開放と閉鎖、天日干しとぬか漬け
魚の内臓などを取って開いて処理して、
日光に直接当てて「天日干し」にするのと、
ぬか床などに素材を入れ密封して、
暗室にて寝かせて「ぬか漬け」にするのと、
どちらも食品を「加工」するのは
変わりはありません。プロセスが違うだけ。
本記事では
に例えて、主に日本の都市について
書いてみたいと思います。
大きな違いは「見えるか(見える化)」
「見えないか(見えない化)」の違い。
見せる化、見せない化の違いと言ってもいい。
天日干しは、誰の目にも明らかです。逆に
ぬか漬けは、漬け人にしか、中が見えない。
オープンとクローズ。
風通しがいいのと、あえて風を遮断する違い。
…これは、どちらが良いとか悪いとかの
優劣を競うものではないと思います。
そもそもの前提が、違う。
しかし、どちらも食品加工です。
しかしこれを都市論に当てはめると、
あくまで一般的には、
という傾向がある、と言えると思います。
中世ドイツのことわざの一つに、
『都市の空気は自由にする』がある。
これにはいわゆる「匿名性」が
大きく作用しているように思われます。
都会は人が多いがゆえに、
自分のことをよく知らない人がほとんど。
つまり、自分のことはよく知られていない。
自分も、他人のことはよく知らない。
満員電車に乗っている時、
乗客のことを全員知っている、
ということは、あり得ない…。
(よほどのリサーチパーソンなら別ですが)
一方で、地方は人が少ないがゆえに、
自分のことをよく知っている人の割合が多い。
「どこそこの〇〇ちゃんは
東京に行って、去年、戻ってきたのよね!」
「あそこの〇〇さんは
JAの〇〇支部にお勤めなんですよね?」
そもそも、車社会の傾向がある。
自分の車両ナンバーが近所に知られており、
昨日、パチスロに行ったことが
知られている、かもしれない。
何かとオフラインの会合があって、
直接顔を合わせる機会も多い…。
これは、極端な描写です。
過密地域と過疎地域を対比的に、
戯画的に書いてみたものです。
…しかしですね、これはいささか
プロトタイプの描写に過ぎないのでは?
都会の中でもウェットなところもあれば、
地方の中でもドライなところもある。
都会に住んでいても、
みんな顔見知り!という人もいれば、
地方に住んでいても、
誰ともつきあわずの孤独のキャリア、
という人もいる。
それは、その都市や地域の
歴史と地理によっても変わるもの。
また、全般的な環境ではなく、
個人のスタイルや性格によっても、違う。
具体的な都市別に、考えてみましょうか。
…もし私がそう聞かれたとすれば、
東京、横浜、神戸、大阪、福岡、
このあたりの都市は、
とても開放的なイメージがあります。
東京は、大都会。東京砂漠、ドライ!
横浜は港町であり、神戸も港町で
「オープン」な開かれたイメージが強い。
(海からの風も強そうです)
大阪は「天下の台所」の歴史がある。
全国各地から物産が集まれば、
取引がさかんになり、人にもしゃべりにも
みんな慣れているだろう(ウェット気味?)。
福岡は古代から、半島や大陸との扉です。
道行く人がみな「天日干しスタイル」!
なんだかドラマの舞台のような、
芸能人のスカウトがいそうな、
そんなイメージがあるのです。
もちろん、光があれば闇もあるでしょう。
アンダーグラウンドな場所や
ストリートファイトな場所もありそう…。
その一方、各地の地方都市であったり、
たとえ大都会であっても、
京都や名古屋には、少し
閉鎖的なイメージが、私にはあります。
閉鎖的、という言葉がどぎついのなら、
「独特の文化を持つ」イメージが強い。
何しろ京都は「千年(以上)の都」です。
歴史が長い。
一代や二代、そこに住んだところで、
「地元の人」にはなれないイメージがある。
名古屋は「独立王国」のイメージ。
東京とも大阪とも、違う。独特の文化!
「豪華な結婚式」や「天むす」などの
イメージがそうさせるのでしょうか?
各地の地方都市も、そうですね。
海を隔てた「島」なども、そう。
「古都」「昔からの城下町」「離島」など
歴史ある地域には、独特のカラーがありそう。
何代にもわたってそこに住んでいる人が多く、
伝統を受け継いでいる…。
ましてや地方、農村、過疎地域まで
考えてみれば、人が少ない分、
代々住んでいる人の割合が、高い。
となれば、伝統、因習、奇祭、暗黙の了解、
そういうものも残りやすいのでは?
横溝正史の描く「八つ墓村」「犬神家の一族」
あそこまで極端ではないにしても、
何らかの「しきたり」がありそう…。
言わば「ぬか漬けスタイル」です。
(京都には「西京漬け」もあります)
じっくりと何年にもわたり、熟成されている。
それを誇りに思っているケースもあるでしょう。
誤解を招かないように繰り返しますが、
どちらが良い悪いでは、ない。
どちらにも、味があるんです。
無数にグラデーションがある、とも言いたい。
そもそもどこだろうが、住んでいる
集団や個人は、千差万別ですし。
というか、そもそも日本列島が「離島」で、
ガラパゴス化しがちで、
世界から見れば、基本、ぬか漬けですから…。
また、加工をあまりしない
素材そのもの、活け作りやお刺身が
好きな方もいますし…。
最後に、まとめます。
本記事では「天日干し」「ぬか漬け」の
例えを使って、
主に日本の都市について書いてみました。
では、と提案するなら。
現在は、情報が遮断、あるいは
一部しか流通していなかった時代ではない。
このSNS全盛の時代を迎え、
◆どう情報を加工し、発信するのか
◆どう受信して、どう解釈するのか
それがとても重要になっていきますよね。
そんなセンシティブな文言を
「見える化」した地域が、SNS上で
批判を浴びたりしましたけれども、
「本来、秘匿されている
ぬか漬けのふたをわざわざ事前に開けて、
こうなっていますよ、と
事前に公開してくれた親切な地域」のように、
私には思えるのです。
ぬか漬けは、空気を遮断する食品加工。
風が吹いたら、本来、さしさわりがある。
それをあえて開け、見える化してくれた。
壺の中に入ってから、こんな味はいやだ、
と言っても遅いのですから…。
なお、一方の天日干しも、
いくらオープンでドライに見えても、
自然と「風味」がついていることを
書き添えておきたい、と思います。
さて、読者の皆様におかれましては、
どんな風味がついていますか?
どう自分を「加工」してきましたか?
皆様の家族や地域、所属する組織は、
天日干しスタイル? ぬか漬けスタイル?
ローカルルールは、ありますか?
入る前に、どこまで見える化されていますか?