私たちで世界を変える
運動の上達方法を調べる実験があります。
パソコンでマウスを動かすと画面のカーソルが動きますよね。
それと同じようにマウスの代わりに棒状のハンドルを使って、それを握った自分の手を見えないようにします。
画面しか見えないようにするのです。
まずハンドルをまっすぐ前に動かしてカーソルが来る所に目標をつくります。
目標をつくってから、プログラムを設定し直し、ハンドルを真っ直ぐ前に動かしてもカーソルが30度ずれるようにします。
そして実験開始です。
内容はただカーソルを目標に当てるようにハンドルを押し出すだけです。
何度も繰り返せば、30度のずれに合わせて手を動かすようになるはずです。
繰り返す運動には、
連続でリズムを取るように動かす「周期運動」と
一回ごとに休みを取って動かす「離散運動」があるのですが、
「周期運動」を30回ほどすれば30度のずれは10度近くまで少なくなります。
上達したということですね。
しかし、そのまま200回繰り返しても8度程度までしか少なくなりません。
そこで一旦実験をストップした後に、一回だけ動かしてもらいます。
つまり休みを取ってまた動かす「離散運動」を1回だけしてもらうのです。
するとどうなるでしょう。
なんと、出来なくなっていたのです。
これは連続で行う「周期運動」と休みながら行う「離散運動」では、使っている脳の部位が違うということになります。
ならば別の人に、初めから2秒休んで1回する「離散運動」をしてもらうとどうなるでしょうか。
すると「離散運動」を20回すれば5度位のずれになり、30回もすれば3度位のずれになりました。
「周期運動」は8度のずれまでしか上達しなかったのに、
「離散連動」では3度のずれまで上達したのです。
連続で練習するよりも一回一回考えながら練習した方がはるかに上達するのです。
なぜこうなるのでしょう。
実は「周期運動」の場合は「ずれている」という情報が絶え間なく送られてくるため、脳内で修正をする時間が足りないのです。
時間がないので上達しないのですね。
上達するためには修正する時間をつくらなければなりません。
そこで今度は、修正する時間をつくるために、情報を減らした実験があります。
同じように「周期運動」を連続200回するのですが、画面のカーソルが
2回に1回しか見えない場合、
3回に1回しか見えない場合、
4回に1回しか見えない場合、
5回に1回しか見えない場合
を作ってみたのです。
つまり眼から入ってくる情報を減らすのです。
すると、ずっと見える場合と2、3回に1回見える場合は、やはり情報が多過ぎて、ずれは8度位になりました。
しかし、4、5回に1回しか見えない場合、3度ぐらいのずれまで上達しました。
普通はずっと見えてるほうが上達するはずなのに、
逆に、時々しかカーソルが見えない方が上達したのです。
はっきり言って、こんなこと予想できません。
見えない方が上達するなんてありえないことです。
でもこれが人の脳の特性なのです。
情報を遮断し、修正する時間を作った方がはるかに上達するのですね。
この話は運動だけの話のように見えますが、実は運動というのは脳の働きなので、机上での勉強も全く同じなのです。
睡眠、休憩、考える時間
他にも様々な事が共通しています。
そして、こういった脳の習性の原理は他にもたくさんあります。
指導者がこれらを知っていれば、子供達の上達スピードは全く変わりますよね。
私の知人に県立高校の教師で運動部の顧問をしている方がいます。
公立なので転勤があるのですが、行く先々でその方が顧問になった部活はインターハイで優勝してしまいます。
その方が教えれば、教えられた高校生は日本一になるということです。
よく人一倍頑張ったから合格したとか、諦めずにやったから優勝したとか言いますが、それがすべてではありません。
本当は、合格した人や優勝した人よりもはるかに諦めずに、はるかに多く頑張った人はたくさんいるのです。
結局、親や指導者が世の中の原理原則を知っているかどうかで子供の未来は変わっているのです。
私たち大人が学ばなければ、子供達がかわいそうですよね。
今からが勝負です。
学んだことを共有し、世界を変えましょう。
負けるな俺たち。
それではまた、
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