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営業質問フレームワーク「BANT」活用4つのコツ

「あなたは商談で適切な営業質問ができていますか?」
「営業質問を考えるための基本の型を持っていますか?」

営業研修講師の海老原です。
営業の情報収集の基本は、商談中の質問です。しかし、営業質問フレームワークを持っている人は意外と少ないものです。

基本の営業質問フレームワークが「BANT」です。

BANTは、シンプルで使いやすく応用範囲が広い営業質問フレームワークです。

面談での営業質問は瞬発力が求められます。シンプルな営業質問フレームワークBANTを頭に入れ、瞬時に引き出せるようにしておくべきです。

1.営業フレームワークBANTとは

営業質問フレームワークにBANTがあります。BANTとは、Budget,Authority,Needs,Time frameの頭文字をとった略語で、「予算」「決裁権」「ニーズ」「導入時期」の4つの営業質問項目です。BANT情報は、シンプルかつ汎用的な営業フレームワークです。

・Budget:今回の商談の予算
・Authority:決裁権限者、承認のポイント
・Needs:顧客ニーズ(誰のどんなニーズか?どのくらい強いか?)
・Timeframe:導入時期、検討時期、承認時期など購買プロセスでポイントとなる時期

BANTは、営業質問フレームワークとして最も有名です。営業研修の受講者を見ていると意外と知らない方も多いです。

BANTは、適切な営業活動をするうえでの必須項目です。BANTのうち1つでも漏れがあると商談が不利になります。この機会にBANTを頭にたたき込みましょう。

1-1.BANTの予算とは

営業フレームワークBANTの1つ目は、Budget=予算です。

どの程度の購買予算金額を想定しているか?
予算確保の目処はあるのか?
予算金額確保目処の確からしさはどの程度か?

「予算情報を質問するくらい営業の基本だろう。誰でもやっている」と思うかもしれません。しかし、BANTの予算は、営業質問スキル次第で得られる情報の質が大きく変わります。

顧客担当者の最初の回答だけで予算額を判断しては、商談の最後に苦労することになります。例えば、商談の受注直前で突然、大幅な値引きを依頼されたことがある営業担当者は多いでしょう。これは顧客担当者の上司に対する調整ミスです。

この場合、営業はBANT情報の「予算確保目処の確からしさ」の確認が弱かったのです。

1-2.BANTの決裁権とは

営業フレームワークBANTの2つ目は、Authority=決裁権限です。

BANTでは「決裁権限者」と、ある人にだけ注目する解釈もあります。
しかし、私は最終決裁者だけでなく、購買プロセスに関する権限の全体像把握を薦めます。

BANTの決済権とは、具体的には商談での次の状況を確認します。

今回の商談金額で、最終決裁者は誰か?
最終決裁者の判断基準は何か? 普段の基準は?今回は?
承認過程で、方針に影響を与えたり、最終決裁者に上がる前に止める人物はいないか? いるとしたら、どんな影響を与えるか?

最終決裁者とは

BANTで把握すべきは「最終決裁者」です。最終決裁者は、その名の通り最後の意思決定をする人、この人がOKを出せば購買契約が成立する人です。

BANTヒアリングでは、最終決裁者と顧客担当窓口との役職階層が離れているほど、最終決裁者の意向を掴むことが重要です。

「大きな商談では稟議書を作成した顧客担当者が、最終決裁者に会うのは年に数回しかない」ということも日常茶飯事です。

商談終盤で、急に判断が変わること多くの営業担当者が経験することです。原因の多くは、顧客窓口担当者と最終決裁者のコミュニケーションギャップ、認識のズレにあります。

BANT情報の最終決裁者の意向は多面的に確認しましょう。

暗黙の権限委譲が起きるとき

BANT情報では、最終決裁者の意向さえ掴めれば安心な訳ではありません。役職が上がれば上がるほど多くの稟議が上がってきます。役員クラスなら毎月数百件の稟議承認をしています。

つまり、顧客企業内で権限の大きい人ほどチェック仕切れない数の決済がある。すると、暗黙の権限委譲が起きます。

例えば、「この部下の稟議はいつもポイントを押さえていて任せても問題ない。今回も承認してもよいだろう」という思考です。

この場合は、BANT情報で掴むべきは、最終決裁者より実質的に権限委譲された部下の意向になります。

BANTの決済権で把握すべきは、「最終決裁者」と「実質的に権限を持っている人、最終決裁者に最も影響を与える人は誰か?」の2つが重要です。

1-3.BANTのニーズとは

営業フレームワークBANT情報の3つ目は、Needs=顧客ニーズです。今回の商談において、次の内容を把握します。

何に対するニーズか?
誰にとってのニーズか?
ニーズは確かにあるか?
ニーズは強いか?

