名前の起源
晴れているのに雨が降っていることを『狐の嫁入り』という。
私は、今の土地に住むようになり、晴れているのに「雪」が舞うことがあるのを知った。
自分の上空は晴れていても、北の山奥の方に雲がかかっていて、そこから冷たい雪が飛んでくることがあるのだ。
今日は、そんな日。
近所の家々を見ると、お日様が当たっていて明るいのに、あたりには乾いた雪がふわふわと舞っている。
私は、晴れと雨が『狐の嫁入り』なんだから、晴れと雪にも名前はないのだろうかと思案したことがあり、しかし、思い至らず、自分で密かに名前をつけることにした。
その名も『たぬきの嫁入り』。
なんとも安易だ。
人里に現れる野生動物として、キツネとよく並んで登場するタヌキ。
いいコンビではないか。いつも心の中で、たぬきの嫁入りってどんな物語だろうか、と勝手に想像しながら、『今日もたぬきの嫁入りだな』なんて思っていた。
ところが、本当はちゃんと名前があったことを後に知った。
『風花(かざはな)』というらしい。なんとも愛らしく優雅な名前。
この言葉は聞いたことはあったが、恥ずかしながら、その意味は長らく知らなかった。
ということで、今日は『風花』の日だ。
でも、私には『たぬきの嫁入り』の方が田舎の風景に合っている気がする。
これからも地味に密かに、そう呼んでみようと思う。
いつかどこかで誰かから「こういう天気を『たぬきの嫁入り』って言うらしいよ!」なんて云われたら、ちょっと楽しい。