駅伝のMVPを算出できる指標を解説 “三角形”の解釈と評価指標ができるまでのストーリー【考察の練習もあります】
駅伝のMVP選出や個人成績の比較を印象やインパクトなどの定性的なものではなく、数字で定量的に求められたら面白いと感じませんか?
ひと目でわかる箱根駅伝は、ランナーの走りを定量的に評価する3つの指標を作成し、指標に基づくMVPやランキングを発信しています。
本記事では、評価指標をどのように解釈すれば良いのか、どう思えばよいのかを簡潔に解説します。併せて、当方なりの駅伝そのものの解釈やどのようなストーリー・根拠で3つの評価指標ができたのかについても解説し、より理解を深めていける内容になっています。ぜひ参考にしてください。
本記事は、ひと目でわかる箱根駅伝が製作しています。駅伝の結果を様々な角度から見える化してきた経験から、ひと目でわかるようデータを見える化して解説を行っています。ぜひフォローや拡散いただけますと嬉しいです。
結論:以下のように解釈いただきたいです!
ランナーの評価指標は3つになります。
Height score・高さ値(三角形の高さ)
Slope score・傾斜値(三角形の斜辺の傾き)
Area score・面積値(三角形の面積)
2021年の出雲駅伝のレース展開をグラフ化したものです。横軸が距離、縦軸が平均タイムとの差になります。グラフが正の方向に傾いていると平均以上の走り、グラフが横ばいだと平均並みの走りをしていることを表します。
グラフ上でランナー1人に1つ三角形を作ることができます。その三角形の高さと斜辺の傾きと面積をそれぞれ評価指標としています。
Height score・高さ値(三角形の高さ)
平均的なランナーより◯秒も早かったんだ!すごい!
これくらいチームに貯金もたらしたのか!
これくらいチームに貢献したのか!
これくらい三角形の高さを上昇させたのか!
Slope score・傾斜値(三角形の斜辺の傾き)
走行距離を1キロに換算すると、これくらい貯金を稼いでいるのか!
これくらい三角形の斜辺が傾いているのか!
Area score・面積値(三角形の面積)
その走り、そんなに続けたのか!距離も貯金も稼いだんだな~
これくらい三角形の面積が大きいのか!
ここからは、なぜそのように解釈できるのか、指標ができたストーリーも踏まえて解説していきます。
“三角形”の解釈と評価指標ができるまでのストーリー
先述のとおり、グラフ上では、ランナー1人に1つ三角形を作ることができます。三角形は、横の長さが距離、縦の長さ<タイムー平均タイム>です。
一度ランナーの走りについての三角形をみなさんも頭に浮かべてみてください。
グラフを軸に駅伝を解釈すると、駅伝は三角形を高く積み上げるゲームと言えます。
ゲームに勝つには三角形を上へ上へと縦に長くしていく必要があります。
三角形の高さを評価 → Height score・高さ値
駅伝は走行区ごとに距離が違うため三角形の横の長さは変わります。しかし距離には関係なく三角形を高くできればその分チームの成績はよくなります。そのためまずは1人のランナーが「どれだけ三角形を上に長くできたのか」を評価することが最重要と考えられます。
そこで提案されるのが1つ目の指標、Height score・高さ値です。三角形の高さを評価指標としています。三角形の高さは<タイムー平均タイム>、どれだけ平均より速く走ったかでした。そのため高さ値は以下のように解釈することができます。
平均的なランナーより◯秒も早かったんだ!すごい!
これくらいチームに貯金もたらしたのか!
これくらいチームに貢献したのか!
これくらい三角形の高さを上昇させたのか!
三角形の斜辺の傾きを評価 → Slope score・傾斜値
高さ値は<タイムー平均タイム>で算出されます。
例えば平均タイムより10秒速く走ることを条件とした場合
走行距離が10キロメートルならば、じわじわと少しずつ差を広げて10秒差をつければ良いですが、
走行距離が100メートルならば、ウサイン・ボルトのレベルで速く走らない限り、100メートルで10秒差はつきません。
同じ10秒の差をつけたい時、距離が短い方が差をつけることが難しいとわかります。
例の状況で“1キロ当たり”何秒差をつけなければならないか算出すると
前者は1秒/km
後者は100秒/km
となり後者の方が大きな値になります。
同じ高さ値であっても距離が短いほどその高さ値を出すことは難しいため、1キロ換算をして評価する視点も必要とわかります。
1キロに換算するには、高さ値を走行距離で割り算をします。
(走行距離2キロで高さ値10。1キロ換算するには走行距離の2で割って、1キロあたりの高さは5とわかります。)
一次関数の傾きは<Yの増加量/Xの増加量>と習いました。
<高さ値(Yの増加量)/距離(Xの増加量)>は三角形の斜辺の傾きといえます。
1キロ当たりに換算した三角形の高さ=三角形の斜辺の傾きが2つ目の評価指標Slope score・傾斜値になります。解釈は以下の通りです。
走行距離を1キロに換算すると、これくらい貯金を稼いでいるのか!