何に対するニーズか?

顧客ニーズらしきものを見つけたら、まずは営業質問で明確化・具体化します。顧客は意外とニーズをしっかり言語化できないことも多いです。
誰にとってのニーズか?

次に営業質問で誰にとってのニーズかを確認します。同じ物事でも、誰の立場に立つかで課題の種類、大きさが変わってきます。

例えば、「担当者個人ニーズがわかったが、組織ニーズと合致していなかった」というのはよくある失敗です。BtoB営業では、組織の経済合理的メリットが必要です。

ニーズは確かにあるか?

3つ目は営業質問で「ニーズの確からしさ」を確認します。顧客担当者が「ニーズがある」といえば必ずあるように思えます。しかし、実際には当初言われたニーズがないこともよく起きます。

顧客担当者のいうニーズは顧客企業の課題仮説です。仮説ですから外れることもあります。仮説の根拠がどこまで強いかの確認が必要です。

ニーズは強いか?

最後はニーズの強さです。言い換えれば、「顧客がどれだけ困っているか?」です。ニーズが明確で確実にあるのに商談が立ち消えになってしまった。これはニーズが弱かった、顧客がそれほど困っていなかったのです。

なお、BtoB営業では、基本的にニーズの強さは金額に言い換えられるべきです。基本的には、金額換算した効果が高いほどニーズが強いと言って良いでしょう。

1-4.BANTの導入時期とは

営業フレームワークBANT情報の4つ目は、Timeframe=導入時期です。Timeframeは導入時期と訳されます。しかし、導入時期とだけ考えていては、BANTを深く理解することはできません。

BANTの「導入時期」はある1点の時間を示しています。例えば9月導入予定などです。一方「Timeframe」は時間の幅があります。商談がスタートしてから商談終了までの時間の流れがどのように進むのか。これがタイムフレームです。


BANTのタイムフレームでは、今回の商談で次の内容を把握します。

導入時期はいつか?
導入時期から逆算して商談スタートから商談決定全体のスケジュールはどうなるか?
全体スケジュールのうち主要なマイルストーン(クリアしないと次に進めない中間地点)は何か?
それぞれのマイルストーンはいつか?
各マイルストーンでキーとなる顧客メンバーは誰か?
マイルストーンをクリアするために自社はどんなスケジュールで動くべきか?

時間軸は顧客の購買検討プロセスで把握する

BANTのTimeframeは、顧客の購買検討プロセスから把握できるとよいでしょう。

例えば、以下のようにプロセスごとに概算時期を把握します。

商品の基本情報収集:9月いっぱい
導入商品の要件決定:10月
導入商品の比較検討:11月
テスト運用:12月前半
見積・稟議:12月後半

購買検討プロセスを把握し、そのプロセスに沿ったアクションをとるのがBtoB営業の基本です。

2.営業フレームワークBANT活用4つのコツ

営業フレームワークBANT活用の4つのコツをまとめます。

2-1.BANTヒアリングの順序に注意

営業フレームワークBANTのコツ。1つ目は、Budget(予算)ヒアリングの順番です。

概算予算は最初に把握

BANTの予算額は、商談で最初につかむべきです。予算額は営業ヒアリングの基本中の基本ともいえますが、意外としっかり確認されない項目です。

BANT情報で重要なのは早い時点から予算概算を確認すること。概算とは10万円か、100万円か、1000万円か、という金額の桁感です。

予算額が変われば営業質問が変わる

BANTの予算額が大きく変われば、連動して「決裁権限の段階」「ニーズの幅」「スケジュール感」などBANTの他の項目も変わってきます。予算100万円のBANTヒアリングと、予算1000万円のANTヒアリングは別物と考えるべきです。

「Budget」が変われば「Authority、Needs、Timeframe」も変わる
【BANT】 【金額小】 【金額中】 【金額大】
Budget(予算) 10万円 100万円 1000万円
Authority(権限) 課長決裁 部長決裁 役員決裁
Needs(必要性) 課長の課題 部の課題 会社の課題
Timeframe(時期) 1ヶ月 3ヶ月 6ヶ月
予算額でヒアリング内容が変わる例

2-2.予算額の強い根拠を探す

営業フレームワークBANTのコツ。2つ目は、Budget(予算)の根拠です。

BANT情報の予算額が確認できたら、その根拠の強さを見極めます。

例えば、顧客の言った金額で提案をしたのに、結局予算が取れずに商談が頓挫したり、最後に大幅な値引きを求めらたりしたことがないでしょうか。これは、多くの場合予算額の根拠の強さの確認が弱いことが原因です。

