
第2セメスターが始まりました:オンライン教育のゆくえ
イギリスからオーストラリアに戻ってまいりました。途中、半日だけ東京に寄ったのですが、すごい暑さ(と湿気)でした・・・
さて、オーストラリアに戻って、ゆっくりする時間もなく、セメスター2が始まりました。今学期も学生たちと多くの学びを共有したいと思っております。オーストラリアは通常セメスター1(2月から始まる)がいわゆる新学年のスタートなのですが、大学・学部・学科によってはセメスター2からの入学が可能です。当大学の、私が担当科目をもつBachelor of Built Environmentでもセメスター2からの入学を受け付けています。セメスター1と比べると、入学数はずいぶん少ないですが、これもフレキシブルに学習ができるための配慮です。
コロナ禍がだいぶ落ち着き(完全になくなってはいませんが)、当大学では、基本的には教室で対面で講義やチュートリアルをすることが主流になってきました。ただ、たまに学生から「オンラインのクラスはないですか?」という問い合わせがあります。この問いの背景は様々ですが、当大学の場合は、フルタイム(あるいはパートタイム)の仕事をしているため、キャンパスまで来る時間的余裕がない、という場合が多いようです。コロナにかかってしまって隔離をしなければいけないから、というケースはもうほとんど聞かなくなりました。私の担当科目は、Professional Accreditation (以下の記事を参照)があるコースのものが多いので、オンラインでの授業の提供には制限がある場合が多いです。
したがって、私の担当科目(研究課程を除く)では講義はオンラインで行なっておりますが、チュートリアル(演習)に関しては、オンラインでは行なっておりません。特に、内容が実践的なため、オンラインではなかなか教室での授業と同レベルの学習体験を持ってもらうことが難しいという理由からです。これには学生も納得してくれているようですが、たまたま、Bill Gatesさんのブログでこんな記事を目にしました。
アメリカ、ワシントン州で2024年のベストティーチャーに選ばれた方のインタビューが興味深かったです。コロナ禍で、世界的にあらゆる学校の授業がオンラインになった時、いくつかのイノベーションが教育界で生まれたのも事実です。各教員ができるだけ、授業の質を保とう、あるいは高めようと、知恵を絞って工夫しました。このインタビューの先生はドラマ(演劇)がご専門。演劇をオンラインで教えるなんて、どんなに大変だろうと思います。ところが、この先生は、一部の学生にとってはオンラインの方がむしろ周りの学生を気にせず、時には少人数で、あるいは先生と1対1で話せるbreakoutルームでのびのびと自分の考えていることを試せる、そしてよりクリエイティブな事ができるようになるとおっしゃっています。確かに、これはその通りだなと思います。学生もシャイな子もいれば、人前で話すのが得意な子もいます。教室で他の学生が見ている前で発表するのは緊張するものです。そしてその緊張ゆえに本来の力が出せないのはもったいない事です。これが将来へのトレーニングだという見方もありますが、あまりにも大きなプレッシャーを与えすぎるのは逆効果でしょう。
私たちがコロナ禍のオンライン授業で学んだのは、対面には対面の良さがあり、オンラインにはオンラインの良さがあること。そして今、ほとんどの教育機関がフレキシブルに授業の方法を設定できますので、その科目、学生のキャラクターにあった方法を考えることが重要なのだと思います。大事な事は、学生に最適な学びの場を提供することに変わりはありません。