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茨城県の水戸市の、とある旅行会社を紹介します。

アーストラベル水戸株式会社。
代表取締役は、尾崎精彦(おざききよひこ)さん。

尾崎さんは、代々続くこの会社を
跡取り息子として承継した…わけではありません。
「第三者承継」として、引き継いだ方です。

元々は「個人事業主」として
アーストラベルに関わっていた方。
そこに「会社を承継しないか」という話が
持ち上がってきました。

周りには経営者の仲間が多い。
彼らに対して憧れがあった。
尾崎さんは、第三者承継を受ける決意をしました。

しかし、世はまさにコロナ禍に…。
コロナ禍と旅行会社。
キャンセルの嵐…?
うん、どう考えても「逆風」としか
思われませんよね。

ですが尾崎さんには、このコロナ禍の逆風を
追い風としてとらえる
プラス思考
が渦巻いていたのです。

本記事では、尾崎さんの歩みについて、
その概要を書いてみます。

コロナ禍と言えばステイホーム。
家にいる。
外に出る旅行とは正反対です。

しかし、尾崎さんは考える。

…これはピンチでもあるが、
新たな旅行業というものを
定義するチャンスではないか?

会社がある茨城県は、
首都圏からも気軽に来ることができる
距離にあります。

それは「弱み」でもある。
なぜなら、宿泊を伴う旅行には
茨城県は弱いとされてきました。
首都圏からは、日帰りで行って帰れるから。
温泉が豊富な栃木県や群馬県に比べて、
その面からはどうしても弱点がある。

しかし「強み」でもあります。
ぱっと来てその日のうちに帰れる、
ということは、身近に旅をするには
もってこいです。
ハードルが低いのです。

「すぐに来てもらって、
茨城県の魅力を『体験』してもらって、
何かを得て帰ってもらうには
茨城県はとても良い場所ではないか?」

尾崎さんの脳裏に、
ぴんときたアイディアがあります。
それが「教育旅行」という考えでした。

…従来、学校における「修学旅行」は、
宿泊を伴う、比較的長距離を旅する
ものだったと思います。
京都や奈良は定番ですよね。

しかしコロナ禍では
どうしてもそのような旅行がしづらい。
安・近・短。
安くて近くて短い。
そのような場所が好まれる。

学校の先生たちも、
「何かあったら…」と考えると
二の足を踏むことが多い。
ですが、比較的自然が豊かで、
安くて近くて短い移動距離で済む
茨城県への旅ならば、実は
ニーズが高いのではないでしょうか?

加えて、尾崎さんは
従来の修学旅行のイメージから
「選択」と「体験」とともなう
旅行へと変えようとしました。

ここで、読者の皆様に質問です。
あなたの頃の「修学旅行」はどんな旅でしたか?

「ええっと、金閣とか奈良の大仏とか
有名な場所を巡って、
バスガイドさんが案内してくれて、
それにぞろぞろとついていって、
ちょっとだけ自由行動があって…」

そんなイメージではないですか?

アーストラベル水戸の学校向け教育旅行は
それとは真逆です。

例えば生徒は、どこに行くのか、
何を体験し調べるのか、
それを「選択」します。
個人の興味は千差万別。
押し付けではなく、自ら選択するものなら、
自ら学ぶ意欲も生まれます。

一斉に同じところに向かう、という概念を捨て、
例えばあるツアーでは、
県内の違う目的地に最初からバスを分けて、
少人数ずつで向かったそうです。

また、茨城県と言えば農業王国ですから、
つくばの先端技術を取り入れた
最新鋭の工場を見学したり、
水戸の南にある「涸沼」(ひぬま)で
いかだに乗りながら湖のしじみ漁を
体験したりもした。

このような会社の「マイクロツーリズム」を
紹介した新聞記事から、一部引用しましょう。

(ここから引用)

『会社は、近場をめぐる
「マイクロツーリズム」の需要の発掘に注力し、
対象も学校関連にしぼることを決めた。

ただ、これまで学校から請け負ったのは、
日光や京都、東京などの
人気の観光地への修学旅行が多かった。
しかも、感染拡大で、
多くの学校で行事が中止になっていた。

売り上げは大きく落ち込んだ。

そこで、重点を置いたのが
「体験型」の学習需要の掘り起こしだ。
探求型の学習を重視する
教育現場のニーズを意識した。

茨城には全国的に
有名な観光地こそ少ないものの、
農漁業を中心とした生産現場が豊富で、
最先端の科学技術の研究者も多い。

役所の紹介や知人のつてを頼りに
構想を説くうち、
協力してくれる人が徐々に広がった。
県内外の学校に、新たなツアーを提案して回った。
21年に入ると、地元の学校の
宿泊学習などの仕事が増えてきた。

つくば市では、先端技術を取り入れた
農業を紹介することに力を入れる。
農産物の遺伝子研究の現状を学んだり、
最新鋭の植物工場を見学したりする。
人工衛星の画像やドローンを
農業に生かそうと
挑戦する人の説明を聞く機会もあった。

ラムサール条約に登録されている
涸沼(ひぬま)では、
いかだに乗りながら湖の漁を学ぶ。
五百円玉ほどの大きさのシジミに驚き、
その場で作ったみそ汁を
おかわりする生徒もいる。

評判は教員間の口コミで広がり、
最近は東京都内の
私立校からの引き合いもある。

今年(2022年)の売り上げは、
10月の段階でコロナ禍前の19年を上回った。』

(引用終わり)

最後に、まとめます。

選択と集中、絞り。
昔から続いているサービスに安住することなく、
いま求められているサービスを企画し、
提案していく。

選択。体験。探究学習。キャリア。
かけがえのない経験が
生徒たちの将来の進路に
深く影響を及ぼしていく…。

いま求められているものを踏まえて
新たな旅行業、教育旅行を提案していく
旅行会社なのです。

都内の人だけではなく、
茨城県内でも、意外と
茨城県の魅力は知られていないもの。
自動車をまだ運転できない
児童・生徒たちならなおさらですよね。

さて、読者の皆様の地域では、
このようなアイディアにあふれた旅行会社は
ありますでしょうか?

読者の皆様の地域でこのような
旅行を企画提案するとしたら、
どこを「体験」させたいですか?

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