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「人文学に予算を付けるくらいなら工業高校や高専に予算を」という主張がなぜ差別的か(2025年2月19日の日記)
生活
仕事でコードの修正や仕様変更の対応。変更に強い作りにしていたおかげで楽ができ、過去の自分に助けられる。昼、なくならないカレーをひたすら食べ続ける。洗濯や掃除や洗い物をし、そのあと20時ぐらいまで仕事。夕食でまたカレー。別件の仕事の連絡を返し、アニメを観る。
「人文学に予算を付けるくらいなら工業高校や高専に予算を」という主張がなぜ差別的か
自分は以前から分野を問わず「教養教育」を擁護する主張をしてきたのだが、隠岐氏の様々な発言や、古巣の米国大学の堕落を見ていると、こんなところに公費をつぎ込むくらいなら、工業高校や高専に予算をつけて、配管工養成して、下水管直した方が世の中のためだと率直に思うね。(後略)
このような極めて差別的な主張があり、そして誰も批判していないことが恐ろしくなり、批判を書こうと思った。このような「人文学より工業高校」系の主張はたびたび繰り返されているので、今後に備えて考えをまとめておきたい。高専に通っていたし一時期はメカの仕事をしていたんだから、当事者として文句のひとつくらいは言いたい。
おそらくこの発言の背景にはまず人文学者を役立たずと見なす偏った考え方があり、次に「お高く留まった人文学者は工業高校や高専を低く見ている」という(必ずしも正しくないが)世間の合意がある。「お前ら人文学者が低く見ている工業高校や高専のほうが価値があるぞ」という批判として、支持を集めているのではないか。
だがこの主張は奇妙である。要約すれば「隠岐氏(のような人文系研究者)や古巣の(人文系の学部がある)米国大学が堕落したから、工業高校や高専に予算を付ける(増やす)べき」ということだと思われるが、裏を返せば人文系研究者や人文系学部が堕落していなければ工業高校や高専に予算を付けなくても良いということになる。文系と理系がそうであるように、大学と職業教育だってそれぞれ役割が違って優劣なく両方とも必要なものだ。そもそも工業高校は中等教育で大学は高等教育の差があるのだから直ちに予算を奪い合う関係でもないはずだ。なぜこんな考えになっているのか?
ここには人文系への不当な偏見だけでなく、大学を上位に、職業教育を下位に位置づけ、職業教育を程度が低いものと見なす二重の偏見が含まれている。職業教育(とそれを受けた職業人)はより程度が低い、予算の優先度が低いとみなされているからこそ、人文学バッシングのために当てつけとして引き合いに出されているのだ。当てつけだとわかる根拠は他にもある。それは職業教育および職業人の中に人文学の要素がないという偏見である。実際には職業訓練の中には職業に関する倫理教育があるし(たとえば高専には人文系の学位を持っている教員による技術者倫理の講義があるし、学生が取得する工業系資格のなかにも法や倫理の科目がある)さらに工業分野においてはとくに学校や職場に外国人労働者がいる・海外に行くことも珍しくないことを踏まえて異文化理解の取り組みが行われていたりもする。教科書の執筆者は人文学系の研究者だ。しかしここでは人文学不要論のためにこのような取り組みを無視し、人文学的なものごとなしに仕事ができている=職業教育および職業人は人文学的理解がないとされているのだ。発言者の考えていることを率直に言えばこうだ。「大学の人文系学部は堕落し、工業高校や高専などという低級なものより価値がなくなった。だから罰として人文学から予算を没収し、みせしめに本来なら予算を付けたくないような職業教育に予算を付けてしまいたい」。これが差別的でなくて何だと言うのか。当てつけにされる当事者の身にもなってほしい。そもそも人文学者バッシングだって偏ったイメージを流布してそれを批判するマッチポンプではないのか。そうであれば職業教育や職業人はあなた方が見下したい人文学者のために二度もダシにされているのではないのか。工業高校や高専を低く見ているのは人文学者じゃなくてあなたではないのか。私はこの発言に抗議する。
きょうのカレー
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きょう観たアニメの感想
いずれ最強の錬金術師? 7話
もうおれ異世界アニメでヒロインを奴隷にするやつと奴隷本人に幸せだって言わせるやつ見たくないよ~~~~~
