異文化社会でのコミュニケーション
日本の学生さんからよくある質問に、
1. 海外で働いてみて困ったことがありますか、もしあれば、どうやって乗り越えましたか?
2. 日本国内と海外での職場で、周りの人たちの考えが一番違うところは何だと思いますか?
というのがあります。
1、に関しての答えは、まず、英語を第二言語として使っている人が多いので、コミニケーションを気をつけなければいけないと言うこと、です。私がどんなに相手に伝わっているだろうと思っても、伝わっていない事はよくあるし、これが当たり前だと思って、相手にどうしたら適切に伝わるか、より考えてコミュニケーションをするようになりました。また、大事な事は会話が終わった後に、メールでも書いて送り、相手に確認を促すと言うことも重要です。
2、に関しての答えは、とにかくいろんなことが違うということです。(どれが1番というのはなかなか決められません)。そしてこれも大いに1、に関連しています。第二言語でコミニケーションをすると言う事は、それぞれ違う文化圏、宗教などのバックグラウンドがあると言うことです。10人いれば10人の考え方は全く違いますし、それぞれの考え方のバックグラウンドが全く違うのがオーストラリアの社会です。そうした、「違って当たり前」だと言うことをわかった上で、コミニケーションをすることが求められます。そしてそれは、相手がオーストラリア人でない限り、相手も母国語ではない英語を通じて私が伝えたいことを理解しようとしてくれていることになります。また、これが移民社会のオーストラリアの面白いところなのですが、オーストラリアで生まれていても、親がヨーロッパやアジアなど違う国の出身の方が非常に多く、育った環境は様々です。ですのでオーストラリア生まれオーストラリア育ちといっても、それぞれ家庭では全く違う文化で生活していることが大いにあり、必ずしも英語で話しているわけでもありません。
以下の表はオーストラリアの文化的および言語的多様性を示したものです。家庭の中で英語で話していると言う世帯の割合は、70%以上と多いものの、それ以外の言語も使われていることがわかります。また宗教的にも非常に多様であることがわかります。
特に、アジア出身の人にとっては、英語での物言いはとてもストレートに感じます。逆に、アジア出身の人の表現は、英語のネイティブの人にとっては曖昧に聞こえます。これは時に職場での意思疎通における誤解などの原因になることもあります。
また、アジアの社会はハイコンテクスト社会と言って、構成員の言語や価値観が非常に近い状態の社会ですので、コミュニケーションや意思の疎通を図るときにそれほど多くの説明を要しなくても伝わることがよくあります。ハイコンテクスト社会では言葉以上にその背景となる文脈やバックグラウンドを重視する傾向にあります。日本もハイコンテクスト社会です。
逆に英語圏の社会は、ローコンテクスト文化と言って、構成員の言語や価値観が異なる社会です。したがって、ローコンテクスト社会では、「相手が同じことを言っても違う感じ方をするかもしれない」と言うことを前提に、言葉そのものに重きを置き、曖昧な表現を避ける、きちんと伝わっているかを確認する必要があります。オーストラリア社会は、ローコンテクスト社会ですので、コミニケーションが重要になるわけです。
私がオーストラリアに移住して感じた事は、オーストラリア人は大体このような「意思の疎通が順調にいかないかもしれない」と言う事態に慣れていますので、もし私が言ったことが伝わらなければ、「もう1回言ってくれる?」と聞いてくれますし、大抵の人は、こちらが何回聞いても嫌な顔1つせずに言葉を変えてよりわかりやすく説明しようとしてくれます。日本人でありがちなのは、「何回も聞いてしまったら悪い。」と思ってあやふやにしてしまう事ですが、逆に、分からないまま曖昧にしていた方が後にトラブルの原因になりかねませんので、分からない事は必ず確認して、誤解を生まないように努力することの方が大事なように思います。
よく、英語がうまいとかそうではないとか言うことを考えがちですが、発音の技術よりも、相手にどう伝えたらより伝わりやすくなるかを考えてコミュニケーションを取るスキルを身に付けたり、ボキャブラリーを増やす努力をする方が大事だと思います。