海外で学ぶ、働く:オーストラリア高等教育の現場から

キャンベラ大学(オーストラリア)准教授。専門は都市計画、交通計画、都市における災害リス…

海外で学ぶ、働く:オーストラリア高等教育の現場から

キャンベラ大学(オーストラリア)准教授。専門は都市計画、交通計画、都市における災害リスクマネジメント。2008年よりオーストラリア在住。noteでは、海外で勉強する、働くこと、キャリアアップ、オーストラリアの政治や経済、多文化共生社会について綴っていきます。

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まずは、自己紹介。

私はオーストラリアで大学の教員をしています。首都にあるキャンベラ大学の准教授(専門は都市・交通計画、都市災害マネジメント)。学位は博士(工学)。 大学の教員としての経歴は、2005年から。豊橋技術科学大学建設工学系(当時)教務職員→助手を2008年6月まで。その後、2008年7月より国の研究所であるCommonwealth Scientific Industrial Research Organisation(通称CSIRO), Research Scientist (Tr

    • 新学長任命のニュース

      先週の木曜日、学内を今年最大のニュースが駆け巡りました。 「新学長が決まりました」 当大学では、今年の初めに前学長が辞任してから、研究担当副学長が新学長が就任するまでの一時的な学長として学長不在の期間の学長業務を担い、国内外から新しい学長の募集(といってもヘッドハンティング)を行っていました。数ヶ月に及ぶ大学トップの選出に関して、「もうすぐ発表できる段階にある」ということは、今セメスターが始まる頃に周知されていました。 今回の新学長の任命に関しては、その選出及び発表の仕

      • 災害時の避難シミュレーション

        私は当大学ではCentre for Creative and Cultural Researchというリサーチセンターに属しております。このリサーチセンターには、文学、アート、デザインなど様々な分野の研究者が属しているのですが、私もBuilt Environmentの研究者として関わっています。学期中は、毎週セミナーがあり、研究者が最新の研究を発表して議論や交流を深めています。 今年の5月のセミナーで、私がここ数年取り組んでいる災害時の避難シミュレーションに関する研究を発表

        • オーストラリア政府、2025年から留学生の数を制限

          新聞記事の見出しみたいなタイトルになってしまいました。しかしこれ以外の表現の仕方が思いつきませんでした、、、。 今年5月にオーストラリア政府が「来年から大学が受け入れられる留学生の数の制限を設ける」と発表してから各大学はドキドキしながら詳細の発表を待っていました。 そして、8月27日、ようやく政府からの発表がありました。 https://ministers.education.gov.au/clare/improving-sustainability-internatio

          オーストラリアの政策金利と若者の心理

          第2セメスターも3週目になりました。今週は最初の課題の提出があるので、学生たちの間に緊張感が漂っています、笑。 8月に入り、ニューヨークおよび日本の金融相場が荒れていましたね。オーストラリアでも、オリンピックのニュースには紛れていましたが、注視していた方は多いように思います。この金融相場の乱高下について、学部2年の学生たちと議論をしました。特にオーストラリアの立ち位置について。 その議論の際に、この論考を用いました。 この記事は8月6日に出されたものなので、その後の株価の

          第2セメスターが始まりました:オンライン教育のゆくえ

          イギリスからオーストラリアに戻ってまいりました。途中、半日だけ東京に寄ったのですが、すごい暑さ(と湿気)でした・・・ さて、オーストラリアに戻って、ゆっくりする時間もなく、セメスター2が始まりました。今学期も学生たちと多くの学びを共有したいと思っております。オーストラリアは通常セメスター1(2月から始まる)がいわゆる新学年のスタートなのですが、大学・学部・学科によってはセメスター2からの入学が可能です。当大学の、私が担当科目をもつBachelor of Built Envi

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          イギリスでの研究生活2024:その3

          イギリスでの研究生活のレポートもこれが最終回となります。 イギリス滞在後半、お世話になっているUniversity College Londonの研究所で今取り組んでいるプロジェクトについてのセミナーを行う機会がありました。研究所では、皆が色々なプロジェクトに取り組んでいるため、誰が何をしているのかを全員が把握しているわけではありません。セミナーは、研究をシェアして、フィードバックをもらえる良い機会です。 チームでプレゼンを準備して(私がオランダから戻ってくるのが1日遅れた

          番外編:オランダに行ってきました(帰りが大変だった後半編)

          オランダで楽しい時間を過ごした事は、前回の記事で書きました。週末楽しかったので、またイギリスに帰って研究を頑張るぞ!と思いながら帰りのユーロスターを目指して、スキポールへ! アムステルダムでの渋滞 と、向かっていたのですが・・・なんと、まさかの幹線道路(A9というスキポールへの最短経路)が通行止め。それも何の予告もありませんでした(いまだにどうして通行止めになっていたのかは不明です)。もちろんスキポールへの代替ルートは大渋滞です。普段なら、15分で着くため、それでも念の為

