#SideM短歌 315プロ49人詠んでみよう!
ただ上を目指して駆けた 気がつけば並んで走る顔が増えてた
(天ヶ瀬冬馬)
ワイパーの縁をぬぐえばこの星の塵こまやかに露を伴う
(伊集院北斗)
ひるひなか床とシューズの鳴る音が夜空まで跳ぶ唯一の道
(御手洗翔太)
一番星 いちばん先に夜を飾りうつむく人の顔を上げたい
(天道輝)
ホールへと満たされていく音の波 減衰のない人であれたら
(桜庭薫)
この日々も助走とおもう 街灯が雨の歩道を白く照らして
(柏木翼)
しゃぼん玉割れてうまれた溜息が流れていくね、僕をとどめて
(都築圭)
今はただ種を蒔こうか来春に淡い黄色の花野見るため
(神楽麗)
たこ焼き器を片付けながら昨晩の笑顔ふたつは胸に仕舞った
(鷹城恭二)
わんてんぽおくれてゆれる耳もとのピアスもつれていつか帰るよ!
(ピエール)
アクセルを回してひとり海へ行く いまは見せたいひとたちがいる
(渡辺みのり)
一人称 "I" で夜まで過ごす日のそれでも横に出しかけたパス
(蒼井悠介)
少し早い寝息聞こえる部屋にいてこんな普通が特別なんだ
(蒼井享介)
石垣の隅のスミレに触れてみた、見ている人はここにいるって
(握野英雄)
うれしくて一つ余分にジャンプして左を向けばふたつのOK
(木村龍)
悩む日は走ればいいと道を蹴る靴の溝にはここまでの土
(信玄誠司)
しょんぼりはこれでお終い すいっちとしての白扇ぱちんと閉じる
(猫柳キリオ)
染め抜きの幟の中の知った名が浮き出て見える 突風の吹く
(華村翔真)
炉開きの朝の庭にて笑むようにほころび初めし花を求める
(清澄九郎)
降ってきたフレーズ、ボイスメモに入れそのとき耳にひびく爆音
(秋山隼人)
鍵盤に弦とドラムと声を重ね僕が僕らになっていく日々
(冬美旬)
スノードームの外の世界は知るほどに複雑だけど怖くないんだ
(榊夏来)
誘導用ライトの赤を振る夜更け掲げた手にはステージの熱
(若里春名)
夕方の部室の窓を細く開け北風が鳴る 合わせてハモる
(伊瀬谷四季)
海水をはね上げ駆けるオレたちの後ろに虹が出たらいいよな
(紅井朱雀)
凍て星の窓を閉じれば相棒の声ひときわに響くスタジオ
(黒野玄武)
噛みあわぬ一日もありそんな日も茶葉は静かにひらきゆくこと
(神谷幸広)
そんなこといわんといてと言いかけて飲み込む喉に西風の吹く
(東雲荘一郎)
夕刻の空の涙に身は冷えてほのぼの明かし我の根城は
(アスラン=BBⅡ世)
おのおのに一番活きる場所がある 軽いスポンジ、重いタルト台
(卯月巻緒)
制服を脱皮している午後四時のあたし彩る赤い夕焼け
(水嶋咲)
去年より一段高い舞台から呼ばれてそっと手を挙げてみた
(岡村直央)
こーいうのいつか忘れてしまうのかなたとえばフリの揃ううれしさ
(橘志狼)
かわいいを持っておとなになれるなら、ううんなれるよ見せてあげるね
(姫野かのん)
平行な直線たちが無限遠点で交わる様を見せよう
(硲道夫)
先を行く背中ふたつに飛びついた We did it! って明日も言わせて
(舞田類)
一着の馬の臀部に光る汗 俺の差し脚見てみたくない?
(山下次郎)
遠ざかる背中のかたち目の奥にとどめて歌う、こぼさず歌う
(大河タケル)
厨房を拭き上げる手に汗の浮く日々を抱えたまま道を行け
(円城寺道流)
強いほうがいいに決まってんだろうが 膝にのるネコを起こさずそのままねむる
(牙崎漣)
これからの靴はかかとの低い靴 道の温度が足裏にある
(秋月涼)
いつの間に知ったんじゃろう感情は伝播していく、睨みも笑みも
(兜大吾)
残り火を確かに消して、かまわないおれは明日も熱を熾せる
(九十九和希)
石段のひとつひとつにささやかな水溜まりあり空を映して
(葛之葉雨彦)
輪郭を何度もひいておぼろげに浮かぶカタチは僕らしさなの?
(北村想楽)
人もまた海の子供で汗拭うタオルに潮の残り香のある
(古論クリス)
右耳のイヤホンずれてしばらくは南風入りmixを聴く
(天峰秀)
もり上げた油絵具は永遠に乾かぬような光抱えて
(花園百々人)
後悔も力にすると決めてから響きつづける音叉がひとつ
(眉見鋭心)
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こちらは、2022年12月10日、11日に開催された THE IDOLM@STER SideM Webオンリー「ゆるいパバステ2」でネットプリントとして配布した、315プロダクションのアイドル49人全員を詠んだ作品集の再録です。
※「THE IDOLM@STER SideM」とは、プレイヤーがアイドル事務所315(最高)プロダクションのプロデューサーとなり、男性アイドル49名をプロデュースするというゲーム、及び派生コンテンツの名称です。
二次元アイドル育成コンテンツで二次創作短歌を詠む場合、作中主体(歌を詠んでいるのは誰なのか)の設定がいろいろと可能になります。今すぐ思いつくものを挙げるだけでも
・コンテンツ時空内のアイドルのファン
・プロデューサー
・アイドル自身
・コンテンツ全体を俯瞰する「神目線」
・コンテンツのリアルイベント(ライブ等)の生身の観客
と多岐にわたります。
今回の49首はすべて、『49人のアイドル自身が詠んだ』という設定で作っています。49人の中には「この人は頼んでも詠んでくれないだろうな」「この人は日本語勉強中だから短歌詠むのは難しいだろうな」というアイドルもいるのですが、そこは『何とかがんばって作ってもらった』ということにしています。
また、読み手として普段短歌を読む機会があまりない読者を想定したため、意味の取りやすさを優先した結果、普段の自作に比べると一字開けや読点が多めになりました。それが結果的によかったのかどうかは振り返る必要があるかと思います。
久しぶりに店の焼鳥が食べたいです!!サポートしてください!