短歌連作 夏雲


せり上がる雲が隠した夏の陽は戻らないまま路はみずたま

どくだみの叢の香りが苦しくてきっと夜には本降りになる

からっぽの部屋で鋏の音ばかり響かせている切るものがない

バイパスのカーブ、防音壁の白、それよりやわい人の骨格

小菊では少し地味だねいつまでも二十歳の友に白いガーベラ

五台目のiPhoneからも消さないで時おり開くnatsu_gumo@

雨傘を閉じて六秒数えたらそれは祈りに似たものになる


※叢 むら

2018年9月、NHKカルチャー横浜教室で行われた佐藤弓生さんの連作講座に参加した際の提出作品です。短歌連作サークル誌『あみもの第九号』にも掲載されています。

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