最速の女
とは言っても走りの最速ではなく
買物最速の女。
母は速かった。近くにローカルなスーパーがあった頃、ママチャリの前と後ろに大きなカゴを取り付けて颯爽と買物へ。
当時朝7時半からモーニングをしてランチもしていたのでとにかく野菜。特売の日は後ろのカゴいっぱいにキャベツ買って来たり、前が見えないほど山盛のレジ袋をカゴに押し込んだり本当に逞しかったし何より早かった。
スーパーの従業員さんの間では
「店に入ったかと思うとカゴいっぱいにしてもうレジに並んでいる」と噂になっていたほどだ。
あれこれ選らない。勘で選ぶ。
売り場でひとつひとつ手に取って裏返したり戻したりカゴに入れてまた戻したりしている人を見るとイライラする。私も目指すのは最速。
買うものの順番をシュミレーションしながら向かい、カゴをつかむや否やサササッとほりこんでいく。例えばトマトを5つ買う時はは箱を見回し一瞬でこれとこれとこれ、と決める。決めかねている人の横でちょっと気持ちがいい。でもどれでも良いではなく一瞬で選ぶのが肝心だ。
ローカルなスーパーは随分前になくなって、行くのは大手スーパーなので昔のように「あの人速い」とか無駄話しをする人は居ないだろうし風潮としても他人に無関心なので2代目の私としてはそこはちょっと寂しいかな。
段々似て来たな、と思ったのは
行きつけの八百屋さんできれいなトマトを見つけ2箱買って自転車の前のカゴに乗せて片手で押さえバランス取って無事帰れた時。
そして後ろにもしっかり大きなカゴ付けてしまった時。DNA恐るべしだ。