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#003_【公正と不確実性マネジメント】Uncertainty Management: The Influence of Uncertainty Salience on Reactions to Perceived Procedural Fairness(#9-2)

Van den Bos, K. (2001). Uncertainty management: the influence of uncertainty salience on reactions to perceived procedural fairness. Journal of personality and social psychology, 80(6), 931.


本日の論文への惹かれポイント

「不確実な状況下にこそ公正さが大事」というのはそれだけ聞けば、「そうかもな~」って思いますよね。
でも、それだけだと「不確実な状況下にこそ公正さに目をつぶった意思決定やスピード感が大事」と言われても「そうかもなぁ~」って思いますよね。

この点、人間の「認知」に焦点を当てて、なぜ不確実な状況で公正さが大事になってくるかわかりそうだな、というのが今回の惹かれポイント。

この論文の目的は?

「なぜ公正さが人々にとって重要なのか」という問いに対する答えを提供しようとチャレンジしています。
Van den BosとMiedema(2000)の推論を拡張し、人間の不確実性に明確に焦点を当てています。不確実性を認識しているときにこそ、公正さが人々にとって特に重要になるのではないか?という点に着目して実験を行った論文になります。

POINT1. Fairness Heuristic Theory(公正ヒューリスティック理論)

ヒューリスティックとは、意思決定の場面において、緻密な論理で一つ一つ確認しながら判断するのではなく、経験則や先入観に基づく直感で素早く判断することをいう。

https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-19725.html

このヒューリスティックを公正性に関連付けることがあるとしています。つまり、リーダーを信頼できるor信頼できない場合に公正の過程を重視しなくなるということらしいです。

例えば、上司Aは普段から公正な判断をする人だ、と認識していると、どのような結果を出しても「公正に判断された」と思いやすい、ということですね。それが同じ結果を出した上司Bに対して、不信感を持っていたとした
ら、同じ結果なのに「公正ではない」と思ってしまう、ってこと。

なんかあるあるですよね、現実的に。

この公正ヒューリスティック理論を元に、不確実を意識したときに公正な手続きがどう影響するか、を解き明かしていきます。

POINT2. 3つの実験

共通
治療に対する感情反応を見る実験。
3つの実験すべてにおいて、手続き的公正の操作の前に、不確実性顕著条件が操作されています。

<実験1>
不確実性顕著条件
参加者に不確実であるという考えや感情を求める2つの質問をすることで誘導。(もう一方には不確実を想起させない質問をした)
また、実験中「意見を言う機会を与えられた」群と「意見を言う機会が与えられなかった」群に分けられています。

否定的感情操作
失望に関連する項目として問うことで操作した。
参加者は、自分の扱われ方についてどのように失望し、悲しく感じたかを尋ねられた。

結果
不確実性顕著性誘発条件の参加者は不確実であることについて考えていたのに対し、不確実性顕著性非誘発条件の参加者は、不確実であることについて考えていなかったという結果が出ている。これは、不確実性の顕著性がうまく操作されたことを示していると言えます。

また、意見を言う機会を与えられた参加者は、そのような機会を与えられなかった参加者よりも、手続きをより公正と正当と判断したという結果になっています。

つまり・・・実験1の結果は、人々に不確実性について考えてもらうことで、自分の扱われ方に対する否定的影響反応に対する公正過程効果が強くなることが明らかにされたと言えると思います。

<実験2>
コントロール不能は人間の不確実性の重要な側面であるため(Martin, 1999)、コントロール不能な状況にいることを考えるよう参加者に求めた実験になります。

不確実性顕著条件
(a) 「コントロールできない状況にいる」という考えがあなたの中に呼び起こす感情を簡単に説明してください
(b) コントロールできない状況にいるとき、物理的にあなたに何が起こると思うか、できるだけ具体的に書き出してください
という質問に対する答えを紙に書き出すことで顕著条件が誘発された。

否定的感情操作
怒りに関連する項目として問うことで操作した。
参加者は、自分の扱われ方についてどのように怒り、敵対し、激怒し、激怒したかを尋ねられた。

結果

人々の否定的影響反応は、コントロールできない状況を考えていないときよりも、考えているときの方が、正義の変動により強く影響されることが分かった。

実験1と実験2は、不確実性に関連する問題について意識してもらうことで、手続き的公正さの認知が否定的感情の評価に強く影響することを示している。
また、否定的感情操作法を変えても同様の結果が得られる、ということは重要。

ここで疑問が。1回の実験で両方のタイプの陰性影響測定に見られるかどうか??実験3は、この疑問に答えるために行われています。

結果は・・・参加者に不確実性の認知が、治療に対する感情反応に対する知覚された公正さのより強い効果につながることが明らかになりました。

POINT3. 知覚の重要性

今回3つの実験では意図的に不確実性を意識させることで、公正さに対する反応をみていきました。
3つの実験結果を総合すると、公正さは、特に不確実な状況下で、人々にとって重要であることが明らかになったとしています。

感想

今回の調査結果は、人々が不確実性に関連する問題について考えているとき、特に公正さが重要であることが示されています。

実際は不確実性をわざわざ想起させるようなことはせず、「イマココ」が不確実かどうか、という認識を人がどう持っているか、の方が現実的な悩みだとは思います。

ただ、不確実な状況は人を不安にさせるので、より公正さ、わかりやすさ、正しさ、みたいなものを人は求めるんだろうな、と。

でも、世の中公正なことばっかじゃないと思うので、不安に打ち勝つってことが大事なのかもなぁ~~~とか、論文から外れて思ってしまう夜。。。


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hitomi kanaya
サポートしていただけると嬉しいです! ぴよぴよ社会人博士課程の学生ですが、Organization Justiceについて研究を進めています。また、理想だけでなく実務で壁となるGoing Concern(売上、利益)といった面も考えつつ・・・模索しています。