これくらい三角形の斜辺が傾いているのか!
三角形の面積を評価 → Area score・面積値
傾斜値では、同じ高さ値であっても距離が短いほどその高さ値を出すことは難しい視点から指標を作成しました。しかし、10キロ走ったランナーより20キロ走ったランナーの方が、高クオリティを維持する必要があります。長い距離を走る、三角形で言うと横の長さを右へ動かす働きも評価すべきではないかと言えます。そこで提案されるのがArea score・面積値です。面積は<高さ×底辺の長さ(厳密にいうと÷2)>でした。駅伝の三角形でいうと、<高さ値×走行距離>となります。面積値の解釈は以下の通りです。
その走り、そんなに続けたのか!距離も貯金も稼いだんだな~
これくらい三角形の面積が大きいのか!
結論:以下のように解釈いただきたいです!
ここまで3つの指標に関して、解釈と評価指標ができるまでのストーリーを解説しました。三角形を頭で描くことができたでしょうか?
解釈をまとめると以下になります。
Height score・高さ値(三角形の高さ)
平均的なランナーより◯秒も早かったんだ!すごい!
これくらいチームに貯金もたらしたのか!
これくらいチームに貢献したのか!
これくらい三角形の高さを上昇させたのか!
Slope score・傾斜値(三角形の斜辺の傾き)
走行距離を1キロに換算すると、これくらい貯金を稼いでいるのか!
これくらい三角形の斜辺が傾いているのか!
Area score・面積値(三角形の面積)
走行距離を1キロに換算すると、これくらい貯金を稼いでいるのか!
これくらい三角形の斜辺が傾いているのか!
おわりに 指標を活用した駅伝の見方の練習
指標を活用した駅伝の見方の練習をしてみましょう。三角形を浮かべながら見てみてください。
当方は以下のような視点で運用しています。
差のつきにくい区間=平均値に近いランナーが多い=高さを稼げていないランナーが多い その中で稼げているランナーはすごい
1区は差のつきにくい区間
短距離区間は高さを稼ぐのが難しいが、高さ値で高順位なのはすごい
高さ値TOP=チームへの貢献度TOPの選手をその駅伝のMVPとする
各大学の高さ値1位は最もチームの成績に貢献した選手といえる
長距離区間で三角形の斜辺の傾きを大きくするのは難しいので、長距離区間で傾斜値上位はすごい
出雲駅伝2022 Height score・高さ値ランキングTOP20から考察できること
【考察できること】
MVP(Height scoreトップ)は駒澤6区鈴木芽吹選手
ランキングに駒澤の選手が多い 優勝がうなずける
3区のランナーがランクインしているチームの成績は上位→上位に食い込むには3区の出来が重要
短距離区間の4区と5区だが、4位國學院中西選手、5位駒澤安原選手なのは衝撃的
差のつきにくい1区であるのにランクインする中央吉居大和選手はすごい
出雲駅伝2022 Slope score・傾斜値ランキングTOP20から考察できること
【考察できること】
國學院中西が大差でトップ
長距離区間を走った創価3区ムルワ選手、駒澤6区鈴木選手はすごい
5区は区間6位までがTOP20入り、傾きが大きいランナーが多くスピードの速いレベルの高い区間だった
出雲駅伝2022 Area score・面積値ランキングTOP20から考察できること
【考察できること】
駒澤6区鈴木選手が大差で1位
2位の國學院6区伊地知選手、3位の創価3区ムルワ選手までは別次元
1区でランクインする中央吉井大和選手、駒澤花尾選手凄い
長距離区間の3区と6区でランクインしている大学は上位争いできている
考察の練習をしましたが、いかがだったでしょうか?今後も指標を用いた解説を行っていくので、三角形を思い浮かべながらランキングを見つめて、考察してみてください。
以上が本記事の内容になります。
引き続きnoteでは、ひと目でわかるようデータを見える化して駅伝の振り返りを行っていきます。
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本記事を読んでいただきありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。
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