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矯めつ眇めつの時代、と書くと
なんのこっちゃ?となりますが、
「ためつすがめつ」と読みます。

本記事は、この言葉から始めましょう。

辞書を引くと(というかググると)、
「いろいろな角度や視点からよく見る様子」
という意味が出てきます。
一言で言えば「多角的検討」です。

…この精神、姿勢、
情報爆発と言われる現代においては、
本当に大事だ、と思うんですよね。

情報というものは、
ある事実あるいは虚構を、
情報の出し手が主観にのっとって
トリミングし取捨選択し強調して
味付けした上で出しているもの
です。

そしてその情報が、
「見るからにうさんくさい」場合には
まだわかりやすいのですが、

「一見して無味無臭」とか「おいしそう」と
思うこともあるので、注意が必要。

ほら、コンビニの食べ物とかを
思い浮かべてみてください。
成分表示シールをじっくり見てみると、
「添加物的なもの」がずらずらっと
書かれているではありませんか。

でも、いちいち全部それを熟読してから
買う人は少数派のように思います。
「ぱっと見でおいしそうか」
「良いイメージ」をいかにつけるかが、
選ばれるためには大事なのです。
それは、本やCDなどの「ジャケ買い」にも
共通する心情かと思います。

情報も、同じ。

私なんかも記事を書くときは
つい「題名」と「1行目」に力を入れて、
読んでいただけるように注力しています。
これも、一種のトリミングと取捨選択と強調
情報自体に味をつける、味がついているのは
避けきれない、そういうものなのです。

で、ためつすがめつ、に戻るのですが。

ためる=矯めるは「じっと見つめる」。
すがめる=眇めるは「目を細める」。
ここでは、そんな意味になります。

すなわち、「ぱっと見」だけではなく、

「裏読み」「深読み」してみたり
「ある一点に焦点を合わす」ことしてみたり
そういうことを、する。
多角的に何かを見る、これが
矯めつ眇めつ(ためつすがめつ)なのです。

(余談ですが、「矯める」という言葉には
『角を矯めて牛を殺す』ということわざが
ありますけれども、
こちらの「矯める」とは「矯正する」の意味。
「矯めつ眇めつ」の「矯める」(じっと見る)
とはちょっと意味が違うので、ご注意を)

では、と続けます。
なぜ、ためつすがめつ、が大事なのか?

言うまでもなく現代では「短文」、
「ワンフレーズ・ポリティックス」

横行しているからです。

いや、とてもよくわかりますよ。
忙しい現代人、読者の皆様にとって、
じっくりと何かを吟味する時間を取るのは
なかなかに難しいことですから。
だから、言い切るんです、一言で。
だから、繰り返すんです、何度も。

私も記事を書く時には、何とか一言で
ビビットに、印象に残るように
見出しをつけようと悩むものです。

ですが、それはあくまで
「情報の出し手の都合」、悪く言えば
「撒き餌」のようなものですよね。

「その餌だけに食いつくだけで
中身を吟味しない」、というのは
情報の「受け手」としては
いささか短絡的であるように思うのです。
一発フィッシング、釣られるようなもの。

…かくいう私も、ニュースなどで、
「タイトルホイホイ」によく引っかかります。
思わずクリック、面白くない記事を
読んでしまうことも、多々あります。
自戒を込めて。

でも情報の出し手に「ホイホイしないで!」と
いうのは、お門違いだとも思うんですよね。
なぜなら、情報の出し手側からすれば、
目につかせること、興味を持ってもらうこと、
これが狙いで、あえてやっているのですから。
「何か問題でも?」と言われるのが、関の山。
パワーワード化を狙う、ホイホイ撒き餌をまくのは、
「情報」が持っている宿命、持病とも言える。


だからこそ、情報の「受け手側」の備えが重要。

情報を読んだり解釈したりする側こそが、
「ためつすがめつ」の精神を
忘れないようにするべきなんです。
ワンフレーズに踊らされないように…。

ワンフレーズ・ポリティックスの名人、
小泉純一郎元首相は、
まさに天才、人を踊らせる魔術師、でしたよね。
本当に、凄かった。凄まじい使い手だった。

「感動したッ!」
「自民党をブッ壊すッ!」
「郵政民営化反対は抵抗勢力ッ!」…

繰り返しますが、情報の出し手、ではなく
情報の受け手側の問題です。

そのフレーズに酔う前に一息入れて、
「いろいろな角度や視点からよく見る様子」
ができるかどうか。

「で、何にどう感動したの?」
「で、ここで言う自民党って何? 旧田中派?」
「で、なぜ郵政民営化反対が、抵抗勢力なの?」

と、ツッコミ・裏読み・深読みができるか。

情報爆発社会、ちょっと怖い面があります。
パワーワード、印象的な一言は
すぐに拡散しがち。

拡散する中で、中身でなくタイトルだけ、
酔わせるアルコール分だけが浮遊していく。
何、どう、いつ、なぜ、などの
5W1Hが霧散して、独り歩きする。
また拡散させる側も「ハッシュタグ」をつけて
独り歩きをさせようとする…。

幕末の「尊王攘夷」のスローガンと同じです。

大事なことは、尊王とは? 攘夷とは?と
「ためつすがめつ」
5W1Hを吟味していくことなのに、

「ソンノージョーイ!」と呪文のように唱えて
無思考で外国人を斬り殺す人もいた。
まるでJOY、人斬りを楽しむ人までいた…。

最後に、まとめます。

情報を浴びるように受ける私たちは、
限られた時間で、多角的に
情報を、ものごとを、咀嚼する必要がある。

わんこそば状態でホイホイと
情報のおそばをひっきりなしに食べながらも
何とか咀嚼する必要があるのです。

その時に「ためつすがめつの精神」を
持っているかどうかで、
「効率よく」咀嚼できるかどうかが
違う
のではないでしょうか?

リンクトインなどの長文SNSを
活用している読者の皆様は、

Twitterなどの短文SNS「だけ」を
使っている人に比べて、
ためつすがめつできる機会が
多いのではないか。

私も、皆様の投稿やコメントにより、
「たくさんの角度」を得られています。
ありがとうございます。

JOYしながら活用したいと思いますので、
ぜひ引き続き、宜しくお願い申し上げます。

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