— 人間が大好き2 (@hito_horobe2) February 19, 2025
キャラはかわいいしコメディもまあまあ楽しいけど奴隷って名前が付いている契約をしてて、奴隷でも絶対服従ではなくて裁量があるっていうことになっているけどじゃあ奴隷契約じゃなくて普通に雇用とかにしちゃダメだったんですか?オタク的にそんな奴隷と主人の関係って嬉しい?おれは嫌だが……
余談だがちょっと面白い指摘があった。
「この展開は倫理的にどうなんだ」という感じのアニメを実況するポスト、よく見かけるが、たいてい普通に視聴継続してそうで謎なんだよな……
— いしすこ (@Sekaishisuko) February 19, 2025
はい、わたしは時間が潤沢にあり、金がないので無料のアニメを観て、毎日怒っています これはSNSをやっているみなさんとだいたい同じだと思いますが……
— 人間が大好き2 (@hito_horobe2) February 19, 2025
どんなアニメでも視聴を継続する理由は以前書いたとおりだが、当然何でも見ていると嫌なアニメは出てくる。そういう作品に対しては怒りたい気分を満たしたいがために見ているところも正直ある。SNSで多くの人がやっていることと同じだ。これ自体は不健全かもしれない。
しかし嫌な作品からでも得るものはある。良く感じなかった理由を明らかにし、具体的にどう良くなかったと評価を表明できるのだ。こうした評価が集まり、広まることで、ものごとが自分の望む方向へと変わるのではないかと信じている。
誰ソ彼ホテル 7話
誰ソ彼ホテルすごいな レギュラーで殺人鬼がいるせいで良い話か悲しい話かサスペンスになるか分からないから、これのおかげで生前回想パートとか人間ドラマで泣かせとスリルが同時に体験できるってすごい作りだ
— 人間が大好き2 (@hito_horobe2) February 19, 2025
食堂のスタッフとして役割的にしか出てこないルリさんの不遇の過去に迫りつつ一筋の光が差すようなエピソード。人間誰もが装置ではなく人生があるという感じがしてよいですね。ホテルを訪れたのは我が子を養うために特殊詐欺に手を染めてしまった女性(かなり現代っぽい)。実の親子ではなく、似た境遇の他人だからこそ率直に言える優しさがルリに届く。この作品は誰しも単純に良いやつでも悪いやつでもなく両方併せ持って程々に業を抱えている複雑さを描くところがいいんですよね。回想パートも被害性を煽りすぎず、客観性を感じさせる第三者視点が交わるカラッとした演出。過去が報われずとも優しさをもとめてもよいしこの時間に誰かの優しさがある、というような寂しくも温かなラストに涙。
異修羅 19話 感想
人型に限らず多様な種族から多様な主役級キャラクターを創造する手腕のすごさ、種族ごとの形態を活かしたアクションとそのリッチさ、それらの因縁がクロスオーバーする予兆、と作品の持ち味がよく出ている回。面白いと言えば面白いが、終盤まで来てもキャラクター紹介が続く異常な構成に見える。とはいえ配信で一気見すると視聴感がまた違いそうだなと思った。
マジック・メイカー 7話 感想
突如として奇病にかかった姉を助けようと必死になる展開で、ようやくこの主人公がちゃんとした大人になるんじゃないかという期待がかかる。家族が大事だという回想。でも前回は家族に対してちょっと性欲見せてたんだよな……
天久鷹央の推理カルテ 7話
感覚のズレや共感の乏しさを論理で補う天久先生の感覚はよく共感できるし、ただの奇人でないキャラと分かって良かった。その部分以外、特に推理は正直なところかなり力技だなと思った。症状の原因を医学の知識で明らかにするという物理のトリックでやってきたところに精神疾患を入れると前提が崩れすぎるような……。
ハニーレモンソーダ 7話
前回に比べると大幅に落ち着いたテンポ感とコンテ。「嘘が下手」を軸にして会話を連鎖させて少しずつ議題をズラして解決に導く会話劇が格好いい。
RINGING FATE 7話
エデンと彩子の試合を通した対話の続きが始まると思いきや、試合後に敗者は記憶を取られるというルールを使って記憶喪失にしてしまい結論を先送りしてしまう。こんなちゃぶ台返ししていいんだ。
隼風との試合で追い詰めれた要がサブローに主導権を渡してしまうシーンの不穏さ。試合では記憶を賭けて戦うゆえに、記憶こそが最も重要なものであるかのように描かれてきたが、自分を自分たらしめるものはその限りでないことが示唆されて思想面でも面白くなってくる。