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風のような人

生きていると誰にでも、大きな影響を受けた人がいると思うが、私にもそんな人がいる。
その人がいなかったら、今の私は違う道を歩んでいただろうと思うし、そして短歌にも出会っていなかっただろうと思う。

彼女は、その小さな体のどこにそんなエネルギーがあるのだろうかと思うほどパワフルな女性だ。そして想像力も創造力も半端ない。そのパワーでもって1人で古民家を改装し、カフェを開業していた。カフェって1人で改装して開業できるものなんだと驚いた。

出会ったのは16年ほど前だが、回数で言うと大して会ったことはなく、年に1度会うか会わないかで、最後に会ってからもう4年が経っている。大きな影響を受けた人なのに不思議なのだが、特にメールのやりとりもしていない。今は、彼女のSNSで安否確認をしている程度だ。
写真で見る彼女は元気そうだし、風のように捉えどころのない人だから、この距離感はこれでいいと思っている。

世の中が自粛中のゴールデンウィーク初日の朝、彼女のSNSに「この場所を離れる」と書いてあった。
早朝、布団の中で薄ぼんやりとスマホを見ていた私は、驚いて飛び起きたほどだったが、それでもなぜかメールはしなかった。

そうか動き出したんだ。そう思った。

ゴールデンウィーク開け、南の島へ渡った彼女の写真を眺めていた頃、沖縄梅雨入りのニュースを聞いた。
まだメールはしていない。
東海地方も、きのう梅雨入りをした。

絵手紙を書こうかな、短歌を添えて。

隣り合う人のスマホの画面から南の島の梅雨入りを知る 大西ひとみ

題詠『電話・スマホ』より


#短歌 #tanka