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『〇〇の取り過ぎには注意しましょう』

さて、あなたなら〇〇に、何を入れますか?

アルコール? うん、泥酔すると良くない。
糖分? …身体には確かに。
塩分? ちょっと控えめにしたいところですな。
バイキング料理? そう、自分で
食べられる量だけ取らないと迷惑が…。

とまあ、色々と考えられるわけですけれど、
今回は「塩」について書いてみたい、と思います。

塩分、確かに取り過ぎるとよくありません。
ですが、人間が生きていくうえで
欠かせないものだ、ということも言えます。
何でもそうですが「適度に」取ることが、必要。

有名な『敵に塩を送る』の故事は、
ライバル武田信玄に、海のある越後の
「軍神」上杉謙信が、塩をあえて送ったこと
から来ているとも言われています。
塩は、人が生きるのに、必要なんです。
しかも昔は、なかなか取れなかった。

「…? 海の水は塩辛いですよね?
海さえあれば、塩なんて
いくらでも取れるんじゃないですか?」

それがそうでもない。
海の塩水は、場所によっても異なるかもですが、
わずか三パーセントしか含まれていません。
つまり、海水から塩を取ろうとしたら、
膨大な量が必要になる。大変なんですよ。

ですので、世界的には、
「岩塩」から取るのが主流
もう個体、塩の結晶になっているわけですから。
ところが、日本に岩塩はまずありません。
加えて、日本は多湿のため、
放っておいたら蒸発して塩になる、
ということもない。

…ということで、古来、日本では
海水から塩を取る方法をあれこれと
工夫してきた歴史があります。

「塩田」と言われる、塩を作る場所が
各地で作られていきました。
特に有名なのが、瀬戸内海のあたりです。
降水量がそれほどなく、気候も温暖だから。
江戸時代には「十州塩田」と言われ、
播磨・備前・備中・備後・安芸・
周防・長門・阿波・讃岐・伊予、このあたりで
国内の塩の約九割を作っていたそうですよ
(ちなみに「伯方(はかた)の塩」
伯方とは、愛媛県の伯方島のことです)。

ところが、この塩田での塩の採取。
…いったん、廃止されることになります。

なぜならば、1971年(昭和46)年、
『塩業の整備及び近代化の促進に関する臨時措置法』
いわゆる「塩業近代化臨時措置法」
が施行されたから。
塩の専売自体は、明治時代から行われていましたが
(日露戦争の戦費調達のためとも言われています)
この法律により、日本専売公社が
「イオン交換膜製法」によって
化学的に塩を製造するようになったからです。

高度経済成長、工業化の影響もあります。

このイオン交換膜により、塩化ナトリウムが
いわゆる「食塩」とされました。
実は塩田で取れる天然の塩には、
塩化ナトリウム以外にも
色々な成分が入っていたのですが、
それも、ほとんどなくなります。
もちろん、安定して純粋で安価な塩が
全国に行き渡った、という良い点もあります。

…え、今は、どうなんですか、ですって?

1997年(平成9年)になって、
塩の専売制度はなくなり、自由になりました。
ほら、今、スーパーなどに行くと、
いろんな塩が置いてありますよね。
塩化ナトリウム以外にも
いろんな成分入りの塩とか…。

数十年の間、
「食塩」=ほぼ化学的に作られた塩
という時代が日本にあった
ことは、
(そのうちに忘れ去られるとは思いますが)
記憶に留めておいても
いいのかな、と思います。

ちなみに、
いったん廃止になった塩田の跡地は、
各地で工場用地へと転換されていきました。
いわゆる「瀬戸内工業地域」は、
塩田の跡地を使って建てられた工場も多いです。

…そろそろ、まとめましょうか。

塩を一つとっても、その来歴はさまざま。
地理や歴史が、深くからんできます。

どんぶり勘定で鼻息荒く、
「そうだ、塩分の取り過ぎ、控えなきゃな!
今日は塩ラーメンはやめておこう!」
ではなくて、

その「塩」が何からできているのか、
何グラム取れば取り過ぎなのか、
どれくらい必要なのか、
そもそもどこから来たものなのか、

ちょっと立ち止まって
あれこれ考えてみても、いいかもですね。
…しおらしく。

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