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2018年9月の記事一覧

バベルの塔

カーン、カーン、カーンーー。

彼は硬いベットから重たい体を起こした。カーテンの隙間から光が漏れている。昨日の重労働はさすがに堪えた。身体中の筋肉が鉄のようだ。若い頃は、どれだけ働いても次の日にはそんなことを感じなかった。歳のせいか。物心ついた時からすでにここで働いており、これからもその事実が変わることはないと考えるとどうも気が滅入って仕方がない。
くたびれたタオルを手に取り決まったように顔を

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バベルの塔②

黙々と与えられた作業をこなす。

壁面を作るための手元の煉瓦が残り少なくなってきたため,資材置き場へ資材を取りに行く。資材は,相当な重量があるため必ず2人で運ばなければならない。

誰に声をかけようかとあたりを見回すと,今朝しゃべりかけてきたやつと目が合った。奴はこちらの状況を察したらしく,小走りで駆け寄ってきた。この現場で,アイコンタクトだけで成り立つ会話ができるのはこいつぐらいだ。

「資材取

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