カード歩き出す
仕事でデザイナーさんと打ち合わせがあり、その場に、なんとなく父のカードを持って行っていた。そういえばこんなのがあるんですよ・・・とおもむろにテーブルにカードを出した。
「長崎遠景」という名のそのカードは、稲佐山をバックに港を挟んで教会や建物が重層的に立ち上がる、父の代表作だ。濃紺で表現した夜空に、カッターで切込みを入れて星を作る。後ろから光をあてると、星も山も建物もみなほんのりと輝く。私もこのカードが一番好きだ。
「これ、知ってるよ」とデザイナーさんが言った。むかし、地元紙のプレゼント企画で
息子さんが当てて、家にあったという。「へー、これ、お父さんが作ってたの?きれいだね」そうほめられると、自分がほめられたようで嬉しくなった。
カードをこのままにしておくのはもったいない。
デザイナーさんの言葉を素直に受け止めて姉に相談した。
姉の副業用に送るのは保留にして、こちらで商品化を考えたいと私が言うと「カードが歩きはじめた」と姉が言った。