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ドカベンルール ~決まりを理解する、使う~

世の中にはこのようなルールがあります。
野球における非常にマニアックなルール!

通称「ドカベンルール」です。
『ルールブックの盲点の1点』
言ったほうが、通りが良いかもしれない。

漫画のドカベン「35巻」の高2の夏。
山田太郎や岩鬼正美のいる明訓高校と、
不知火(しらぬい)の白新高校が戦った
試合で描かれたエピソード。

…簡単に場面を説明します。

「明訓VS白新」の一戦。里中VS不知火。
エース対決は、息詰まる投手戦になり、
「0対0」のまま進む。
(注:この時代にタイブレークは無い)

どちらが1点を取るのか?
そんな中、事件は起きました。

1アウト満塁。明訓高校、大チャンス!
打席には、五番打者、微笑三太郎。
三塁に岩鬼、二塁に殿馬、一塁に山田。
明訓の土井垣監督は、
打者に「スクイズ」のサインを出します。

走者は投球と同時に一斉に走り出す!
打席の三太郎は、スクイズ・バント!

これがフライになる。スクイズ失敗。
投手の不知火はノーバウンドで捕球。
2アウト目です。
走っていた三塁走者、岩鬼は本塁に達した。
ボールを取った不知火は、一塁走者の山田が
「一塁から飛び出している」のを見つけて、
一塁にボールを送った。
山田は戻れない。3アウト目で、チェンジ!

不知火と白新ナインは
嬉々としてベンチに戻ります。
バントを失敗させたフライで「2アウト」。
一塁走者の山田が戻り得ずで「3アウト」。
0点に抑えたぞ! 反撃開始だ!


…ところが、スコアボードには
なぜか明訓の「1点」が記されている。
間違い? 0点に抑えたじゃないか?!

しかし、このケース、間違いなく
明訓高校に1点が入るんですよ。
この虎の子の1点を守り切った明訓は、
見事、白新、不知火に勝つ。

…そんな場面です。
皆様がもし審判なら、どう説明しますか?

本記事では、この通称「ドカベンルール」を
私ならこう説明する…と書いてみました。

この場面で問題になるのは、
「フライを捕って2アウトになった。
一塁走者が飛び出して、元の一塁に送り3アウト。
3アウトチェンジなのに、なぜ点が入るのか?」。

そもそもの前提。
3アウトが取られる「前に」ホームインすれば、
「得点として認められます」。
ただ「走者がフォースアウト」になったり、
「打者走者が一塁に触れる前にアウト」に
なった場合には「得点は認められない」。


この場合、打球がフライで2アウト目。
走者が飛び出し「一塁」にボールを送って
3アウト目を取っている。ここが重要。

アウトの種類が重要なんです。

そもそも野球でアウトになるケースには
どんなケースがあるのか?

「ゴロを打たれて、打者が
一塁に達するよりも早く一塁に送球する。
フライが上がって、ノーバウンドで捕球する。
三振。ストライクを三つ取る。
フィールド上でボールを持っている野手が
走者をタッチ(タグ)。あと…
守備妨害とか、走路から離れすぎるとか」

このうち、走者に関するアウトをまとめます。

①フォースアウト
②タッチアウト
③アピールアウト

主にこの3つ。この違いが、大事。
(守備妨害や走路外れは割愛します)

①のフォースアウトは、後ろから
次の走者が来て、塁が詰まっていて、
「強制的に次の塁を狙わなきゃいけない」場合。
この場合、守備側はタッチは必要ない。
ボールを走者よりも早く次の塁に送ればアウト。
打者走者をゴロで一塁でアウトにする時も
基本はこれと同じ。
(打者は打ったら強制的に一塁に走りますから)

これに対して②のタッチアウト
「後の走者、次の走者がが追いかけてこない」
つまり「塁が詰まっていない」場合ですね。
この場合、走者には「次の塁を狙うか」
「塁に留まるか」の選択権が生まれます。
ゆえに走者をアウトにするためには
ボールを持って「タッチ」する必要がある。
(盗塁などの際はこれに当たる)

