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電気の発見・実用化 ~現代社会への分水嶺~

昔の生活と今の生活、決定的に分けるものは?

自動車、飛行機、コンピュータ…。

色々と思い浮かびますけれども、
私は『電気』が真っ先に思い浮かびました。
電気を生活に実用できるようになった時代を
分水嶺と考えますと、

◆電気実用「以前」
◆電気実用「以後」


これによって、かなり生活の風景が
異なるのではないでしょうか?

例えば「明かり」です。
昔は、火を使っていた。
今は、電気で明かりを灯しています。

「発熱・冷却」もそうですね。
昔は、暖炉や氷に頼っていました。
今は、エアコンや冷蔵庫があります。

「動力」もそうです。
昔は、人力や蒸気、ガソリンなどを使っていた。
今は、モーターや電気自動車を使えます。

「通信機器」は言うに及ばず、です。
昔は、手紙、のろし、伝書鳩、糸電話など。
今は、電信、電話からはじまって、
PC、スマホ、SNS、すべて電気(電池)が必要。

光、熱、動力、通信(音)…。

ありとあらゆるところで「電気」が
使われています。
たまに「停電」などで電気が失われた時、
いかに電気に依存しているか実感する。
そう言えばこの記事も、
電気を活用してPC上で書いているのでした。

本記事では「電気」の歴史を
書いてみたいと思います。

まず、質問です。
電気が『実用化』されたのはいつ頃か?

「そりゃあ、エジソンの頃ですよ!
19世紀くらいでしょうか?」

確かに発明王エジソン(1847~1931)は、
電気に関わる発明をたくさん行いました。
蓄音機、白熱電球、活動写真(映画)…。
彼によって、電気を使った道具の
可能性が拓かれていった。

では、続けての質問。
電気が『発見』されたのはいつ頃でしょう?

「…え? エジソンが19世紀頃ですから、
18世紀くらいですか?」

…いや、それが違うんです。
はるか昔から発見されていました。

もう一ついきましょうか。
電気という言葉の『語源』は?

「電気…。電は『雷・かみなり』ですよね。
気は、空気の気だ。
そう言えば、江戸時代のあたりで
平賀源内が『エレキテル』などを使って
びりびり体感装置を披露していたような…。
そのあたりから来たのでは?」

確かに、電気という言葉は
かみなり、エレキテル、
そういったものとの
関わりがありそうですよね。

(注:電気という漢字の熟語自体は
『雷の素』という意味合いに過ぎず、
江戸時代の頃の日本、中国にはあったようですが
現在のような意味で日本で使われるのは
エジソン以後、19世紀後半以後)

では、エレキテルの語源、
electricityはどうやって生まれたのか?

「…エレックさんが発見した、とか?」

違います。

ギリシア語の「ηλεκτρον」
エレクトロン、という言葉から来ています。

「エレクトロンって何?」

『琥珀(こはく)』です。

電気は、すでに古代には
その存在が知られていたんですね。
琥珀をこすると「静電気」が発生する。
琥珀が生み出す何だか不思議な力…。
エレクトロン・パワー。
ここから「琥珀のような」という意味の
ēlectricusが生まれ、electricityになる。

この琥珀パワーに興味を抱き、調べたのが、
紀元前600年頃の古代ギリシアの哲学者、
ターレス、という人です。

琥珀の棒を猫の毛皮でこすると、
軽いものをひきつける。
そんな性質が知られていました。
下敷きをこすって頭の上に置くと
髪の毛が逆立つ、あれと一緒。
そう、今の言葉でいう「静電気」です。

ターレスは、これを「磁力」だと捉えます。
磁石の力と同じだ、というんですね。
これは間違いではありましたが、
「何だか物を引き寄せる力」は同じ。
今では電気と磁力の間には
密接な関係があることが知られています。

◆紀元前600年:ターレス「磁力だ」
◆18世紀:平賀源内「びりびりするでしょ?」
◆19世紀:エジソン「何でも使えるよ!」

つまり、電気は、その存在を
早くから知られていたものの、
今のように実用化されるまでには
長い長い年月がかかった
「謎のパワー」だったんです。

「何に使えるのかわからない」状態。
「これ、何かの役に立つの?」と
思われていた時代がかなり長かった…。

箇条書きで、電気に関する事項を書きます。

◆1550年:イタリアの物理学者カルダーノが
「電気」と「磁力」は別物だと区別する
◆1745年:ミュッセンブルークが
「ライデン瓶」という蓄電器を発明
◆1752年:ベンジャミン・フランクリンが
雷の中で凧を揚げて(真似しないで下さい)
雷が電気であることを示し「避雷針」を発明
◆1800年:ボルタが亜鉛と銅を使った
ボルタの電池を発明し、
安定的な「電源」を産み出す。

…このあたりまでは、
「何に役に立つかわからないけれども
不思議なパワーがあるみたいだから
調べていこう」という感じです。

そしてこの電気について、
飛躍的に実用化へと向かわせたのが、
ファラデー(1791~1867)です。

エジソンの約50年前の人。
ファラデーが初めて行った
電気に関する実験は、
ボルタの電池を自作することだった。

エルステッドという科学者が
「電気と磁気」に関する現象を発見すると、
電気を磁気(物を動かす力)に
応用できないか、と考える人が出てきます。

電動機、ですね。

1821年、ファラデーは
それまで他の人が作った電動機(の失敗)を
活かして、磁石と電流から導線を回転させる
「電動機」を作り上げました。

かつ、彼は考えるんです。

「…電気と磁石によって
物を動かすことができるのならば、
物を動かすことと磁石によって
電気を産み出すこともできるのでは…?」

いわゆる『電磁誘導』の概念。

この考えは1830年にヘンリーという人が
発見していましたが、
1831年にファラデーが先に発表。
これによって、
「発電機」が生み出されていきます。

1839年、彼は
静電気、電気分解、電磁気学など
さまざまな電気に関する研究を完成させる…。

これらの土台があった上で、
1847年に「発明王」エジソンが世に生を受ける。

長らく謎だった琥珀パワーは、
フランクリンの決死の雷実験や
ファラデーなどの電動機・発電機などを経て、
ついにエジソンにより「使える道具」の
エネルギー、電気、として
おおいに実用されていく
のでした。

最後にまとめます。

本記事では、電気の歴史について
かいつまんで書きました。

「何の役に立つの、これ?」

というものは世の中にたくさんあります。
電気は、人類の生活をあまねく一変させた。
しかし最初は、琥珀由来の
不思議な現象に過ぎなかった。

世の中にはまだ、電気のような
「よくわからないけど、
未来には生活を一変させる」ものが
満ちあふれている、かもしれません。

…読者の皆様の周りには、
そういったものはありませんか?

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