見出し画像

限定ラーメンお休みします 〜「ラーメン屋」になるために 〜

久々のnote投稿になりました。


神保町から退去し荻窪で週1〜2回の営業になってかれこれ1年少々、休止期間除いてほぼまる1年でしょうか、看板商品の「ひつじそば」とその週の限定ラーメン(4月からは「羊中華」のレギュラー2品)というスタイルでほぼ毎週別メニューを作り続けてきました。
おかげ様で週2日に増やしてもお客様が半分になることもなくなんとか続けてこれました。

ただ徐々にどうしても払拭できないものが澱のように溜まってきました。


懸念していたのは看板商品のひつじそばでは無く限定メニューだけをお求めのお客様が少しずつ増えてきたことです。


【限定ラーメンの弊害】

もちろん最初は看板商品を食べなければいけないというルールはないですし、どなた様が初めてのお客様なのかも正確にはわからないですし、限定メニューは売り切れなければ利益が十分には出ないので1杯でも多く売れるほうがいいのですが、それでも一方的な店側の視点だけかもしれませんがやはり望んでいた方向とは違ってきましたし、長い目で見るとラーメン屋として、飲食店として好ましくない傾向ではあります。

それは一言で言うと「本編を観ずに続編だけを観続けられてはなかなか本質が理解されない」ことだと考えています。

今までほぼ毎週新しく作ってきた限定メニューはひつじそばの派生型であったり、副産物を利用したものであったり、あるいはひつじそばと真逆の方向性で作ることでラーメンと羊料理の奥深さを醸し出すなど、看板商品を知っていることこそが味の決め手になっているといっても過言ではないでしょう。

また毎回限定ラーメンだけを求められ続け、一度お召し上がりになったものは二度とかえりみられることもなく次から次へと移り変わる傾向が強まることで、食べ手としても作り手としても一品ごとの美味しさの向上や技術の蓄積が進まないことも問題視するようになってきました。

そして何より、限定ラーメンが注目され続けたことで看板商品たるひつじそばの値打ちが相対的に下がり続けてしまいました。
限定が売り切れたから仕方なく食べるひつじそば、というのはやはり残念です。

しかし何度かnoteに書いてきましたが、「ひつじそば」こそが人と羊でしか味わえない限定ラーメン以上の限定ラーメンであります。


【看板商品の真価】


・羊をメインとした中東料理の要素を盛り込んだラーメン
・一旦羊の骨のみで白湯をとり(他店での限定羊ラーメンならこれでスープは完成)、さらに大量のラムひき肉と卵白で澄ませたコンソメスープ
・羊ひき肉のテリーヌをデフォルトでラーメンに乗せ、そこから徐々にスープに溶けだすスパイスとハーブからの風味の変化

自慢でもなんでもなく現時点での客観的事実として申し上げますが、この今までになかった3つの要素すべてどころかひとつでも満たしたラーメンはひつじそばしか存在しませんし、例え素材が羊でなかったとしても他店では年に数回しか出せないようなレベルのものを毎営業日出してきました。

そんな心骨削って作り続けた「ひつじそば」が限定ラーメンが売り切れた際の保険として半ば仕方なく食べるものになりつつある、という傾向には歯止めを打たなければなりません。

大変迷いましたし今でも不安のほうが大きいですが、決断を下します。

【限定ラーメンお休みします】

人と羊は今夏の間、限定ラーメンは作りません。

レギュラーのラーメンだけを出し続け、磨き続けます。
あえてレギュラーメニューしか出さなかった開店当初の姿勢にもう一度立ち返り、もう一度丁寧に説明し直してまいります。
(そのぶん、トッピングやごはんもの、テイクアウトには今までよりも注力する意向です。レギュラーのラーメンも少し増やす予定です。)


そう、神保町での開店当初はクリスマスと年末年始以外頑なに限定ラーメンを出さなかったのは、ひつじそばこそが限定ラーメンであることを知ってもらいたかったし、その店でしか味わえないものを毎日提供し続けることこそに価値があると信じていたからです。

その方針は売上低迷、閉店危機から脆くも崩れこれでもかという限定ラーメンの波状攻撃でなんとか盛り返して今に至りますが、それでもひつじそばの真の限定感はわかってくださっているはずだ、という甘えがありました。
その真価をもう一度、商品でも言葉でも表現していきます。


限定ラーメンに流れすぎず看板商品のラーメンを出し続け、少しずつ美味しさを向上し続け、同じ商品でも飽きられず何度でも食べたくなるものに成長させていく。

改めて考えてみるとこれって「ラーメン屋」ならほとんどすべての店がクリアしている当たり前の要素です。
人と羊は「ラーメン屋」ではなく「限定屋」になってしまっていたのかもしれません。

人と羊は「ラーメン屋」になりたいし「ラーメン屋」であり続けたい。「限定屋」ではなく。

少なくとも自分にとっては100の限定ラーメンを作ることよりもはるかに難しいですし、普通の「ラーメン屋」なら普通のことでも大いなる挑戦です。

少なからず落胆された方もいらっしゃるでしょうが、もし共感、賛同してくださいましたらぜひともご来店くださいませ。
そしてご感想など広めてくださればこの上なく有り難く思います。

それでは皆様、この夏も
#ご来店お待ち申し上げます

#私の仕事
#ラーメン
#ラーメン屋
#飲食店経営

店主の勉強代になります。何かしらのカタチで還元できると思いますので魔が差したらサポートおねがいします。