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しくじり商品研究室:GIOS ウルティモ
今日もご覧いただきありがとうございます。
商品を企画する際に、ヒットに導くのは難しいのですが、反対に失敗要素を極力減らしていくことなら比較的実行しやすいです。
ここでは、失敗した商品の原因を知ることで、失敗要素を減らす参考になればと思います。
(トップ画像引用元:https://www.81496.com/jouhou/cross/gios2010/ultimo.html)
GIOS ウルティモの例
GIOS ウルティモについて
GIOS(ジオス)は、1948年イタリアで設立された自転車メーカーです。イタリアには有名な自転車メーカーが多数あり、その陰に隠れがちですが、手ごろな自転車のラインナップが充実しており、「ジオス・ブルー」の青い自転車、特に「カンターレ」や「アンピーオ」といった15年以上にわたって、今も販売されている自転車は街で見る機会も多いです。
この「カンターレ」は速く走ることができるロードバイクに、ママチャリでも使われるまっすぐなハンドル形状を組み合わせることで、スポーツ自転車の入門に適した「フラットバーロード」という自転車で、ちょうど自転車ブームの高まりと合わせてヒットに繋がります。
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(画像引用元:https://www.qbei.jp/blog/21596)
このカンターレのヒットを受け、GIOS社が上位機種として2008年に発売したのが、今回の「ウルティモ」という自転車です。初心者でも乗りやすいまっすぐなハンドルはそのままに、フレームや使われているパーツをより上級のロードバイクと同様のものにし、走行性能を上げたものでした。
しかし、このウルティモは8年ほどの販売で終了し、姿を消してしまいます。
しくじり理由
ウルティモが失敗した要因は、価格と需要の分布を見誤ったことにあります。
一般的に、商品は、購入する人のニーズと予算に合わせて、安くて性能が低いものから、高くて性能も高いものまで、いくつかのラインアップが用意されます。例えば、トヨタの自動車も安くてコンパクトなヤリスから始まって、ミドルクラスのカムリ、より上位のクラウンと用意され、価格・性能が段田高くなるようになっています。
今回のウルティモも、入門向けのカンターレと、本格的なロードバイクの間を埋めるモデルとして用意され、予算にあわせて、入門向けの自転車から本格的なロードバイクまでがラインナップされました。
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ウルティモはカンターレとロードバイクの間を埋める。
しかし、ここに落とし穴がありました。
商品のラインナップは入門から本格まで連続的に用意された一方で、需要の分布は連続的ではなかったのです。
確かに、性能が良くなれば、価格が上がったフラットバーロードでも需要がありそうですが、実際にはフラットバーロードは入門向けカテゴリーです。スポーツ自転車に興味ある人が、長く続くかわからないけども始めたいという中では、10万円がひとつの予算の壁になっており、そのため、ウルティモは購入候補に入らなかった思われます。また、ハンドル形状が異なるため、本格的なロードバイクが欲しい人にとっても、選択肢にはならないでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1705120642377-yUhHccOmJ7.jpg?width=1200)
ウルティモは初めてスポーツ自転車を買う際の予算の壁で、弾かれてしまう。
なお、GIOS社以外にも、当時いくつかのメーカーが同様の価格帯で高性能なフラットバーロードを販売しておりましたが、今ではいずれもラインナップから消えています(ピナレロ・トレビゾ、ジャイアント・FCR0など)。ブームの中では、ある程度の市場があったものの、ブームの落ち着きと共に、販売数量も減ってしまったのでしょう。
価格と需要の分布は均一ではない
![](https://assets.st-note.com/img/1705122392672-rmiI9HTOtc.jpg?width=1200)
今回も、消費者の心理を把握する重要性を感じる例でした。
ラインナップ展開は、販売店の売場を面で取って購買確率を上げたり、認知を上げて、商品の売上を増やすためには有効な方法です。
しかし、カテゴリーによっては価格と需要の分布が均一でないことに注意して商品を展開する必要があります。
私の経験上、嗜好性が高い商品ほど、価格と需要の分布が均一でなく、あるところに壁がある気がします。嗜好品では、にわか層に付加価値を訴求しても伝わりにくいことを感じたことがあります。
また、自社でのラインナップだけでなく、すでに市場に展開されている商品の隙間を見つけて商品を発売する際にも注意が必要です。
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