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ジャンプ歴史廻戦 ~続くか、終わるか?~

『少年に生き方を示す情報誌であること』

週刊少年ジャンプ最盛期の編集長である
堀江信彦さんは、ジャンプの王道とは何か?
という問いにこう答えたそうです。

◆友情・努力・勝利

「ジャンプの三原則」は、
よくこのように表現されます。

しかしこの三原則は、
公式に掲げられたものではないそうです。
そもそも、漫画家も編集者も千差万別
たくさんいるわけですので、
『この3つこそがジャンプだ!』という人も、
『あえて原則を外すぞ!』という人も
いるはずですよね。

多種多彩な才能を持つ漫画家と編集者が
ぶつかり合い、せめぎ合って、
多種多彩な作品を生み出してきた週刊誌…。
漫画史に残る作品も、たくさん
この雑誌を通して生まれていきました。

1949年創刊の『おもしろブック』が源流。
1959年に『少年ブック』に改題されます。
赤塚不二夫さん、手塚治虫さん、
横山光輝さんなど、そうそうたる漫画家が
作品を寄せていたそうです。

この少年ブックの流れから、
ジャンプは1968年に創刊されます。
後に2代目編集長となる
角南攻(すなみおさむ)さんが、
「ホップ・ステップ・ジャンプ」にかけて
命名した、とも言われています。

本記事では、無数にある
週刊少年ジャンプの作品の中から、
3つの漫画を取り上げます。
時代背景の変遷、そして
「連載継続か完結か」について
考察していきましょう。

まず1つ目の作品。
1970年代のジャンプを牽引した
有名な漫画に、本宮ひろ志さんの
『男一匹ガキ大将』があります。

ガキ大将、戸川万吉が主人公。
日本中の不良を従えて総番になるお話。
戦いに勝ちながら、どんどん子分を増やし、
ついには「天下一」になるストーリーです。

この頃の日本社会の経済は、好調でした。
高度経済成長は終わったけれども、
安定成長の時代に入っています。
出世、トップを取る上がりを目指せた時代…。
そんな社会背景もあったのでしょう。

もっとも本宮ひろ志さんは
「日本一のガキ大将」になった時点で
連載を終わらせようとしたそうです。
しかし、編集部がそれを許さずに
無理やり続けさせた…
という経緯があります。

1970年代と言えばオイルショック、
「石油危機」で石油価格が高騰した時代。
万吉が不良を引き連れて
「中東に石油を買い付けに行く」
という描写も作中にありました。

さて、時代は下ります。2つ目。

1984年、鳥山明さんの
『ドラゴンボール(DRAGON BALL)』
連載が開始されます。
世の中が、バブル経済へと向かう頃です。

1995年の最終回まで人気作品であり続けた!
…しかし、実は連載当初に、
人気が低迷したこともあったそうです。
そこで『強くなりたい』という主人公、
孫悟空の想いを元に路線を変更。
亀仙人、クリリンとの修行をベースにすると
人気が回復していきました。

有名な『天下一武道会』
そんな中で生まれたそうです。

亀仙人、天津飯、マジュニアたちとの
バトルを通して、人気が爆発していく。
地球から宇宙へと舞台は移っていき、
ベジータやフリーザまで出てくると、
もはや作者ひとりの意向では
連載がやめられないほどのドル箱漫画に…。

強さのインフレも止まりません。
敵の『戦闘力』もどんどん上がっていく。
スカウターが爆発するほどです。

そんな作品なので、1995年の連載終了時には
大騒動が予想されました。
「関連企業の株価下落」などの影響を
最大限考慮し、周到に根回しをして、
ようやく連載を終了することができた…。

時は折りしも、不況の真っただ中。
阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件など
世の中を揺るがす出来事が頻発した年。
そんな中で超人気漫画をやめるのも、
まさに死活問題だったのでしょう。


1990年代は、バブル経済が崩壊し、
世の中が変わろうとして
もがき苦しんでいた時期です。
傷みを味わいながら
スーパーサイヤ人に変わる人もいれば、
変わらずに今までのやり方に
固執する人や企業も多かった時期と言えます。

…『ドラゴンボール』の連載終了は、
どこか「今までの形態に固執する経営」と
「変わろうとする経営」とのせめぎあいに
通じるところはないでしょうか?

「もうちょっとだけ続くんじゃ」

それを繰り返し、そのおかげでもちろん
フリーザやセル、魔人ブウなどの
さらなる強敵も生まれていきましたけれども、
どこか「まだ続けるのか…」という
戦闘の悲痛さも垣間見える
のです。

さらに時代は下ります。3つ目です。

2016~2020年には、
吾峠呼世晴さんの『鬼滅の刃』
連載されています。

社会現象にまでなった映画のメガヒット!
アニメ版が始まる際には
その都度ニュースになるほどの快進撃!

…しかし、それよりも特筆すべきは何か?

ここまでの超絶人気作品を、
作者が望む切りのいいタイミングで
「スパッと終わらせた」ことです。

まるで、日輪刀でスパッと
鬼の首を斬るかのように…。

その裏で壮絶な調整があったことは、
私にも容易に想像できます。
人気作品が本誌に掲載されているかどうかで
その号の売上は段違いですから…。
しかし、作者個人の意思を優先した。
完結させたんです。
「もうちょっとだけ続ける」ことも
できたはずなのですが、
本編はバサッと完結した。

…これはどこか、この『個の時代』
反映しているのではないでしょうか?

そう言えば、主人公の炭治郎も
「天下一」は目指していませんでした。
ただただ、妹を人間に戻して、
平穏に暮らしたいだけだった…。


その望みが達成された時、
この物語も一段落したのです。
『男一匹ガキ大将』や
『ドラゴンボール』とは
明らかに異なる終わり方。
私はここに、それぞれの時代背景を
感じずにはいられないのでした。

最後にまとめます。

本記事では3つの作品を取り上げて
時代の変遷を考察していきました。

まとめると、以下のようになるでしょうか?

◆勢いのまま「天下一」へ
◆天下一からの「強さのインフレ」に
◆天下一ではなく「平穏」こそ

連載継続か? それとも完結か?
そこに絶対的な良い悪いはありません。
良さも悪さも両方あります。
そもそも、ヒット作の裏では、
ひそかに「打ち切り」になってしまう
作品も無数に生じている…。

ぜひ、読者の皆様におかれましては、
『ジョジョ』や『スラムダンク』、
『こち亀』『ワンピース』など、
また、打ち切りになった作品とも比較して
お考えいただけましたら幸いです。
(最近の人気作なら『呪術廻戦』でしょうか…)

どの漫画の連載が印象に残っていますか?

連載継続と完結について、
皆様はどうお考えになりますか?


※ジャンプで「打ち切り」に
なった漫画はこちらから↓

※本記事は以前に書いた記事の
リライトになります↓
『天下一から平穏へ』

※『「好きなマンガアンケート」結果報告』
ジャンプ以外にもさまざまな
漫画について書いています↓

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