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しくじり商品研究室:BALMUDA Phone

商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://tech.balmuda.com/jp/phone/

BALMUDA Phoneの例

ついに撤退を発表

登場直後から、主に性能と価格のバランスを酷評され、苦戦が続いた「BALMUDA Phone」。5/12に携帯端末事業からの撤退が発表されました。オーブントースターやケトルなど、評価の高い商品もある一方で、なぜ、スマートフォンは失敗に至ったのか、探っていきたいと思います。

BALMUDA Phoneが目指したもの

まず、BALMUDA Phoneが目指したものは何だったのか、商品発表時に寺尾玄社長が語った、開発動機から、抜き出してみました。
①今のスマートフォンは画一的である。
②今のスマートフォンはサイズが大きい。
これらが、BALMUDAがスマートフォンを開発した動機とされています。ここから考えると、BALMUDA Phoneが目指したものは「オリジナリティにあふれ、コンパクトなスマートフォン」となりそうです。

しくじり理由

①ユーザー不在の目的設定

寺尾社長曰く「今のスマートフォンは画一的である」ということですが、本当にそうでしょうか?
もし、スマートフォンが画一的だったら、機種変更の際に使い方で戸惑うことは少ないでしょう。また、昔のガラケーと違って、スマートフォンでは自分が必要とするアプリをインストールすることも一般的です。アプリによる拡張性によって、同じ機種でも、自分のスマートフォンと人のスマートフォンの中身は異なるのが実態でしょう。
つまり、「今のスマートフォンが画一的である」ことを課題だと感じているユーザーが多くいるとは考えにくいのです。
仮に、BALMUDA Phoneが既存のOSではなく、全く新しいOSを搭載し、使い勝手が大きく向上しているのであれば、iPhone、Androidに続く、第三の選択肢としてユーザーに受け入れられたかもしれません。しかし、実際にできているのはスケジュール管理や、電卓の桁数表示など、結局アプリレベルの内容で、スマートフォンの存在自体がオリジナリティあふれるものになっていません。

②ブランドイメージがiPhoneと被っている

BALMUDAのオーブントースターや、ケトルなど、市場で受け入れられているものは、変化がほぼない市場に、新たな価値を吹き込み革新を起こした商品です。例えば、オーブントースターは昔から進化がほとんどなく、ヒーターで食品を加熱するという原理はずっと変わりませんでした。そこに、ヒーターだけでなく、スチームを併用することで、トーストがおいしく焼ける、という価値を提案し、ヒットにつながっています。
ただし、トーストがおいしく焼けるという機能だけでなく、高いブランドイメージがないと、1万円未満の商品が大半を占めるオーブントースター市場で、3万円を超えるような価格では売れないはずです。ここで、人々がBALMUDAに抱くブランドのイメージはどのようなイメージでしょうか?
おそらく「革新的」や「シンプルなデザイン」などがキーワードとして出てくるでしょう。では、「革新的」や「シンプルなデザイン」といったイメージを持つスマートフォンが市場に存在しているか、と考えると、AppleのiPhoneが極めてイメージが近いことに気づきます。
つまり、BALMUDAのファン層はすでにiPhoneを使っている人が多いと思われるのです。彼らにBALMUDA Phoneに乗り換えてもらうには、それなりの理由が必要ですが、そこまでの提案はできていません。

BALMUDAの勝ちパターンとは

BALMUDAの商品の中でも売れているもの、売れていないものが存在しています。私なりに考えてみると、売れている商品の勝ちパターンは下記かと思っています。
①大手による訴求の独自原理が確立していない市場で
②明快な一点突破した機能と
③高いデザイン性をもった商品を展開する


具体的に、オーブントースターの例では、下記のようになります。
①大手商品のトースターは「トーストが外はこんがり、中はふんわり焼きあがる」といった訴求はしているが、各メーカーで独自の機能とその原理が説明されていない市場である。
②スチーム機能でトーストのおいしさに絞って一点突破している。
③これまでのオーブントースターとは異なるデザイン性の商品である。

今回のスマホ市場ではAndroid or iOSの市場に、BALMUDAらしいデザインの商品を投入しているので①、③は満たせていそうですが、②の一点突破ができていません。これまでBALMUDAが商品を展開してきた市場は、オーブントースターのように普及率が高かったとしても、スマホのようにプラットフォームになっていた商品はありませんでした。プラットフォームがすでにある中で、これまでのニッチ戦略が通用せず、一点突破出来なかったものと考えます。投資やノウハウも必要なので、第一弾商品ではできないにしても、今後の事業継続の中で、スマートフォンのあり方を自体を変えるようなOSなど開発で、プラットフォーム化された市場への戦い方ができれば、違った未来が見えたかもしれません。

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