自選20首。2018.10
夕暮れのセックス壊れたクーラーと汲み置きの水そういう夏だ
人間がエモいと切り取る夏の空蝉よ情動のままに死ね
好きだって言ってた海を歩いてる足のつかない場所までずっと
わたくしのものではない蛍、蛍、 一面の朝焼けに漂う
夜にだけ底がなくなる水たまり蛍の籠を抱え飛び込む
星月夜わたくしの紙魚が滲んでわたくしを喰いわたくしになる
また同じ本を読むように君に会うのにまた違うあらすじになる
めくるめくる息を止めてめくるだけわたしのことは知らなくていい
さみしいがぽたぽた漏れてさみしさで耳をふさいだあしたから秋
(わたし いま さかなに なったよ このへやで あなたと さんそ とりあったから)
柘榴しか食べない魚は苦いので母にかくれて静かに啜る
ネクタリンずぷりずぷりと膿んでゆき爪を切るのも忘れてしまう
ミルクという金魚の寝顔にひかり差し翌朝ミルクは流れて死んだ
(できていませんように)仏壇に手を合わせるとざわめいてくるわれの血液
おかあさん、しあわせは無痛なんでしょう?よる寝るまえのおとなのくすり
ぷちぷちを端から潰していくようで全てを好きになるのが怖い
ほぼほぼ水のようなキスYouTubeが駄目ならせめて煙草吸ってよ
ブレーキは天井、足は届かない、待ってよ痴態、USEN消して、
多い日の経血のような口紅をぬって辞職のことを切り出す
花がふる二度と目覚めぬ人にふる老いはきれいにとてもしずかに
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