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第1走者 N501i

わたしが初めて持った携帯電話、N501i。
少しピンクがかったシルバーの、折りたたみ型だった。

本体とディスプレイ

今でこそフィーチャーフォン(ガラケー)のことを「折りたたみケータイ」なんていうけれど、ストレート型の携帯電話が主流だった時代に、その折りたたみボディは異彩を放っていた。  *1

それまで携帯電話のディスプレイは、電話帳登録の中身と電波が見られればいいという程度の役割だったため、指を3本横向きに当てれば隠れる程度の大きさだった。
しかしiモードが始まって、携帯電話には通話(とショートメール)以外の仕事が増えた。
Eメールやインターネットを閲覧することができるようになったら、一度に表示できる行数が数行では困る。
そうすると必然的にディスプレイは大きくなる。

P501iは本体前面の上半分近くがディスプレイのようなデザインになった。
その分ボタンは下半分にぎゅっと押し込まれるような配置になる。
見慣れないうちはディスプレイとボタン部分のバランスにぎょっとしたものだが、今思い返せばあれはあれでよくできたデザインだったのかもしれない。
F501iのディスプレイは気持ち大きくなった程度。
それよりも平たいデザインとボタンのぷちぷち具合にびっくり。
まるでリモコンみたいだった。
D501iはフラップでボタンを隠すという、折りたたみとはまた違った方法で新しさを表現したデザインだった。

N501iは思い切って折りたたみ型を選択した(折りたたみ自体は初めての形ではないが)。
折りたたみにすることで、ディスプレイの大きさとボタンの押しやすさを兼ね備えられる表面積を確保していた。
この後人々が携帯電話でメールを打ちまくるようになることを考えれば、ボタンが押しやすいことは商品として大きなアドバンテージだっただろう。
デメリットは、どうしても本体のサイズが大きくなることと、折りたたんだままでは時計が確認できないことか。  *2

待ち受け画面は無地またはプリインストールのクジラの絵のみ。
せっかくの大画面がもったいない気もするけれど、当時のディスプレイはモノクロ表示。
ドットも荒い。
待ち受けに推しの画像を設定しても、「なんじゃこりゃ」となってしまうのだ。  *3
もちろんカメラだって付いていない。
グリーンの光の中で日付・時刻が表示されているだけでは寂しかったので、とりあえずクジラに設定していた。
まぁなんだかかわいいクジラだったし。

文字入力機能

それまでもショートメール的なものは携帯電話にもPHSにもあったけど、本格的にメールのやり取りが多くなったのは、やっぱりiモード登場以降のことなんじゃないだろうか。
文字入力といえば電話帳登録をするときぐらいだった頃は、人名と電話番号が打てればいいわけで、予測変換など無用の長物だった。
しかし文章を作成するとなると話は変わってくる。

ポケベルを使う高校生最後の世代だと自負しているわたしは、比較的すんなり文字でのやり取りに馴染むことができた。
希望の文字が出るまでボタンを連打するトグル入力は好きではなかったが、いじくりまわしているうちにポケベル入力設定に変えられることが分かり、快適に文字を打てるようになった。
長音の「ー」を「69」でできないなど、ちょっとした不満はあったけどね。
しかし漢字変換は不便だった。
1980年代末のワープロより使いにくかったんじゃなかろうか。
当時東福寺付近に住んでいたわたしは、この「東福寺」という漢字をよく入力していた。
しかし、「ひがし」「ふく」「てら」と入力しないと、「東福寺」という並びが完成しないのだ。
そのまま「とうふくじ」を変換するとどうなるかって?
「豆腐九時」と出てくるのよ。
辞書登録機能なんてないから、地道に「ひがし」「ふく」「てら」と入力していたのだ。
複数文節を一気に変換するなんて、「無茶しやがって」と言いたくなるレベルの行為だった。

着信音

この頃の「着メロ」といえば、自分で譜面を調べて、ぽちぽち入力していくものだった。
そろそろ3和音のものも出てきていたが、そこは型落ち機種。
N501iの着メロは単音だった。
世の中には着メロBOOK的な、曲ごとにどのように入力するのかを書いた本が売られていたけれど、そこに掲載されていたのはヒット曲ばかり。  *4
一部の人たちに大人気な曲が好きなわたしは、耳コピで入れていくしかない。
キーボードで音を割り出し、4拍子の指揮を振りながら音符の長さを測り、入力可能な長さに収めるための調整をしてようやく好きな曲を流すことができたのだ。
このときほど、ピアノを習わせてくれた両親に感謝したことはないかもしれない。

今思えば不便なこともいろいろあったけど、当時としては画期的な機能がいっぱい詰まった、夢の箱だったのだ。
この機種と出会ったことで、わたしのこだわり携帯電話遍歴が始まったのだった。

*1 その昔、SMAPがCMしてた二つ折りスマートフォンなんてものもあった
  っけ。開いた筐体下側にボタンが付いているやつね。
  現在出ているGALAXYの折りたたみとは別物。

*2 折りたたみ機種にサブディスプレイが付くのは、まだ先のお話。
  不在着信は側面のボタンを押したときのランプの光り方で分かる。

*3 当時無理やりJanne Da Arcの公式サイトを見てみたら、写真表示部分で
  お茶を吹きそうになった記憶。
  最大サイズオーバーで、最後まで受信できなかった。

*4 そういえば月刊歌謡曲にも着メロ欄があったっけ。
  楽譜の下のスペースに載ってたんだったような。

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