『1枚イラスト』に篭める世界
朝Twitterを見てたら、プロの漫画家さんがこう呟いてらっしゃった。
漫画とイラストは全然違う世界だというのは重々承知の上で、既刊に重版がかかるような人気作家さんでも今だ思い悩むものなのだなぁと、なんだかしみじみしてしまった。
で、リプライが1つ付いていた。
いや違くね???
そもそも、誰だお前。
見たところ、絵を描く人でもなく、この漫画家さんとの相互関係がある訳でもなく、にもかかわらず、それがさも絵に精通している人間かのようにタメ口で言い切ってる(しかも私から見れば正解ではない)のを見て「は?」ってなってしまった。頑張れ〜じゃねンだわ。
ご本人からは返事の代わりとばかりにイイネだけ返されているのが、どのような感情から押されたものかは私には分からない。
とりあえず、私には合わない人だと判断したのでブロックしてきた。うーん、諸々全部含めて『これぞTwitter』って感じ。
漫画家さんのリプ欄で見知らぬ人と喧嘩する気もないし、そもそも私とてプロに講釈垂れられるほどの人間でもないもので、今回は元ツイートに『難しいですよねーわかります』の気持ちを込めてイイネだけ押して、黙ってまたTL巡回に戻った。
……んだけど、モヤつくーーーーー!
言いてぇーーー!自分なりの感想どっかに言いてぇーーーー!!!!!
という訳で、今日のnoteにすることにしました。
私にとって重きを置いてる世界だからしょうがないね。私のもあくまで『1個人の感想です』の域を出るものではないけど、まぁ良かったら聞いてってくださいな。
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まず、件のリプの人に「違くね?」と心の中で即答してしまった訳なんだけど、別に1枚イラストってそこまで背景必須モノではないと思っているんですよ。
例えばだけど、この程度だって『1枚イラスト』と呼べる範囲のものだと思う。
件の人たちが『1枚絵』と『集合絵』を混同してる可能性もあるけど、とりあえずは言葉通り『1枚絵』のみの話をする。
これは見ての通り、
『背景』と呼べるほどの背景ではない。
一応なんとなく、草地っぽくはした。
外で、後まぁ晴れた日なんだろうねー、暖かい日なのかね、程度が通じるであろう、最低ライン。
キャラクターらしい特徴もない、シンプルな絵。
ただ、それでもなんとなく
・穏やかな人
・ちょうちょが好き(少なくとも嫌いではない)
の雰囲気は伝わると思う。
例えばこれを、こう変える。
元絵の、顔と右手だけしか変えてない。
でも多分、全然違うキャラクターになったと思う。
・びびりやすい
・ちょうちょ、あるいは虫全般が苦手
そんな感じだろうか。
元になったツイートで『人生』とか『物語』とか壮大な単語を使っているせいか(尚、ツイート内容は正しいと思う)、どうも必要以上に難しく、かつ抽象的な話になってしまっている気がする。
『人生』っていうのは、結局その人そのキャラが、どういう生き方をしてきたか、もうちょっと身近な感じにするならどういう性格なのかって話だと思う。何が好きで、何が苦手で、どういう考え方をするキャラで、どんな行動パターンをするかの解釈が、いかに己の中でクリアになっているかという、それだけなのだ。
えーとそう、例えば。
『ワンピース』の、ルフィがいる。彼を動物園に連れていったとして、何をするか。
みんなの後ろを黙って微笑みながら、まるで保護者が小さい子を見守るように歩いて行く彼を想像する人はまずいないと思う。チョッパーやウソップと競走しながら我先にと駆け出し、勝手に檻を乗り越えて動物の輪の中に飛び込んで、ナミのゲンコツを喰らうまでがルフィというキャラクターではないだろうか。
その間に、ゾロは勝手に迷子になってるし、サンジは女性陣に向けてジュースのひとつも仕入れてるかもしれない。漫画を描いていると『キャラクターが勝手に動き出す』なんてのは良く聞く話だけれど、結局そういう、キャラクターへの理解が自分の中でどこまで深められているかという話であって、個人的には1枚イラストというものはそれをどう切り取るか、その中のどの瞬間を狙ってシャッターを切るかといったような、そういう話だと思うのだ。
それが動物園を歩いているのか、無人島を歩いているのか、登山道を歩いているのかを絵で説明するのが『背景』というもので、その意味で決して背景を疎かにしていいという話ではない。それは、絵に説得力を与える。
ただ、かの人のように「背景でしょ」と雑に言いきられてしまうほどの重要度かと言われれば、それはちょっと違うやろって話なのだ。
今回ある程度有名どころでキャラクターの個性がはっきりしているところからワンピースをチョイスしたけれど、尾田先生はそういう1枚絵がめちゃめちゃ得意だと思う。画集も見てて楽しい。1枚絵・集合絵の練習がしたい人にはとても良いと思う。
私も最近、大きな『1枚絵』を仕上げたところだ。
世間で言う『年賀状』なのだけれど、あれは毎年、私が1年の集大成として送る『全力の1枚絵』で作っている。
どこまで、楽しんでもらえるだろうか。なんとなく全体の雰囲気をチラッと見て終わる人、細かな小ネタに気づいてくれる人、発色を楽しんでくれる人、様々だろうと思う。本気で描く1枚は、大変だけど、楽しい。色んな見せどころを詰め込んだ、おもちゃ箱のようだと思いながら描いている。
以上が私のイラスト観なのだけれど、案外「いや、1枚絵の背景はもっと重要なポジションでしょ」を、しっかり明確な意図を持って力説してくれる人もいるかもしれない。
それはそれで聞いてみたいなぁ。
絵は、ほんとに楽しい。
奥深くて難しくて、めちゃめちゃ楽しい。
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