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ヒットの手がかり:思い切って割り切る

今日もご覧いただきありがとうございます。商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。今日はホンダの「WR-V」を見ていきたいと思います。(トップ画像引用元:https://www.honda.co.jp/WR-V/?utm_source=gl_kw_shimei&utm_medium=cpc&utm_content=Search1&utm_campaign=reg_bottom_wrv_2312_pcsp&gad_source=1&gclid=CjwKCAjw2dG1BhB4EiwA998cqPhNYNWMlABQm0SMvOG4oxZi1u_tHdQ0Ks1LrubH7a73_jpeyjlgjxoC42AQAvD_BwE

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がればと思います。

ホンダ・WR-Vについて

「WR-V」は、ホンダが2024年3月22日に発売したコンパクトSUVで、特にクラストップレベルの荷室空間や室内の高さを武器としています。トヨタのヤリスや、日産キックス、マツダCX-3、さらにはホンダ自社内のヴェゼルと、競合する車種が多い市場ですが、ホンダによると、発売から約1カ月で受注累計約13,000台となり、月間販売計画の4倍以上の好調な立ち上がりになったとのことです。この「WR-V」は、ヒット商品として日経MJの「2024年上期ヒット番付」の東前頭に選出されています。

四角いデザインで室内の高さ、荷室空間を大きく確保している
(画像引用元:https://www.honda.co.jp/WR-V/webcatalog/design/#styling)

ヒットの手がかり:思い切って割り切る

ホンダ・WR-Vの特徴は、クラストップレベルの荷室空間や室内の高さにあります。このクラスのSUVでの売れ筋はトヨタ・ヤリスクロスですが、WR-Vはヤリスクロスと比べると、全長が11cmほど長く、全高は6cmほど高くなっています。

トヨタ・ヤリスクロス。2024年5月のSUV販売ランキングでは1位の売れ筋SUVの一つ。
(画像引用元:https://toyota.jp/yariscross/?padid=from_yariscross_design_navi_top)

この分のスペースが、荷室や室内に充てられることで、より荷物が乗り、より広い室内に繋がっています。最近は、軽自動車ではホンダ・N-BOXやスズキ・スペーシア、乗用車でもトヨタ・ノア/ボクシーや日産・セレナといった車内空間が広い車の人気があり、WR-Vもこの流れに乗った車であると言えます。
しかし、WR-Vに近いサイズのSUVとして、日産・キックスやマツダ・CX-3が存在しており、荷室空間や室内の高さだけが、WR-Vが売れている理由とは言えません。

日産・キックス。e-POWERに強みを持ち、価格は少し高め。
(画像引用元:https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/kicks/exterior.html?rstid=kicks_2405_top_usp_02#design)

この点において、WR-Vは別の強みを持っており、それが価格です。キックスは最低価格が276万円、CX-3は228万円からとなっていますが、WR-Vは209万円からラインナップされています。
この低価格を支えているのが「思い切った割り切り」です。WR-Vでは、最近の車には珍しく、ハイブリッドモデルの設定がありません。また、SUVでは珍しく、4WDモデルの設定もありません。これにより、開発時に様々なエンジン・駆動方式を想定して設計する必要がないため、開発リソースを節約、コストを削減しています。
装備面でも、パーキングブレーキ(サイドブレーキ)は、最近の車がボタンで操作する電子式のものを採用することが多いのに対し、ひと昔前のレバー式になっています。また、先行車に自動追従運転するクルーズコントロールも一世代前のものと、割り切りがされています。

従来型のレバー式ハンドブレーキを採用し、コストを低減している。
(画像引用元:https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/1546706.html)

その一方で、ハンドルは本革巻きのものを採用し、後席にもエアコンの引き出し口が設定されるなど、コストダウンだけにならないよう、上手くバランスを取っています。WR-Vは、コスパ重視で安くて良いものを選ぶユーザーをターゲットにしており、それに合わせて、装備を検討したのでしょう。
まとめると、WR-Vは割り切った開発・装備により、200万円前半の低価格を実現しつつ、車内空間の広さや一部の必要な装備を高めることで、ライバルよりもコスパの高い商品になっています。

編集後記

今回はいつもと違う感じで、終わりたいと思います。
もともと車は好きで、普段から新しい車はチェックしているのですが、今回のWR-Vは、久しぶりに私の中で印象がない車でした。主に4Pの視点(と言っても、車の場合Placeは系列販売店、PromotionはTVCM中心なので、おもにProductとPriceの視点)で各社の車を比較してみて、車体の大きさと、割り切りによる低価格に行き着きました。印象がないところからだったので、見えてきたはうれしかったです(笑)。
さて、本文中でも紹介したレバー式ハンドブレーキですが、例えば、ドリフト競技の車ではレバー式のハンドブレーキは必須で、スポーツカーはレバー式ハンドブレーキが基本です。私の車はスポーツカーではありませんし、ドリフトもしませんが、購入時にレバー式ハンドブレーキで喜んだ覚えがあります。ターゲットの思考次第では、思い切ったコストカットができることを改めて感じました。そのためにはターゲットの明確な設定が重要になるわけですが・・・
また、経済が伸び悩む日本では、コスパももちろんですが、絶対的な低価格も重視されていると感じます。原価が上がる中で、価格に転嫁されがちですが、思い切ったコストカットでの、低価格対応は、時代的にも必要になりそうです。

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