八溝山地 ~関東平野にはみ出た山地~
関東平野にそびえる「筑波山」は
だだっ広い平野の中で突然あらわれるので
とても目立ちます。
意外と標高は高くなく、877メートル。
しかしその雄大な眺めから
日本百名山にも選ばれており、
「西の富士、東の筑波」と並び称される。
茨城県のつくば市、つくばエクスプレスなど、
「つくば」の地名や電車名にも採用された、
全国的にも有名な山です。
…ただ、この筑波山は「単独で」
ぽこっと平野の中にあるのでは、ない。
実は「八溝山地」という山地の一部分です。
その山地の南の端っこあたりが筑波山。
(南端は「宝篋山」という山)
八溝山地。
一言で言えば、茨城県と栃木県の境目の
あたりにある山地です。
この山地の南のあたりを
特に「筑波山地」と呼んだりします。
南の端は、筑波山や宝篋山。
では北の端は? …ずばりその名も八溝山。
本記事は、この「八溝山地」について
書いてみたい、と思います。
まず、全体的なことを書きましょう。
地図帳や地図アプリを見てみますと、
奇妙なことに気が付きます。
関東平野の北のあたりに、不自然な形で
トゲがささったように
福島のあたりから南に山が伸びている…?
八溝山から筑波山・宝篋山へと
南北につながっていく山地!
これが八溝山地
(南のあたりは筑波山地)なのです。
栃木県や群馬県と北陸を隔てる
「越後山脈」(白根山や浅間山など)や、
埼玉・東京・神奈川の西にある
「関東山地」(甲武信ヶ岳や箱根山など)
に比べて、あまり高くない山々。
平野の中に飛び出た山地。
それが八溝山地。
一番高い山は北端の八溝山で1,022メートル。
他の山は1,000メートル以内。
この八溝山地は、四つの塊に分かれます。
◆八溝山塊(やみぞさんかい)
◆鷲子山塊(とりのこさんかい)
◆鶏足山塊(けいそくさんかい)
◆筑波山塊(つくばさんかい)
…何だか「鷲」とか「鶏」とか
バード系が多いのですが、実際に
バードウォッチングに訪れる人も多い。
高くないので、ハイキングにもぴったり。
しかし、なぜこのように分かれているのか?
ずばり、川です。
川があれば、山地が削れて平たくなる。
この八溝山地は、川によって分かれている。
まず、八溝山塊と鷲子山塊の間は
「押川」という久慈川の支流によって
分かれています。
次に鷲子山塊と鶏足山塊の間は
「那珂川」という那須~水戸市を
流れる川によって、分断されている。
鶏足山塊と筑波山塊の間は
「桜川」などの川が流れています。
茨城県の「桜川市」のあたり。
本来は、ここから南の土浦に流れる
南北の川の名前なのですが、
東西に流れる川にも、水戸黄門こと
徳川光圀が「水戸の桜川」として
同じ名前をつけたそうです。
(さすがは天下の副将軍)
まとめると、こうなります。
◆八溝山塊(やみぞさんかい)
(押川)
◆鷲子山塊(とりのこさんかい)
(那珂川)
◆鶏足山塊(けいそくさんかい)
(桜川)
◆筑波山塊(つくばさんかい)=筑波山地
つまり、山地は山地なのですけれど、
ずっと山ばかりが続いているわけではなくて、
川によってカットされている。
「ほどほどな山地」だと言えるでしょう。
この、ほどほど具合が、いい。
なぜなら、あまりに高すぎる山ばかりだと、
人間は通るのが難しくなるからです。
事実、東西を流れる
「水戸の桜川」のカット部分に沿って、
水戸市と栃木・宇都宮市を結ぶ
「北関東自動車道」や
「国道50号」などが通っている。
いい塩梅にカットされているので
「利用しやすい」んですね。
「切れてるチーズ」と同じ。
通りやすいし、登りやすい。
山に登って木材や山菜を取ったり、
「観光資源」にもなりやすい!
