「ざっくり過ぎる世界史」にチャレンジ
古市憲寿さんの本のタイトルがいい。
「絶対に挫折しない日本史」。
固有名詞にこだわり、細かすぎる歴史は、確かにその人その時代には詳しくなれるかもしれませんが、全体は見ることができません。それゆえに、挫折する人が多い。そりゃそうですよね。カレーライスで言えば、ニンジンばかりこだわって、スパイスや肉やライスとの関係、カレーライス全体の味を無視しているようなものなのだから。
私は「固有名詞にこだわって」、以下のような歴史記事を書きました↓。
これらは「森を見ずに木を見る」記事です。要するに、ある一定の期間の歴史を、ある特定の人物に代表させて記述した歴史です。
古市さんの「絶対に挫折しない日本史」は、これと真逆で、「木を見ずに森を見る」手法を取っています。要するに、期間を区切り過ぎず、特定の人物を取り上げず、ざっくりと大雑把につかめるように記述した歴史です。
歴史には、両方が必要だと思います。
①「森を見ずに木を見る」… 細かく見る
②「木を見ずに森を見る」… 大きく見る
そこで、固有名詞を(できるだけ)使わずに、ざっくりと歴史をとらえた記事を書きたい、と思いました。日本史については、古市さんの本を読んで頂くとして、この記事では本当にざっくりとしたいわゆる「世界史」を取り上げたいと思います。物足りない方は『サピエンス全史』をぜひ↓
中田敦彦さんの解説動画を見るのもいいですね↓。
前置きはこれくらいにして、始めます。本当にざっくりです。
1、3つにわける
まず、すごく長い「世界史」を3つに分けましょう。
分けるのは3つくらいが覚えやすいからです。
①モノをたくさん作れなかった頃
②モノをたくさん作って争っていた頃
③争うのが(建前上)NGになった頃
①は、まだ人間が、モノをたくさん作れなかった頃の話。要するに「手作業」でモノを作っていた頃。野蛮ですがどこか牧歌的な時代です。
②は、「機械」「工場」でモノを作り出した頃の話。モノを作れば、それを売って儲けたい。しかし「買い手」が必要ですから、その市場を巡って、仁慈なき戦いで争っていました。かなり野蛮で危険な時代です。
③は、争いすぎて人類滅亡までちらついて、表面上は争うのをやめましょうとした頃。要するに現在です。もちろん、表面上は争わなくても、裏ではバチバチに戦っていたりするので、やっぱり野蛮で危険です。
ざっくり3つに分けてみました。
ではその境目はいつ頃なのか。3つに分けるということは、2つの境目があるということです。
ここで「固有名詞」をあえて使えば、①と②を分ける境目は「産業革命」、②と③を分ける境目は「世界大戦」になります。こんな感じ↓。
①モノをたくさん作れなかった頃:18世紀以前
(産業革命)
②モノをたくさん作って争っていた頃:18世紀以後~1945年
(世界大戦)
③争うのが(建前上)NGになった頃:1945年~
すごくざっくり言うと、こう。
産業革命…モノをたくさん作れるようになった
世界大戦…世界じゅうで戦争が起こった
この2つの境目で、世界が変わった、と言っても良いでしょう。
2、①モノをたくさん作れなかった頃:18世紀以前
まず、モノをたくさん作れなかった頃の話。
世界史の教科書では、言葉が発達し文字が生まれた、農業が始まった、古代文明、世界的な帝国、シルクロード…なんていうように詳しく説明されていきますが、この記事ではざっくりいきます。
とにかくこの時代、現在から見れば驚くくらい、モノが少なかったんです。そりゃそうでしょう。人が手作りで作れるモノなど、工場で機械で作るのに比べれば、圧倒的に少ない。現在、ハンドメイドのお店が「貴重」とされるのも、工場で作ったモノにあふれているから。
①はそのハンドメイドの時代なんです。
とすれば、その「ハンド」つまり、人が多ければ多いほど力が強いと言えます。農業だって全部、人の手で行う(牛とかは使いますが)。モノづくりも人の手。だから力の強い国は、人口が多い。あの有名なピラミッドも、とにかく人をかき集め、人を使って仕上げている。万里の長城も、日本の古墳や、大仏だってそう。強い国の王様は、自分はこんなにスゴイものを作れるんだぞ、と誇示する意味合いもあって、とにかく大きいものを作ったといってもいい。
その「モノを作る人」を確保するために、身分なんてものもあらわれます。
「人間、何にでもなれる」というのは、きわめて現代的な発想で、「人間、貴族に生まれたら死ぬまで貴族、奴隷に生まれたら死ぬまで奴隷」という時代のほうが長い。それもこれも、モノが(現代に比べて)少なかったのが一つの原因です。少ないモノをいかに持ち続けるか、言い換えれば「既得権益」を手放さないためには、身分を固定し、人生とはそういうものだと教え込ませるほうが、何かと都合が良かったのでしょう。
ハンドメイドの時代は、持てる者が持たざる者をいかに支配するか、そんな時代でもありました。まだお金(貨幣)も普及せず、物々交換も庶民レベルでは普通に行われていました。
それをぶち破るのが、1つ目の境目「産業革命」です。
3、②モノをたくさん作って争っていた頃:18世紀以後~1945年
産業革命とは要するに、モノがたくさん作れるようになった、ということ。
