日本史専門の先生が地理の授業を初めてやって感じたこと
全国の高校地歴(社会)の先生は、来年度不安がいっぱいあるのではないでしょうか。
来年度はカリキュラムの大幅改訂に加え、地理必修化という画期が訪れます。
私は日本史を専門にしていますが、今年度新たな高校に転任し、理型の地理Bを担当しています。地理を担当するのは、教員6年目にして初めてです。
最初は正直「マジかよ…」という無念さと、「大丈夫か…?」という不安でいっぱいでした。しかし今は、来年度からの地理必修化に向けて先取りして地理の授業ができてよかったと気持ちをなんとか切り替えて頑張れています(笑)。
そこで、今回は、地理の授業を初めてやって感じたことをつらつらと書いていきたいと思います。
0からスタート
当たり前ですが、歴史と地理は全く別物です。これまでやってきた内容がほとんど使えない。考えてみれば、私が地理を学んだのは、中学校の1・2年生の社会科地理分野と、大学の自然環境学とか人文地理学などのいくつかの授業だけです。文系出身の歴史専門の先生の多くは、高校で地理を学んでこなかったのではないでしょうか。全く知らないことばかり。したがって、教材研究にとても時間がかかります。通常であれば、自分には知識がもともとあって、その内容をどのように生徒に学ばせるかを考えます。そうじゃない。自分が学ぶところからのスタートです。しかもほぼゼロから。これはかなりしんどいものがあります。
語りすぎ注意
歴史の先生あるあるだと思うのですが、歴史の先生はどうしても「語りがち」です。私もそうなんですが、語ってしまうことが多々あると思うんです。人物のエピソードとか、豆知識的な内容とか、ある種物語的な内容とか。その話は結構生徒が食いついて聞いてくれることもあるので、どうしても「語りがち」になってしまう。歴史に絡む内容になると、ついつい語ってしまうこともあったのですが、やっぱりうまくいきません。今のところ理由は2つほど考えています。
ひとつは、語ってもあんまり面白くない(面白く話せない)ということです。特に系統地理的内容(地形・気候・産業・人口などなど)は、語ることで面白さを伝えるような内容があまりないように思います。そこに自分の知識の浅さも加わると、語れるテッパンネタもなかなかないのです。
もうひとつは、理型クラスに教えているということです。理型クラスの子たちは、個別的な内容を増やせば増やすほど敬遠しがちです。どうでもいい内容にもあんまり食いつかない。
公式化
実は私もたくさんの個別の知識を学ぶことはあんまり好きではありませんし、なんなら苦手です。ですから、自分が地理の勉強をしていく中で、「こことここがつながるんだ!」とか「ここ押さえておけばいいのか!」と感じたことを軸に授業を作っていきました。
例えば、
「なんで地中海性気候はオーストラリアとか南米にもあるんだ?」
「なんで地中海性気候は大陸の東側にないんだ?」
といった疑問を解決していく中で、
・地軸の傾きと公転 ・気圧帯
・風(恒常風・季節風) ・海流 ・比熱(大陸と海洋の熱の変化の違い)
を押さえておけば、多くの地理的事象が「原理」で成り立っていることが理解できます。
そこから、
・気圧の高いところから低いところに風が吹く
・大陸は暖まりやすく冷めやすい・海洋は暖まりにくく冷めにくい
・大陸西岸は偏西風の影響・大陸東岸は季節風の影響
などの汎用的な知識を何度も何度も授業で登場させ、ある意味「公式」みたいにしてしまうと、生徒は納得して理解している様子が見えてきました。
自分の「?」や「なるほど!」を大事にする
地理をほとんど学んでこなかった歴史の先生が、地理の授業をする際、まずは「どうしてこうなるんだ?」と疑問に思ったことや、「なるほどそういうことか!」と気付いたことを、生徒にも同じように追体験させてみるのはいいかもしれません。
・自分が疑問に思ったことを「問い」にする。
・自分が調べたものを使って、「教材」にする。
・自分が得た知識・考え方を「まとめ」にする。
そうすれば、自ずと、面白い授業ができてくるんじゃないかなと思います。
「地理について何にも知らない」ということこそがある意味「武器」なんだと、そう前向きに捉えてみるといいんじゃないかなというのが、半年弱地理の授業をして思った一つの答えです。