#007_【組織的公正】Organizational justice and health; review of evidence(#4-5)
本日の論文への惹かれポイント
私はもともと専門学校で精神保健福祉を勉強し、大学で心理学を学び、ベースとしては健康や福祉には興味があるのです。
(実務には役立ってないけど、精神保健福祉士と認定心理士を持ってます。)
Organization Justiceを中心に読んでいく中で、アブストを読むと組織的公正と健康が関係する、ということで。
昨今(でもないか?)健康経営も注目されている中で、どう関係するのか気になるところですね。
この論文の目的は?
組織的公正とは、職場における社会的相互作用の質を定義する構成概念。
組織的公正は従業員の健康と幸福に関連しており、知覚された正義が低いと、ストレス反応や、炎症、睡眠障害、心血管系調節障害、認知障害などの関連する生理的・行動的反応や、高い欠勤率とも関連することが先行研究からも示されているようです。
本論文は、組織的公正とそれが労働者の健康に及ぼす影響に関する文献のレビューとフィンランドで行った組織的公正の欠勤率への影響を検証しています。
POINT1. 組織正義の主な理論モデル
先行研究から、3つのカテゴリーに分類されています。
・結果→分配的公正
・プロセス→手続き的公正
※手続き的正義とは・・・意思決定手続きが一貫性をもって適用され、偏りがなく、正確で、修正可能で、倫理的で、すべての関心事を代表する程度
・対人相互作用→相互作用的公正・関係的公正
※関係的正義とは・・・従業員が対人関係において経験する待遇の質であり、具体的には、上司から受ける礼儀正しく思いやりのある待遇のこと
組織的公正の研究領域における初期段階の研究は、分配的公正と公平性の認識が中心でしたが、最近の研究では手続き的公正と関係的公正が重視されてきています。
※こちら↓でも歴史について振り返っています
POINT2. 組織的公正の健康への影響
先行研究から、組織的公正は感情的反応と関連しており、知覚された公正の低さは従業員の健康と幸福に重要な役割を果たすことが示されています。
この従業員の健康とは、身体的な健康だけではなく、仕事への不満、報復、職場攻撃性、仕事へのコミットメントの低下、引きこもりといったパフォーマンスと関連するような精神的な健康と関連しているとされています。
さらに、疫学的研究は、組織的公正の低さが心血管疾患や心血管疾患などの深刻な健康問題にも寄与している可能性を示唆されています(Kivimakiら, 2005、 Elovainioら, 2006).
知覚された組織的不公正が健康に影響を及ぼす可能性があるもっともらしいメカニズムは、ストレスの長期化
Elovainioらの研究では、公正感が低い人の心疾患リスクが、公正感が高い人に比べて3倍強高いことが示されていました。
心疾患リスクについてはあまり注目されていないのではないか?という指摘がここではなされています。
また、睡眠障害も、長引くストレスのもう一つの指標であり、免疫系と代謝に影響を及ぼすことがわかっています。
職場で不当な扱いを受けていると感じることが、男女における睡眠の質の低下リスクと関連することがわかっています(Elovainioら, 2003)。
また、知覚された組織的公正のレベルが長期的に低いと、記憶、帰納的推論、語彙などの認知機能が中年期ですでに損なわれていることが明らかにされています。
POINT3. 不確実性、ジョブ・コントロール、組織的公正
組織的公正の経験が人間の反応に及ぼす強い影響に関する研究はVan den Bos K, Lind EA, Wilke HAMによって提示された不確実性モデルがあります。
これは、公平性ヒューリスティック理論に基づいた理論です。
リーダーへの信頼の情報を持っているか否かによってヒューリスティックが使われる、という話はこちら↓でも書いています。
<労働時間管理との関係>
先行研究の分析では、労働時間のフレキシブルさ(始業終業の自己管理)欠勤率の低下と関連している(Baltesら,1999)。最近の横断研究では、女性において、自覚的な労働時間管理の低さと不健康との関連が示されたが、男性では示されなかった(Ala-Mursula Lら, 2002)。
<不確実な環境>
現代の職場生活における不確実性の重要な原因には、絶え間ない急速な変化があげられます。
著者らは、職場環境における否定的な変化の認知は、従業員が予測可能な方法で物事に影響を与えることができない状態を反映しており、このように否定的な変化は職場における不確実性の1つの原因となっていることを示唆しています。
<検証>
不確実性(労働時間のコントロールの欠如、職場における否定的な変化)と組織的公正(意思決定手続きや対人処遇の公正)の組み合わせが、病気欠勤に影響するかを検証!
男性7,083人、女性24,317人のフィンランド公務員を対象とした階層的回帰モデルの結果、年齢、所得、健康行動でコントロールした後、手続き的公正と相互作用的公正の低さが、長期欠勤と関連していることが示されました。
更に、公正性の高い職場で働くことが、仕事外の環境的ストレス要因に伴う健康への影響から身を守るかどうかを追加で研究しています。
主要なライフイベントの前後(ライフイベントの36ヶ月前から30ヶ月後までの期間)における組織的公正と病気関連の欠勤との関係の調査ですが、
結果・・・
職場の管理慣行が相対的に不公平であると感じている人ほど、ライフイベント後の病気欠勤の増加が大きく、ライフイベントから30ヵ月後でも高い水準にとどまっていた。同様のパターンが、組織公正の分配的、手続き的、相互作用的次元のそれぞれについても有意でした。
不当な扱いは他の環境的ストレス要因の健康への影響を強める可能性があり、公正性の高い職場環境で働くことが従業員を健康問題から守る可能性があることを示唆する結果もある、と結ばれています。
感想
怖いよー。
怖くないですか?
公正さの認識がないだけで心疾患リスクが高いとか、睡眠不足になるとか、認知機能が低下するとか怖いんだけど!怖すぎるんだけど!
ただし、「公正さ」をどう捉えるかは人それぞれである面もあると思う。
例えば、会社や上司に不信感を抱いていると、公正さがあったとしても「あいつらのすることは・・・」と思われてしまうこともあると思う。
「冷静に」「客観的に」見れば「公正」であるにもかかわらず、そう捉えられないことも現実には起こる。
「公正」であることが「公正」である、と捉えることができる環境。そういう組織を作れたらいいよね。
難しい。だから、面白い。