ある男 - 平野啓一郎


この本を知ったのは確か・・・沖宗千津子さんの記事をYahooニュースか何かで見た時のコメント欄じゃなかったかな。
それすらも忘れていて、久々にKindleを開いたらサンプル版がダウンロードしてあって、ちらっと読んだんだよね、一昨日。



この本さ、導入が最高だよね。
前書きも含めて一気に引き込まれた。
サンプル版で読めたのは「これ弟じゃないよ。」ってところ位までなんだけど。
速攻で課金したw
続きが気になって。
これは上手なプロモーションだな。
あそこまで読んだら気になって誰だってきっと後戻りできないよね。

まぁ読んだわけだが。
ネタバレを若干含むので読むつもりがあって未読の方はこの辺りでおやめください。

戸籍ブローカーみたいなのが出てきたあたりで若干冷めたんだよね。
あっ、そういう話?と思って。
絵がつなぐ血筋はちょっと面白かったけど。
謎がとけてく過程は楽しかったけど、作者の思想の代弁者としての主人公はうざかったな。
くどいよね、その話必要?って思うし、反論したくなって、それがこの小説のノイズだったな。
100年前の話のことグズグズしかもしつこくしつこくいわれても。
阪神淡路大震災でそんなことありましたか?
東日本大震災でそんなことありましたか?
それでも横浜は信用できませんか?
それは関東大震災の朝鮮人虐殺の前科があるからですよね?
主人公はずっとそれに囚われてる。
それなのに北朝鮮の拉致事件があったからと「北朝鮮のスパイに戸籍を乗っ取られたのではないか」と言った日本人のことは責める。
この作者も主人公も中立を保ってるように見せてるけど全然中立じゃない。
作者から一方的に投げつけてくるから読んでてイライラした。
なんで日本は排外主義とかいわれなきゃなんねぇの?
死刑のくだりとか戸籍はいらないとかのくだりも。
作者の思想が押し付けがましいよ。
リベラルぶってるけど多様性が逆にないと思う。
西部邁の「友情-ある半チョッパリとの四十五年-」を読んでみてくれよ。
この本みたく浅くないよ。
あれは現実のことだから作り物が敵わないのは当たり前だけど。
ファントムピークスの作者も小説の中で登場人物に「差別の元になるから戸籍はいらない」みたいなこと言わせてたよね。
こっち界隈の人って戸籍に恨みでもあるの?
自分とは何者なのか。誰だって考えることがある。
このストーリーだってそうでしょう。
この人は誰?自分は何者?
それを手助けできるかもしれない戸籍を不要とはね。
そりゃ在日三世の主人公には関係ないかもしれないけど。
自分だってXを調べるときに使っただろうにね。

なんか小説的にもオチがこんなもんか〜って感じだし。
思想を押し付けてくるこの作者嫌い。
冒頭は読み終わってからもう一度読んだ。
時系列的にこの冒頭の話はどのあたりに挟まるのかな〜と思って。

沖宗千津子さんの件はまさに戸籍が助けてくれてある程度わかった例と思う(本人的には嫌だったかもしれないけど・・・)。
記憶から消えていた場合は記録をあたるしかないと思うんですけど、作者的に、またはその代弁者である城戸さん的にはありえないって感じですかね?
マイナンバーがあるから戸籍はいらないって言ってましたもんね、作中で。
自分も含めて思うのですけど、マイナンバーがあっても戸籍がなけりゃ兄弟もいない両親も亡くなって親戚も近くにいない、そんな人間は死んだときにさ、マイナンバーがあっても何者なのかよくわからないよね。その人だよってことしか。それってこのストーリーの核の部分と何が違うのかな〜?って思うんだよね。
戸籍いらないですかね?私はあって欲しいですけどね。自分が何者であるかの一部が書いてあると思うから。

読後、面白かったな〜って思ったのよりイラッとしたところが結構ひっかかって。
時間が経つと思想の押し付けに対して怒りすら湧いてきた。人にはおすすめしない。
沖宗千津子さんの方がおすすめ。
現実はやっぱりあんまりいろんなことは判明しないんだよな・・・。
ネットで読めるから読んでみて欲しい。


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