自分の後ろには誰もいない
日立製作所を中心とする日立グループと言えば
トヨタに並ぶ日本の大企業グループのひとつ。
「この木 なんの木 気になる木」のCMでも有名。
ですがこの日立、リーマンショック後に
もの凄い巨額の赤字を抱えて、
グループ存亡の危機にまで陥った…というのは
いま(2022年)では、読者の皆様の記憶からは
薄れているかもしれません。
何しろ、13年ほども前のことです。
2009年3月期の決算。
「7873億円」もの巨額の赤字!!
「もう日立も終わりか…」とまで言われました。
そんな時、ある経営者が子会社から呼び戻され、
再生への陣頭指揮を執ることになります。
川村隆さんです。
本記事では、ラストマンと呼ばれた彼の業績と、
その「V字回復」への道のりを紹介してみます。
川村さんは1939年の生まれ。
東京大学工学部に進学し、
1962年に日立製作所に入社します。
発電所の仕事、工場長などを歴任して、
1995年に常務、1999年には副社長に就任。
その後2003年には、いったん退任して、
子会社の会長などを務めていました。
そんな折、本社はリーマンショックの
影響をもろにかぶり、業績不振に…。
川村さんに、社長就任の白羽の矢が立ったのです。
(ここより引用)
(引用終わり)
こうして川村さんは、本社再生への陣頭指揮を
執ることを決意します。
さあ、どうしたのか?
…彼がまず着手したのが、
「社員の意識改革、意識の共有」でした。
(ここより引用)
(引用終わり)
自分の仕事が何につながるのか、
何のために働いているのか、という
目的意識を持たせる。その上で、
「自分の携わる事業の採算が悪くても
誰かが助けてくれるだろう」という
どんぶり勘定を改めさせるため、
各部門を疑似会社化して、責任を持たせる…。
こうして社内を引き締めた上で、
川村さんは大胆な取捨選択の施策、
事業の「絞りと集中」を行います。
もちろんこれには「外」に出ていた経験が
おおいに役立ったことでしょう。
日立グループは、総合電機メーカー。
総花的に、色んな事業を行っていました。
しかし彼は不採算事業、不採算会社を手放し、
鉄道システムなどの『社会インフラ』と、
AI(人工知能)などの最先端の『IT分野』に
経営資源を集中させていったのです。
これが、成功した。
経済アナリストの森永卓郎さんは、
「そこまでやるか!」と驚いた、と言います。
(ここから引用)
(引用終わり)
もちろん裏では「捨てられる」事業や部門から、
激烈な反対があったことでしょう。
しかし彼はひるまずに、決然と実行していった。
…こうした川村さんの施策を精神的に支えたのが
「ラストマン」の精神。
1999年、副社長時代のことです。
彼は北海道出張のため飛行機に乗った際、
「全日空61便ハイジャック事件」に遭遇します。
機長が殺害され、犯人の未熟な運転で絶体絶命!
「墜落する!」と川村さんは覚悟しました。
その時、彼の命を救ったのは、
偶然乗り合わせた非番のパイロットたちでした。
彼らはハイジャックの際のマニュアル、
「犯人の言うことを聞く」に違反してまで
自ら考え行動、犯人から実力行使で操縦桿を奪還、
間一髪で、緊急着陸に成功したのでした。
飛行機が最も低くなった時は、
高度200mという超低空飛行状態…。
もし仮にそのまま降下していたら、
八王子市の住宅街へと墜落していたそうです。
そうなったら、乗員乗客のみならず、
地上にいた多数の市民も巻き添えとなり、
史上最悪の事故になった可能性もあった。
無事に生還できた川村さんは、こう思いました。
このハイジャックの経験が、
再生への施策において
彼自身を「ラストマン」にし、
社内にも「ラストマン」たちを増やしていく
一つの土台になったのだ、と思われます。
こうして、仕事や事業に責任を持ち、
しっかりと「決断」する体制になった日立は、
見事、V字回復を果たしていくのです。
言わば川村さんは、操縦桿をしっかりと握り、
日立グループという飛行機を墜落させることなく、
再び上昇気流に乗せたのでした。
最後にまとめます。
そういう考えが、ビジネス上においては
一番危険なように思われます。
「ラストマン」(最終責任者)の精神を持って、
やるべきことをやる。しっかり考え、決断する。
そういう姿勢が、大事ではないか?
それは、日立グループのような
巨大企業の舵取りにおいてもそうですし、
個人のキャリアのような一個人の選択においても、
そうではないでしょうか?
川村さんは『ザ・ラストマン
日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」』
という本も出されています。
興味のある方はぜひ、ご一読を!
※本記事は以前に書いた記事の
リライトです↓
『日立のラストマン』
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