          番外編:オランダに行ってきました(帰りが大変だった後半編)

          番外編:オランダに行ってきました(楽しい前半編)

          イギリス生活も3週間目に入った週末、オランダに行ってきました。オランダと言っても、アムステルダム郊外の街へ2泊で(当初の予定)。私の友人が4月から住んでいるので遊びに行ってきました。 私は、これまで仕事で何度もオランダ、特にアムステルダムには来ています。本当に美しい街で、特に夏は気持ちが良いところです(晴れていれば)。と言っても前回来てから約10年経っていますので、変化を見るのもとても楽しみにしていました (デザインに凝った新しい建物がたくさんできていました)。 私はヨーロ

          番外編:オランダに行ってきました(楽しい前半編)

          イギリスでの研究生活2024:その2

          イギリスでの生活も、3週目に入りました。 私のチームでまだイギリス入りできていなかった方も到着して、全員が揃いました。これまで順調に研究を進められており、ほっとしています。 先週は前半はUniversity College Londonの研究所で作業に集中していたのですが、修士課程の論文プロポーザル発表に参加させて頂く機会がありました。さすがにハイレベルの発表で、私自身がとても勉強になりました。それぞれの発表の後に、教員からコメントや質問があるのですが、その分野の超専門家の

          イギリスでの研究生活2024:その1

          私は今年の7月は、ほとんどイギリスに滞在しており、もともと客員研究員の籍を頂いていたUniversity College Londonで研究に従事しております。普段、キャンベラにおりますと、セメスター中はもちろん講義もありますし、カリキュラムの作成や見直し、その他事務作業、その他にもやることが色々とあります(大学教員の仕事は教育と研究だけではないのです・・・)ので、「まとまって」研究に集中する時間を作るのは至難の業です。この「まとまって」というのが肝心でして、たとえば、文献を

          研究の問い(research question)を立てる

          Chat GPTが昨年から話題になり、AIの活用がますます活発化する中、1950年のアラン・チューリングの論文が再度注目を集めています。アラン・チューリングとは「コンピューターの父」と言われる、イギリスの数学・暗号解読科学者です。第二次世界対戦時に、ドイツの暗号エニグマを解読する機械を開発したことで有名で、映画にもなりました。 このチューリングの論文、タイトルは’Computing Machinery and Intelligence’ (オリジナルの出典はMind: A

          研究指導教員(スーパーバイザー)の変更

          日本でも海外の大学でも研究課程を履修すると、研究指導教員(スーパーバイザー)がつきます。日本の大学では、その教員の研究室に入るというのが一般的ですね。オーストラリアの大学では、卒論というものの代わりのようなHonoursという課程があり、Honours, Master, Doctor (PhD) が研究課程となります(Masterは研究課程でないCoursework という課程が一般的で、そのなかに短い修士論文を課せられる場合が多いですし、その論文の指導教員が割り振られます)

          研究指導教員(スーパーバイザー)の変更

          研究チームの構成:ダイバーシティ

          6月16日の日経新聞、「私の履歴書」で本庶佑先生が書かれた『サイエンスは「ホモ」でなく「ヘテロ」な人間が集まってこそ、新しい発想、斬新なアイデアが生まれる。異分野の交流や、違う環境で育った人たちを混ぜることが重要だ。違うバックグラウンドを持つ人たちが切磋(せっさ)琢磨(たくま)してこそ研究は前に進む。』という1文がとても心に残りました。 組織運営においてDiversity & Inclusion という言葉が浸透して久しいですが、この’diversity’ というのが、単に

          学費のお話

          今日は学費のお話をしてみたいと思います。 日本の大学とオーストラリアを含めた欧米系の大学の学費の差がどんどん広がってきています。こうした中、東京大学が「授業料の値上げを検討する」と報道して、大きな波紋を呼びました。これに関して、つい先日、東大側が検討状況についてホームページで説明をしています。 日本の国立大学の授業料は、​​​​省令で年53万5800円を標準額とし、2割高い64万2960円までの増額を認めています(日本経済新聞、2024年3月4日付 記事)。この、日経新聞の

          番外編:瀬戸内海の島々

          投稿を再開したところで早速番外編です(笑)。 私は香川県高松市の出身です。香川県といえば、最近は瀬戸内国際芸術祭で、海外からたくさんの方々が瀬戸内海の島々に建てられた/展示された建築作品およびアート作品を見にいらっしゃいます。 私も国内外のお客様をよくご案内します。当キャンベラ大学の建築コースの学生も、コロナ前までは毎年Japan Tourの一環として、瀬戸内の島々を訪れ、作品を鑑賞して学んでいました。今年、やっと、コロナ後初めて、学生たちをまたこの島々で引率することになりま