はじめての人の話
相も変わらず、仕事にも行かずネカフェにいる
今日くらいならごまかせるかな、なんて思いつつ
一日でも働かないと首を絞めるのは自分自身だから少しでも行った方がいいんだろうと悩んでいる
しかし相変わらずお腹の調子は悪い。精神は、少し良くなった、と思う。
初めて付き合った人の話をする、唐突に。
あの人は、正直変な人だった。
私が違法リフレで働いてる時に出会った人だった。
こんなとこに来るようなひとじゃないし
正直私は年齢も若くなくロリ顔でもないため人気はなかった。
よく私を選んだなあ
なんて思いながらホテルに行くために、エレベーターに乗った。
普通、手を繋いだり腕を組む。
彼は怯えたように隅っこにいた。
なんでそんなすみっこにいるの〜?こっちおいでよ〜
とはいえ客は客。そう思い他の客と変わらず接していた。
ホテルについてから、色々話そうとしたが、
向こうは緊張しているのかたどたどしい
こういうのはあまり来ないとのこと。
まあそりゃ若そうだしな。
年齢を聞いたらふたつかみっつ上。
私はサバを読んでいたのでそのままサバ年齢を言った。
ふと彼の持っていたカバンが目に入った。
ディスクユニオンのカバンだ。
サブカルファッションでたまに身につけている人がいたので知っていた。
わあ〜ディスクユニオンのカバン可愛いね〜!
そんなふうに言うと突然目を輝かせた。
すこしだけ、触れるだけのキスをして、リフレらしいえっちなことはせず、
こういうのは付き合ってるひととするもんや!
などと言って
やっぱ若もん客はかせげねえな
とおもいつつも、
なんか、可愛いやつだなーとおもっていた。
なあ、このあとさ、時間あったらでええんやけどどっかいかへん?
そう言われて、悪い気はしなかった。
どうせ暇だし、待機するくらいなら
そう思って私は仕事を早退して待ち合わせていたセブンに行き彼とご飯を食べに行った。
そこからはもう展開は早かった。
LINEを交換してから
何処かカフェに行こうよ!そういう約束をし
相手の知ってるオシャレなカフェに行き話をした
彼はバンドをやっているらしく、げ!バンドマンかよ!みたいな露骨な反応をしてしまったが、
そういうのではなく、下北系だし、本人はもっと黒人系とかR&Bとかビートルズとかなんかとにかくよく分からないけど本当のロックを愛していた。
井上陽水とかも好きで
彼の家は三宮にあってよく遊びに行っていたけどレコードが沢山あったけどよく聴かされては感想を求められた。
私は聴いてもよくわからず
無感情
と言っていた。(だって本当にそうだから)
でもたまにあ、これはいいな。
みたいなのはあった
唯一共通して知っていたのはチャットモンチーくらいで、あとは知らなかった。
でも今なら井上陽水くらいなら聴けるかな。
気がつけば何度も遊びに行き、有名な人のレコードに混ぜてこっそり自分たちの曲を聴かせてきた
この曲どう思う?
うーん変わってるけど、おもしろいね
ボーカルのこえがかっこいいね
そっかー
……実は俺らの曲やねんな……
えーーー!?すご!!!!
