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ヒットの法則:ニッチ市場センサーの法則

今日もご覧いただきありがとうございます。
今日はスズキのハスラーを見ていきたいと思います。
ニッチ商品が市場動向のセンサーの役割をしていたために、ヒット商品を出すことができたケースです。
(トップ画像引用元:https://www.carsensor.net/contents/market/category_1491/_65149.html

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がると思います。

スズキ・ハスラーについて

スズキ・ハスラーは2014年に初代モデルが発売、2020年にモデルチェンジを経て現在も販売されている、軽SUV車です。
軽自動車新車登録ランキングでは、2014年から2022年まで、必ずトップ10に食い込んでいます。ランキングの上位をホンダ・N-BOXやダイハツ・タント、といったスペース重視のモデルが占めている中で、SUVタイプとしてのランキング入りはかなりの高評価だと思います。
ダイハツも軽SUVのタフトを対抗して展開していますが、年間ランキングのトップ10には入ってきません。

モデルチェンジ後も安定した人気を誇る2代目ハスラー
(引用元:https://www.suzuki.co.jp/suzuki_digital_library/1_auto/hustler.html#p2)

先手を打ったハスラー

フリー素材ぱくたそ[ https://www.pakutaso.com ]

では、なぜハスラーがこれほどの人気を得るまでになったのか、今回は特に初代モデルを見ていきたいと思います。
軽SUVハスラーが市場でここまでの覇権を取ったのかは、先手を打ったから、に尽きると思います。
初代ハスラー発売の2014年頃は、SUVの人気が高まっており、同年乗用車販売5位のホンダ・ヴェゼルをはじめとして、日産エクストレイル、ジューク、マツダ・CX-5といったモデルが販売されていました。トヨタも数年後にC-HRやヤリス・クロス、カローラ・クロスといったモデルを投入し、SUVのラインナップを強化しています。
一方で、軽自動車市場を見てみると、パジェロ・ミニなどのSUVタイプのモデルは2013年まで販売終了となっていて、スズキ・ジムニーしかありません。ジムニーは軽SUVとは言え、構造が乗用車とは違う本格タイプなので、乗り心地や燃費といった観点から、普段使いする車としては向いていません。価格も通常の軽自動車より高価格になります。

当時販売されていたジムニー(引用元:https://www.webcartop.jp/2023/02/1043943/)

市場のニーズが高まっているにも関わらず、ライバル不在の状況に目を付け、いち早く導入されたのが、ハスラーです。初代ハスラーは既存車両であるワゴンRをベースにしており、開発スピードも速かったのではないかと思われます。

なぜ、スズキは先手を打てたのか?

スズキが誰もいない市場に先手を打てたのは、なぜでしょうか。
この裏には、先ほどのジムニーの存在が大きいと思われます。

市場動向を捉えるセンサー

3代目ジムニーは1998年から販売されている、ロングモデルなのですが、調べてみると2011年から2013年にかけてわずかではありますが、販売台数が伸びているようです(https://www.4x4espoir.com/hanbai-jimny/)。2014年にハスラーが出てから売上は落ち込みます(その後の大幅な伸びはジムニーのモデルチェンジ後)。
SUV市場の需要をジムニーを通じてスズキが感じ取り、いち早く製品化につなげていた可能性があります。
この、ニッチ商品が市場動向のセンサーの役割をしていたというのが今回の法則です。ニッチ商品だからこそ、市場のマス層ではなく、敏感な層が反応しているのでしょう。

他社にないノウハウの蓄積

市場に対して素早く反応できたことと合わせて、ライバルの追随がなかったこともハスラーのヒットの要因です。

スズキのハスラーのヒットを見て、ライバルであるダイハツは黙っていません。すぐに、ウェイクという対抗モデルを出します。TVCMなど販促も大規模でしたが、不発に終わります。形もハスラーと異なるので、その場のしのぎだったのでしょう。

ダイハツ・ウェイク(引用元:https://kakaku.com/item/K0000713573/)

ウェイク発売の翌年2015年に、ダイハツが用意したのが、キャストというモデルです。三つの個性を持ったラインナップで、そのうちの一つがSUVという位置づけで、登場した時からハスラーと比較されました。ハスラーに比べると丸っこいSUV"風"といった見た目のキャストは、ウェイクよりは売れていたものの、ハスラーには及ばず、2020年に販売を終了します。

ダイハツ・キャスト アクティバ(引用元:https://kakaku.com/item/K0000810335/)

そして、キャストと入れ替える形で、ダイハツが用意したのがタフトです。
ここでやっと、ハスラー対抗モデルを名乗れるような、SUVタイプになります。

ダイハツ・タフト(引用元:https://kakaku.com/item/K0000089770/)

2014年にハスラーが発売され、ライバルのダイハツが本命と言えるタフトを用意するまで6年、3モデルを要しています。真意がわからないのですが、軽自動車の規格でSUVモデルを作るのは難しいのかもしれません。スズキ・ジムニーの歴史は1970年までさかのぼります。長きに渡って、本格SUVを作ってきたスズキだからこそ、ハスラーを素早く作ることができたのかもしれません。

市場ではニッチ商品のジムニーが、マス商品のハスラー誕生のきっかけを生んだというのは、とても興味深いと感じます。市場の中で、うまくニッチ商品を配置していくと、市場のニーズを捉えるセンサーとしての役割を果たしてくれるかもしれません。

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