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ヒットの手がかり:過去のヒットをなぞる

今日もご覧いただきありがとうございます。商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。今日はcado(カドー)の「FOEHN(フェーン) 001」を見ていきたいと思います。(トップ画像引用元:https://cado.com/pages/foehn-001

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、これは違うのでは?など意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がればと思います。

cado・FOEHN 001について

「FOEHN 001」は家電メーカーのcadoが、2023年12月に発売した布団乾燥機です。直径 約5cm × 長さ 約32cmのコンパクトな本体で、使用するときには布団に差し込むだけという手軽さが大きな特徴になっています。
一般販売の前、9月~11月にかけて実施されたクラウドファンディングでは、1億5800万円を超える支援を集め、今年の3月で累計22,000台の出荷を行っています。日経MJの「2024年上期ヒット番付」では、東前頭に選出されている商品です。

布団に差し込むだけの手軽さと片手でも持てるコンパクトさが特徴。
(画像引用元:https://cado.com/pages/foehn-001?gad_source=1&gclid=CjwKCAjwnei0BhB-EiwAA2xuBoePtAL_W4oTFg4vUOwfoOl0bdPJwLL7mXt2UkHsybtMoMVixFvK9hoCeGsQAvD_BwE)

ヒットの手がかり:過去のヒットをなぞる

前述の通り、「FOEHN 001」はコンパクトな本体で、使用するときには布団に差し込むだけという手軽さが大きな特徴になっています。
実は、「コンパクト」「布団に差し込むだけ」というアイデアは、決して新しいものではありません。まず「布団に差し込むだけ」という布団乾燥機は2015年に象印が発売しています。当時の布団乾燥機はマット(乾燥用の大きな袋)が付属しており、マットをあらかじめ、布団の中に敷く必要がありましたが、象印の「スマートドライ」はマットなし、布団に差し込むだけで使える手軽な商品として人気になりました。

象印のスマートドライ。布団に差し込むだけの手軽さで人気となった。
(画像引用元:https://store.shopping.yahoo.co.jp/nikurasu/350221647.html#&gid=itemImage&pid=2)

しかし、その後、布団乾燥機のシェアを伸ばしたのは新しく参入したアイリスオーヤマでした。この時のアイリスオーヤマの武器が「コンパクト」です。当時大手メーカーが展開していた商品は、ノズルやマットの収納スペースを本体に持っていたため、比較的大きいものが多く、例えば先ほどの象印の「スマートドライ」は幅28cm×奥行き13cm×高さ35cm、パナソニックの一例で幅27cm×奥行き16cm×高さ34cm、対してアイリスオーヤマのカラリエシリーズの一例で幅16cm×奥行13cm×高さ36cmと幅、奥行きで一回り小さく、ホースも本体から外部に出ているため、高さも実際は小さく感じられます。

象印のスマートドライとアイリスオーヤマのカラリエ。
(画像引用元:https://kakakumag.com/seikatsu-kaden/?id=4756)

このように「布団に差し込むだけ」「コンパクト」は布団乾燥機のヒットの流れであり、「FOEHN 001」は単純になぞっただけとも言えます。「布団に差し込むだけ」は労力を減らす、「コンパクト」は布団乾燥機のみならず、様々な商品で価値とされます。これらが本質的な価値だからこそ、過去のヒットの事例をなぞることで、成功率を高めた商品という見方です。
もちろん、単なる二番煎じではなく、価値を高める努力もしている点は忘れてはいけません。例えば、コンパクト化においては、最近ドライヤーなど小さめの家電での使用機会が増えてきたBLDCモーターを使うことで、既存の製品よりもさらに小型にしており、技術の進歩を取り入れて価値を高めています。

製品だけでなく、4Pで考える

ただし、「FOEHN 001」のヒット理由が既存の商品よりもコンパクトで手間がないからだけかというと、そうではないと考えます。
まず、価格においては22,000円という価格で、大手メーカーの高めの布団乾燥機と近い価格設定がされています。新しい技術を取り入れて、価格が高くなることはよくありますが、この点では「FOEHN 001」は頑張っている方だと思います。

小型のモーターなど、これまでの布団乾燥機では使われなかった技術を搭載。
(画像引用元:https://store.shopping.yahoo.co.jp/e-alamode/4450-3100.html#&gid=itemImage&pid=7)

次に販路です。コンパクトさを武器に布団乾燥機のシェアを伸ばしたアイリスオーヤマですが、今も店頭では大きなシェアを持っています。調べてみると「FOEHN 001」は量販店の展開はあるものの、取り寄せになっている店舗も多々見受けられ、ネット通販を重視した展開をしているようです。布団乾燥機は単価が低いので、店頭で店員が積極的に接客をすることはなく、商品の価値を伝えるにはあまり適していません。この点、ネットであれば、コンテンツさえ用意すれば、大半のページで商品の価値を伝えることができます。ターゲットの年齢や、商品価値訴求の重要性を考えた結果、ネット通販を中心にしているのだと思われます。
販促についても、クラウドファンディングやプレスリリースを使った話題つくりをするなど、他の布団乾燥機とは異なる動きを取っています。

また、プレスリリースでは、トコジラミの被害増加が話題となったタイミングで、ダニ対策コースがトコジラミの対策効果があることを発表しており、積極的な姿勢が感じられます。小さな子供がいる若年層に刺さりそうです。

このように、製品でヒットの確率が上がるトレースをしながら、4P全体での整合性が取れるような展開を行っていることが、ヒットにつながっているのだと思います。

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