そんな会話もあったり
そしてわたしたちは付き合うことになっていた。
ところであの会った日に仕事はやめて欲しいと言われ、辞めさせられていたのだが
その日の一週間後に摘発されたので本当に良かったとおもった。あんたは神か。
彼のバンドの他メンバーも変わっていた、というかバンドマンらしい、いかにもな感じで、彼はそれが気に食わなかったようだ。
だけど、才能は格別にあるボーカル。
声は天性のものなんだそうおもった。
彼は本当なら自分で歌って自分のロックを証明したい。そういう人だった。だけど、可哀想なことに、歌のセンスが壊滅的だった。
何度も歌を聴かされて、感想を求められた。
だけど私はこっちの歌い方がいいと思う、という歌い方と彼の理想は違ったようで結局彼は万人受けするであろう歌い方を続けた。
それでもやっぱりバンドのボーカル君の方が、惹かれる歌を歌うのだった。
ボーカル君は、浮気に薬物に性格も不真面目そのもの、喧嘩っぽくて酒に飲まれる。本当に最悪な絵に書いたようなバンドマンだった。
一方彼は、一応本業をしつつ(伏せるが)、バンド活動をする。堅実さがあった。バンドは、ボーカル君ガイル本命と、自分がボーカルギターをやるサブのバンド。
私は一応芸術系の学校に行っていたので、そういう仕事に就きたい。と言いつつもなにも、なせていなかった。恋愛を始めてしまうと、上京してしまうと、キラキラした世界に飲み込まれてしまい、
気がつくと、絵から離れていってしまっていた。
わたしのゆめ、なんだっけ
彼は東京に来たばっかりの頃おそらく私を題材にしてくれた歌を作ってくれた。
可愛い曲だった。サブスクで聴けるので、気が向いた時に聴いたりする。
詳しくは書けないが私がフラフラしていて危なっかしいみたいな曲だ(こんなばかっぽくはない(笑))
嬉しかった。
未だに歌ってくれたりするのだろうか。
私を、思い出してくれるのかな。
もちろん未練なんて、もう何も無いけどね。
本当に変な人だった。お金の搾取は唯一して来ない人だった、だけど映画や音楽の感想をいちいち求めてきたり入りたくも無い混浴温泉にいれられたり
行きたくもないのにノルマのためにライブに連れてかれたりその後の飲み会や行きたくも無い音楽のバーに連れてかれて訳分からない話に参加させられて意見を言わされたり(そして帰り道不機嫌になり喧嘩する)洗濯物を干そうとしたら雨が降ってきてものすごく不機嫌になったり部屋が死ぬほど汚いから片付けて上げてもすぐ汚くなったり
体重が私より軽かったりガリガリで死ぬのか?と思ったり。同じ服ばっかり来てたり(それは最近の私もそうなので人のこと言えない)
いきなり某都心で背負い投げしてきたり
とにかく変な人だった
本当におかしかった
女の子にやきもちやけば怒るし
バンドマンにつきものだけど変なカメラマンの女の子が常に付きまとったり
対バンした女の子バンドと呑んだり
そういうのも嫌だった
けど浮気は絶対しないひとだった。それは、何故か信用できた。
でもある日盲信的に好きな音楽をする人がいる
と言って追っかける程TwitterでもRTしたり
最高!と言ったりするほど
好きなアーティストができた。弾き語りをする女性だった。一応バンドもやっていた。
そのバンドの男性との交流を持つようになり
その女性との関わりもまあ下北なんて狭い世界じゃ簡単にもてた
対バンしたから。弾き語りで。
ものすごく嫌だった。
ある日問われたっけ
源氏名のやりたい事はなんや?
何のために上京したんや?
絵は描かないん?
源氏名には芯がない。
バンドの子にも、
源氏名ちゃんのルーツってなんですか?
ルーツ
考えたこともなかった
好きだから
好きだから続けてた
見てもらえるのが嬉しかった
外に出たくなかったから
それだけのこと
深い理由なんてなかった
それじゃだめなの?
そして私は振られた。
今のまま一緒におっても
お互いのためにならんから。
当時は大泣きした
でも、その通りだ。
今の私にはわかる。
なんだか今聞いても響くし刺さる。
お互いのためになる付き合い方、出来てるのかな。
なんてね、
もう上京して何年も経った。
私は相変わらずあの日から変わらない
あの人はどうなんだろう
Twitterを探してみた、簡単に見つかった
相変わらず、かわらない、
少しだけ変わってたかな。
メインのバンドは少しだけ売れてて
自分のバンドは名前とメンバーが変わってて
だけど芯はかわらない。
ああやっぱり、この人はかっこいいな、貫いてるな。
わたしはね、ブレブレのままだよ、
ライブ、見に行ったら驚くかな。
なんか、少しだけ、強い気持ちを分けて欲しくなってしまった。
あなたはやっぱり変人で、すごいよ。
あなたがはじめての恋人でよかった。
今ようやくあの時のあなたの年齢になってあなたの言っていたこと、理解出来るようになった。気がする。
今なら音楽の感想、言えるかな。
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