今まで手作業で作っていたのが、「機械」「工場」などで作られるようになった。もちろん、現代のようにコンピュータやAIで管理して作る、というわけにはいかず、その最初は人間の手で操作することも多かったが、ハンドメイドに比べると圧倒的に速いのです。しかも機械は疲れを知りません。
世の中に、モノがあふれていきます。①の時代では考えられなかったほどに。モノがあふれれば、その価値を規定する「お金」も普及します。
世界で最初にこの「産業革命」が起こったイギリスは、どんどん世界を支配していきました。そりゃそうです。他の地域がちまちま手作業で作っているところに、膨大な数のモノがやってきたんじゃ、お値段的にどう考えても勝ち目がありませんよね。インドや中国など、特に人口の多い地域=買い手が多い地域に、イギリスはどんどん進んでいきました。
モノが多くなれば、少ないモノをめぐって身分を固定する、ということも薄れていきます。イギリスでもこの時代には選挙制度が発展し、徐々に身分制が薄れていきました。自由な商売が発展すると、身分制は薄れます。なぜなら、ビジネスそのものに、身分は邪魔だからです。良い身分だからモノが売れるかというと、そうじゃないからです。また政治のほうも、「国民国家」つまり「国民みんなで頑張ろう」というスローガンを持って、国民同士の格差を是正しようとしたりしていきます。
この「国民国家」を作った欧米諸国は、「産業革命」をどんどん進めていき、イギリスに追い付け追い越せで世界を支配していこうと競争します。モノがたくさん作れれば、そのモノをどんどん売って儲けたいですよね。産業革命がまだ起こっていない地域を「開国」させて、モノをどんどん流し込む。日本にも「黒船」がやってきました。そのためには「戦争」も辞さない。ちなみに日本は、この欧米流の「産業革命」をうまく取り入れて、欧米と張り合えるくらいの力を持っていきます。
しかし、この「モノを売る競争」は、次第にエスカレートして、ついには「世界大戦」を引き起こす。それも2回も。
第一次世界大戦、第二次世界大戦。
第一次世界大戦では、産業革命の本場、ヨーロッパ諸国が仲間割れ、大打撃を受けます。そこでこれまでの縛りが弱まり、他の地域の力が強くなった。いわゆる「民族自決」、自分たちのことは自分でやる、そういう時代になっていきます。続く第二次世界大戦では、原子爆弾まで作られて、このまま戦争していたんでは人類が滅亡してしまうんではないか、というところまで行ってしまいます。
さすがにこれはまずいんではないか。大っぴらに戦争していっては共倒れ、ダメなのではないか。そうみんなが気づいたのが、この世界大戦です。
4、③争うのが(建前上)NGになった頃:1945年~
ということで、現代まで続く最後の③の時代になります。
建前上NGですから、おおっぴらに戦争を行うことはしにくいです。ただ、あくまで建前なので、地域紛争的なものは頻発しています。ただしあまりにもことが大きくなりそうなときは、「国連」が動いて(袋叩きにして)解決したりする。朝鮮戦争しかり、湾岸戦争しかりです。
ここで大きな役割をになっていたのが、世界大戦の「戦勝国」の1つであるアメリカ合衆国。「世界の警察」として、紛争が起きないようににらみをきかせています。日本にも米軍基地がありますが、基地は世界中にあります。最近では「アメリカファースト」などと言っていますが。
対抗するのは、以前は「ソ連」、最近では「中国」ですね。ヨーロッパ諸国は「EU」などを作って何とかまとまろうとしていましたが、最近ではイギリスが脱退する騒ぎを起こして、いまひとつ。そんな状況です。
①のように、ハンドメイドの時代でもない。
②のように、モノをがんがん作って戦争してまで売る時代でもない。
③の現在は、争うのが(建前上)NGの中で、モノを作って売る。
となれば、良いモノを作るしかありませんね。良いモノであれば、世界中の人が買ってくれます。自動車は、少し前は高級品でしたが、今では安くなり、みんなが持っています。パソコンや携帯電話やスマホは、今や世界中の人が使っています。家電もそうです。
ただし、条件があります。それは「そのモノが良いモノだ」ということを知ってもらうこと、つまり「情報を届けること」ですね。
今回の記事では大きく取り上げませんでしたが、現在は3つ目の境目ができつつある時代なのかもしれません。それは「情報革命」です。
世界のみんなが情報を気軽に扱い、良いモノを知り、買う。情報そのものも売り買いされる。そんな時代の境目に、私たちは生きているのです。
5、まとめ
いかがでしたでしょうか。すごく「ざっくり過ぎる」世界史でした。
「木を見ずに森を見る」感じで書いたので、世界史の教科書に比べてスカスカな感じは否めませんね…。それぞれの時代の「木」つまり固有名詞が気になる方は、ぜひ色々調べていただきたいと思います。
そのうちの1つとして、私の記事も読んで頂ければ、すごく喜びます(宣伝)。こちらは、30年ごとに時代を区切って、賛否両論ある人物を軸に、1840年から2050年までの210年間を取り上げています(今後30年の未来予想も含めて)↓
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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