自転車とフロー(ゾーン)状態
どうも、鼠先輩と仁志松本の決めてほしい話が大好きな者です。
さてさて、皆さんはゾーンとかフロー状態とかって話を聞いたことありますでしょうか?僕は個人的にこの類の話が大好きで、フロー状態という概念を作ったチクセントミハイ氏の本を中心にぼちぼち読んできました。
最近自転車のレースに参加する中で、あれはフロー体験だったのではないか、あの限界ギリギリまでパフォーマンスを出し切れた経験はたぶんそうなんではないか、という経験があったので、改めて以下書籍を読んでみたところ、気づきがあったので、だらだらと書き殴ります。
Amazon.co.jp: 超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験 : スティーヴン・ コトラー, 熊谷 玲美: Japanese Books
フロー状態とは
心理学者チクセントミハイが作った用語で、最高のパフォーマンスができる状態を表す言葉。その動作に関連したすべてがうまくいき、物事はたやすく、流動的で自動的に進む感じがする=流れる感じ(フロー)ということ。チクセントミハイは「ある活動に熱中していて、他のことが重要と思えない状態」と定義。その他、その状態の特徴として「自我は消え去る。時間は飛ぶように過ぎる。自分のスキルを最大限に発揮している状態」と。テニス選手の錦織圭が、サービスではエースを奪うは、打った球がすべて入る状態になった際、松岡修三が「圭はゾーンに入ってる」とか言ってたけど、ゾーンとフロー状態は似た状態だと思われる。
フロー状態の10の要素、条件
以下が「フロー状態の10個の要素」、特に①-④が「フロー状態の条件」と言われている。ただ、個人的には、⑧の「内発的な報酬を感じられること」もかなり重要ではないかと思う。つまり、行為の結果、目標の達成だけではなく、スポーツをしているその一瞬一瞬自体が報酬になっている、プロセス自体が非常に楽しい、という状況、これが大事だと思う。
①明確な目標
期待やルールが明確。
②能力レベルと挑戦(目標)のレベルのバランス
チャレンジが難しすぎず、また易しすぎない。ギリギリ達成可能なレベル。③集中
限られた注意の対象に極度に集中している。
④直接的かつ即時のフィードバック
成功と失敗がはっきりと即時にわかるので、必要に応じて行動を調整できる。
⑤自己意識の消失
動作と意識が融合する。自分はもっと大きな何かの一部であると感じるような状況。
⑥時間間隔の変化
時間の主観的な感じ方が変わる。遅くなったり、時間が止まったように感じたり。現実から離れたような忘我を感じる。
⑦状況を自分でコントロールしている感覚
⑧内発的な報酬
その活動・行為自体が内発的な報酬をもたらすため、活動が苦にならない。
⑨没頭
意識が目の前の活動に絞られる。いまここ、への意識。
⑩身体的ニーズへの認識の欠如 ←この点ついてはよく理解できずm(__)m
自転車競技でフロー状態だと思える状況
上記をフロー状態の要素としたとき、ああこの状態はフロー状態に近い状態だったのではないか、と思うのが2024年の富士ヒル。自分の想定を超えて限界まで力を発揮できたが、その際のレース中の感覚が上記要素に当てはまっている気がする。
ざっとフローの各要素と、それに対応した富士ヒル本番の自分の状態をまとめてみた(⑩は省略)。若干こじつけ感があるように見えるかもしれないが、富士ヒルで自己の限界まで力を発揮出せたのは、いわゆるフロー状態に近い状態に入っていたからではないかと思う。
フロー状態と名付けるかどうかは別にして、皆さんもこのような状態になった経験はあるのではなかろうか?
フロー状態になるには?
ではフロー状態の要素がわかったとして、どうすればフロー状態になれるのか?そんな簡単にその状態に入れるものではないと思うが、スティーブン・コトラーによると以下、内的要因と外的要因を満たすように努めれば、フロー状態に入りやすいのではないか、とのこと。
①内的要因
・「内発的報酬を感じられる競技を選ぶ」:目標達成することのみでなく、そのプロセス自体が報酬に感じられる競技を選ぶ。そもそも論。
・「今ここへの集中」:最終的な目標を重視するより、今ここで何をすべきかに集中する。
・「挑戦とスキルのバランス」:挑戦のレベルがスキルのレベルを4%くらい上回る程度がスイートスポット。
→そもそもの競技選択、目の前の動作への極度の集中、ギリギリ達成可能な目標設定、これらはどれも自転車競技で意識すれば満たすことができるように思う。
②外的要因
・新規性、複雑性、予測不可能性が同時に存在する、「多様性のある環境」に身を置く。
・深い身体化。感覚入力をより多くの五感から得て、より多くの処理しきれない情報を得る。そうすると、意識レベルで深く考えている暇が無くなり、体全体が注意を払う深く集中した状態になる。
→これが普段の練習ではなく、レースという複雑な環境でフロー状態になりやすい理由だと思う。つまり、レースではライバルが多く参加し、それゆえ、展開に複雑性と予測不可能性が非常に高い。また、インドアのトレーニングと異なり、天候や路面状態に左右される「自然環境」で行われる外レースでは、五感からより多くのインプットを得ることになると思う。そこで得たインプットを、ある種直感的に処理している状況になるので、深く集中した状態になりやすいとのことだ。
上記の内的条件を作り出すように競技選択、目標設定をし、また上記外的条件に身を置くこと、これがフロー状態になりやすい状況を作ることだとすると、自転車競技は割とこの状況を作りやすいのではないかと思う。
禅語との共通点
何冊か関連書籍を読んで、個人的には非常に腹落ちしたので上記のようにまとめたものの、別にこの分野に特段詳しいわけでもないので理解が間違っていたらぜひ指摘してくださいm(__)m
にしても、まとめてみてJETTのチームメートでもあるタイシュー和尚に教えてもらった「而今(じこん)」という考え方が改めて重要だなと感じる。而今は禅語で、「今ここに集中する」「この瞬間だけに集中する」ような意味。よく、過去のことに囚われている人や未来への心配で心を痛めている人に対して、「過去未来を考えるより、今ここに集中するのが大事」というような形で使われている言葉だが、スポーツでパフォーマンスを出すためにも大事な概念だと思う。
過去このレースでどういう結果だっとか、ピーキングがうまくできなかったとか、トレーニングプランがどうだとか、このペースで走るとこれくらいのタイムになりそうとか、そういう雑念をある種排除して、「今ここ」「この瞬間」のペダリング、ライドに集中すること、それによって、自分のパフォーマンスを限界まで引き出せることにもつながるのではないかと思ってる。単純に、今ここに集中していると、その行為自体が自己報酬的になりがちだと思うから、達成感・満足感・多幸感も半端ないしね。
ってことで、今後も素晴らしい経験ができるチャリンポコを愛していこうと思います。読んでくれてありがとオーライ、ばいなら👋