールステップの原理です。

意識教育にも有効なスモールステップの原理

スモールステップの原理は、意識教育にも有効です。

むしろ「スモールステップの原理こそ、意識教育、意識変革に必須といえる」でしょう。大人も子供も人は、「できる」とうれしいものです。「できた!」という感覚、成長実感を得られれば意識が変わります。

スモールステップの階段をうまく上り続ければ、少しずつ意識が前向きに変化し、スキル向上だけでなく、「意識改革」レベルまで、到達する方も多いのです。

(文責:プロジェクトファシリテーター、ロジカルシンキング講師 海老原 一司)

ロジカルシンキング講師のビジネスナレッジ

https://project-facilitator.com/smalll-step-teaching/


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