③のアピールアウトは、ちょっと難しい。
守備側が「走者がルール違反した!」と
審判にアピールすることでアウトになります。
いわゆる「タッチアップ」でよく生じる。
走者に許されているのは
フライが「捕られてから」走ること。ゆえに、
フライを「捕るより早く」走者が走った場合、
元の塁にボールが渡り「アピール」すれば
走者をアウトにすることができる。

作者の水島新司さんは、
特に「③のアピールアウト」について
ちゃんと知ってますか?と
問いかけたのではないか
、と思うのです。

もう一度、振り返ります。

◆スクイズ失敗、フライで2アウト目!
◆三塁走者が本塁に到達する
◆一塁走者が戻れず一塁で3アウト目!

ここで問題なのが、フライが上がったら
ふつうは三塁走者は三塁に戻るはずなのに
「岩鬼が本塁に到達している」ところです。

一塁走者の山田がアウトになる「前」に…。

この場合、フライを捕った投手の不知火は
一塁ではなく「三塁」に投げて
③のアピールアウトを取る必要がある。
そうでないと1点が入ってしまう。

なぜなら、打者が
フライでアウトになった時点で
「後から来る走者はいなくなる」から。
フォースアウトにならなくなる。
各走者は「塁に留まるか先に進むか」の
選択が可能になります。

三塁走者の岩鬼は、三塁に留まらずに
「本塁に進む」ことを選んだ。
3アウト目よりも早くホームイン。
一塁走者の山田は「一塁に戻ろう」として
間に合わず、3アウト目になりました。

岩鬼は3アウト目が取られる「前」に
ホームインしている。
「生きた走者が先に本塁に到達」したため、
1点が認められたのです。

山田の3アウト目はフォースアウトではない。
アピールアウトです。

…白新が失点を防ぐためには
どうすれば良かったのか?

三塁走者の岩鬼は
「フライが捕られる前に離塁する」という
ルール違反を犯しています。
タッチアップが早い。
ですので、三塁にボールを送り、
離塁が早い!と守備陣が
岩鬼をアピールアウトにすればいい。


または、投手と内野手が全員が
ファールラインを越える「前」に、
一塁走者のアウトを
三塁走者のアウト扱いに取り換える
「アウトの取り換え」(通称:四つ目のアウト)
という処理(アピール)を行えば良かった。

実はそんなこともできるんです。
それを、白新の守備陣は怠った。

最後に、まとめます。

本記事では漫画『ドカベン』で
有名になった「通称ドカベンルール」の
説明について書いてみました。

なお作中ではルールを知っていた山田が
「わざと」一塁を飛び出して隙を作って
「一塁に」ボールを送らせています。

まずルールを『理解しておく』こと…。
そして、いざという時に、
『とっさに使える』ようにすること…。

複雑で誤解を生むルールほど効果がある。
それを見せつける描写でした。
恐るべし、水島新司さん!

下部に、アニメ版『ドカベン』の
動画へのリンクを貼ります。ぜひ。

※アニメ版『ドカベン』の動画へのリンク↓
『ドカベン ルールブックの盲点の1点』。
原作では土井垣監督が説明していますが、
アニメ版では山田太郎の祖父が説明。
何者なんだ、山田のじっちゃん↓

※原作だと「35巻」ですね↓

※この場面を説明する記事は
検索するとたくさん出てきます。

◆『ルールブックの盲点の1点…前編』↓

◆『ルールブックの盲点の1点…後編』↓

◆『甲子園で再現された伝説のプレイ、
「ルールブックの盲点の1点」とは』↓

https://num-11235.hateblo.jp/entry/n/n496d1b0aee90

◆『【ドカベン】ルールブックの盲点の1点を
分かりやすく解説【済々黌VS鳴門】』↓

合わせてぜひどうぞ!

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