空気を読む人、読まぬ人
と言いたくなるような、空気を読まない人、
いますよね。組織には一人くらいは。
普段から気を遣って、空気を読んで、
滞りなく予定調和で
済まそうとしている人にとっては、
天敵というか、ムカッとする存在というか。
ただし「すべてのケース」において、
空気を読むからいい、
読まないから悪い、という単純な話では
ないのが、仕事や人生の難しいところで。
有名な話があります。
深刻な事故、重大インシデントが
起きそうな時には、
「空気を読む」人こそが危機を助長する、
という事例です。
2017年12月11日の話。
博多発、東京行きの新幹線「のぞみ34号」。
台車になんと、十四センチもの亀裂が
入ったまま走行していて、
あと三センチほど亀裂が進んでいれば、
完全に破断していた、という状況でした。
これは、いきなり亀裂が入った、
というわけではありません。
かなり早くから「焦げたような匂い」や、
「モヤ」「異音」が確認されていました。
東京の総合指令所にも、報告されていた。
しかし、車両点検がされなかった。
そのまま、運行が継続された。
一歩間違えれば、悲惨な事故が起きていた。
なのになぜ、点検がされずに、
そのまま運行されてしまったのか?
もちろん、様々な要因はあるとは思いますが、
一言で言えば、みんながみんな、
「空気を読んでいたから」と言えます。
以下に、その「匂い」「異音」について
当時の車両スタッフたちが
どのような対応をしようとしていたのか、
その聴き取った内容を、
報告記事から引用してみます。
(ここから引用)
(引用終わり)
…電車の運行というものは、
とても難しいものです。
日本では、一分一秒狂いなく
駅に着くのが当たり前、とされています。
遅延したら、乗客たちからクレームが来る。
安直に止めて、点検するのはよろしくない。
そんな予定調和の「空気を読んだ」判断が、
「何か違和感はあるんだけれど
電車を停めて点検して何かも無かったら
経済的な損害を与えてしまう」という判断に
結びついて、そのまま走行させてしまった…。
結果から言えば、これ、とても問題ですよね。
あと三センチ、亀裂が進んでいれば、
大事故が起き、何人もの人が死傷していた。
ただしこのスタッフたちも、
「判断を仰いだと思ったら逆に判断を求められる」
「誰も責任を持って判断ができない」
そういう状況に陥っていました。
一概に、誰が悪い、という評価もできません。
しかしこの「チグハグなやりとり」
「無責任な、なあなあ体制」が続いていく中で、
問題が先送りされていき、亀裂がどんどん
広がっていったのも、また事実です。
「空気を読む人」こそが、危機を生んだ。
まとめていきましょう。
空気を「読まない」人。
自分の論理で「正しい」と思えば
何人が相手でも突き進む「ロジカルモンスター」。
こういう人は、ふだんは、鼻つまみ者。
空気を読まずぶちこわして予定調和を乱します。
しかし、重大な事故や危機が起きそうな時、
そういう人がいさえすれば、防げることもある。
空気を読み過ぎる人は、危機管理には向かない。
時には独断専行、己の論理と勘を信じて
行動できる、そういう「空気を読まない人」
のほうが、危機管理には向くこともあります。
あくまで、時には、ですが。
読者の皆様の組織(団体)ではいかがですか?
…こんなことになっていませんか?
責任を取らない、
言い出したらその言い出しっぺが責任を
取らされるので、誰も言い出さない。
「亀裂」を無視している。
組織に、そんな危機が忍び寄ってはいませんか?
「空気」を壊されること、
「いつも」と違うことをさせられるのは、
嫌なものです。特に空気を読んでいる人には。
だからといって、本質的な亀裂を
見てみぬふりをして先延ばしをしていると、
いつかは、重大インシデントが発生する、
みんなが死傷する、かもしれません。
そう言われそうな、空気をあえて読まない発言、
行動、見直す勇気、そういうことができるのも、
また、そういう組織にしておくのも、
「時と状況、部署の業務と責任」を
検討した上で大事なことではないか…。
そんなお話でした。
よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!