BANT情報の予算額根拠で注意すべき1つ目は、顧客窓口担当者が言っているだけ、という場合。

上司の決済権限者の意向を確認せず、期待だけで予算額を言っている窓口担当者も多いものです。上司は、どう思っているのか? 過去に同等の内容で予算が降りたときはあるのか?などの確認が必要です。

BANT情報の予算額根拠で注意すべき2つ目は、そもそも算をとっていない場合です。予算額を確認したときに、「見積もりをみて考えます」といったはぐらかすような答えがあったら要注意です。単なる情報収集の場合も多いです。

このような、まだ商談になっていない情報収集ステータスの顧客に対して、膨大な時間をかけ提案書を作ってしまう営業をよくみかけます。

BANT情報でしっかりした案件の見極めができれば営業の無駄もありません。

2-3.BtoB顧客の決裁権は集合体で考える

営業フレームワークBANTのコツ。3つ目は、Authority(権限)の捉え方です。

BtoBとBtoCでは購買意思決定が異なります。最大の違いは購買意思決定を組織(集合体)としてするか、個人でするか、です。

BANTの決裁権は、顧客企業を人の意思決定関与者の集合体(ユニット)と捉え関係者を洗い出しましょう。
決裁権整理に便利なフレームワーク:DMUマップ

BANTの決裁権を洗い出すのに使えるフレームワークがDMU(Decision Making Unit)です。DMUをより深く知りたい方は次の記事を参照ください。

記事リンク:DMUマップとは-BtoBマーケティングフレームワーク
稟議書承認フローを把握する

BANTの決裁権限を理解することは、「稟議書の承認フローと承認権限を把握すること」とほぼイコールと思って良いでしょう。

BANTヒアリングで、最終決裁権限者が誰かだけに、注力する営業パーソンも多いです。しかし、特に大きな商談では、顧客意思決定メカニズム全体を理解するようにしましょう。最終決定は意思決定の集合体です。
2-4.まず稟議起案者を押さえる

営業フレームワークBANTのコツ。4つ目は、Authority(権限)のキーマンの考え方です。

BANT情報で最初に知りたいのが、「稟議起案者」です。より具体的には、「顧客が社内稟議を通すための稟議書を書く主体は誰か?」です。

BANTの決裁権で、最終決裁権限者の把握は重要です。しかし、稟議起案者を探すのが先決です。

商談成立とは、顧客企業の最終決裁者が稟議を承認することです。これを起案者からみると、顧客の稟議起案者が、最終承認に必要十分な材料を揃えることです。営業担当者の仕事は、起案者に「これなら稟議が通る」と思える情報を提供すること。起案者を把握してはじめて、営業が始まります。

意外とわかりにくい稟議起案者

BANTの決裁権で、稟議起案者を最初に把握すべきと書きました。窓口担当者が稟議起案者でない場合も多いのです。

例えば、中堅社員のAさんが稟議起案者。しかし、Aさんの後輩のBさんが情報収集のため1人でコンタクトしてきた。この商談では、稟議起案者のAさんに会うこと、最低でもAさんの意向把握が必要です。

後輩のBさんは商談に対して特段の自分の意思を持たずに単にAさんの手足として動いているだけかもしれません。このとき、Bさんに聞いたニーズだけを元に提案すると失敗する可能性が高いです。

3.営業フレームワークBANTのテクニック

BtoB営業の基本は対面によるヒアリングです。「BANTの概念がわかったが、ヒアリングで情報をしっかり入手できる自信がない」という方のためのテクニックを記載します。

3-1.BANTの決裁権ヒアリングテクニック

BANTの決裁権=意思決定関与者は、顧客側からあえて情報を伝えてくることはほとんどありません。営業側から仕掛けてヒアリングする必要があります。

BANT情報の引き出し方は、面談の流れに沿って「次はどうなりますか?」という聞き方がスムースです。

「この次のステップはどうなりますか?」
「部長に報告して部長判断ですね」
「●●部の部長は、××さんでしたね?」
「そうです」
「他に事前にお話を伺ったりするする方はいらっしゃらないのですか?」
「そうですね。技術部の▲▲課長は決定前に確認したがると思います。

(文責:プロジェクトファシリテーター 海老原一司)

■ロジカルシンキング講師のビジネスナレッジサイト

https://project-facilitator.com/bant-info/


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