ではここから、その(知られざる)魅力を
北から順に、主に茨城側から
見ていくことにしましょう。
≪八溝山塊(やみぞさんかい)≫
まず、八溝山の南のあたりに開けた盆地が、
押川によってつくられた「大子盆地」です。
茨城県久慈郡大子町。だいご。
ここには「袋田の滝」という
日本三名爆の一つ、名高い滝があります。
華厳の滝、那智の滝にならぶベストスリー!
かの有名な歌人の西行法師も
「この滝は四季に一度ずつ来てみなければ
本当の趣は味わえない」と言ったそうです。
人呼んで『四度(よど)の滝』。
夏には涼しく、冬は滝が凍る「氷瀑」に。
春は新緑、秋は紅葉、四季を堪能できます。
あと、アップルパイや親子丼、
鮎の塩焼きなどが、めちゃ美味しいです。
≪鷲子山塊(とりのこさんかい)≫
鷲子山上神社、とりのこさんしょうじんじゃ、
という神社があります。
これは茨城県と栃木県の境目にある神社。
(というか県の境目が神社になった)
境内の中で、ここから栃木県、
ここから茨城県、と分かれている
全国的にもかなり珍しい神社です。
ふくろう、福老、不苦労の神社とも。
梅雨の時期にはアジサイが映える!
通称「とりのこさん」と呼ばれまして、
住民から親しまれています。
≪鶏足山塊(けいそくさんかい)≫
焼き物で有名な「笠間」と「益子」は、
鶏足山(けいそくさん)や
雨巻山(あままきさん)などを隔てて
東と西、茨城と栃木にそれぞれある街。
人呼んで「かさましこ」!
県境を越えた、兄弟の焼き物の街です。
焼き物好きには「沼」です。
魅力があり過ぎて、たぶん出られない。
山塊が「桜川」で隔てられてはおりますが、
この川は、世阿弥の能「桜川」でも有名です。
「西の吉野、東の桜川」として
並び称される桜の名所、でもあります。
(こういうパターン、多いですね)
≪筑波山塊(つくばさんかい)=筑波山地≫
全国的に名高いのは筑波山だけでなく、
桜川市には「加波山」があります。
明治時代の「加波山事件」の舞台!
その近くには「雨引山」という
アジサイの名所があります。
境内では孔雀などが放し飼いになっており、
梅雨の時期には「水中花」と言われる
池にアジサイを浮かべた幻想的な風景に…。
山地は、東にも枝分かれしています。
その枝分かれ先の「愛宕山」では、
日本でも珍しい奇祭、
「悪態祭り」が行われます。
参詣者が天狗に向かって「バカヤロー」など
悪態をつく祭りです。
この近くには「エトワ笠間」という
グランピング施設もあります。
皇室に献上される「柿」の産地でもある。
良い風が吹くので「ハンググライダー」や
「パラグライダー」なども盛ん!
「ダチョウ王国」も「フラワーパーク」も!
この愛宕山や筑波山などに囲まれた
盆地を「八郷(やさと)盆地」と言います。
石岡市の一部です。
このあたりの蕎麦屋はもう絶品です。
そして南の端のあたりには筑波山。
言わずと知れた関東の名峰。
平野から見上げる雄大な姿は誠に美しく、
「紫峰」とも呼ばれています。
以上、本記事では
「八溝山地(+筑波山地)」の
魅力を書いてみました。
読者の皆様も、もし機会がありましたら
魅力にあふれた八溝山地、
八溝山・筑波山を訪れてみて下さい!
※画像は八溝山頂、袋田の滝、
大子のアップルパイ、雨引山のアジサイです↓
※本記事は、以前に書いた記事のリライトです↓
『八溝山地、ほどほどな山地、その魅力』
※八溝山地(筑波山地)や
八溝山、筑波山などを一つのモチーフにした
長編小説もいま書いております↓
『居場所とちぎりのレンザンズ ~執筆快調!~』
合わせてぜひどうぞ!