友達

忘れない友人がいる。漫画が好きという簡単な理由で、気が合ってしまった。往復3時間と過酷な通学、ほぼ会う痴漢、気に入らない学校、ブラック校則、中々のハードモードだった。高1の時にやめると言って大暴れしたのだが、無駄に終わった。父が頑として首を縦に振らなかった。私の中で何かが崩れ始めた。もうどうでもいいや、花嫁修業学校のようだった。下調べが不十分すべての原因だった。その友人はもっと大変な思いをしていたのだと、今ならわかる。月刊マーガレットを苦にも思わず彼女に貸してあげた。面白かった、と言って綺麗なまま返してくれた。3年になると彼女とクラスが分かれてしまった。休み時間は隣のクラスに行くのが当たり前になっていた。ある日買い物に付き合って欲しいと言われた。彼女と行くのは初めてだった。近くのショッピングセンターで外出着を買いだした。確かセーターとパンツだったと思う。背の低い彼女にはパンツの丈が長すぎた。お直しに数日かかると言われ急に顔いろが変わった。どうしょう、家来る母が直せるからその代り家めちゃくちゃ汚いよ。猫と母はいつも仕事をしていたのでよその家のように綺麗ではない。大丈夫、と機嫌よく来てくれた。あっという間にお直しが終わった。こんなに綺麗なの初めてと喜んでくれた。これで一緒に遊べるね。うんとうなずいたのが最後の会話になるとは思いもしなかった。少し前から金使いが荒くなっていた。8冊の文庫本をこれあげるかえさなくっていいよ。いや返すよ、と変な会話になっていた。月曜日に会いにいくと彼女は休んでいた。2週間たっても来ないもうどうなっているのか心配になって、職員室に聞きにいった。がらっと開けると彼女は自主退学になっていた。もう一人の子にその事実を話した。噓といったきり言葉が出なかった。色んな憶測が流れていたが真実がわからない。もらった漫画本は20歳の時に古本屋に売ってしまった。健気に困難に打ち勝つ少女の物語、なんだよバカ。私じゃどうにもできなかったのかよ。でも幸せでいてくれたらそれでいいよ。